最強の捕食者
「…ジャリュウ…」
粉砕男とダイルの直後にジャリュウと遭遇したのは、死神兄妹だ。
二人の後ろの方からはれなたちも追いかけてきている。
ここは町の中心部だ。無数に立ち並ぶ建物が、まるでリングのように一同を囲う。
テリーとドクロもはじめはジャリュウだとは思わなかったのだが、その魔力を察知してすぐにジャリュウであると理解した。
…そしてその魔力に入り交じるハウンディの力も。
「お前ら…。俺は警告しにやってきたのだ」
ジャリュウの言葉に、死神兄妹の肩に力が入る。
この辺りで、れな姉妹、ラオン、葵、そしてタイガが辿り着いた。
「俺はこれから闇姫軍と行動を共にし、世界を支配する第一歩、テクニカルシティ制圧作戦を実行する。理由は世界でも高い軍事力を持つ町である事、そして何より…お前達がいるからだそうだ」
ジャリュウに指を指される一同。
「えーと、誰」
れなが呑気に呟く。
ドクロが小声で彼女に伝えた。
ジャリュウよ、と。
「ジャリュウ!?」
れなは集中して彼の力を感じとる。
…確かに、ジャリュウの魔力だった。
「お前達は手を出すな。お前達は俺に良くしてくれた。…巻き込みたくはない」
「で、私達を除いたこの町のやつらは犠牲にする気か?」
こう言ったのはラオンだ。ジャリュウは右手で拳を握り、顔の前に添える。
「俺の決意は揺るがない。犠牲を出してでもこの世界を変えてやる。傲慢で身勝手な人間達がひしめくこの世を、正しく…」
…ジャリュウの捕食者の力のなかに混じった本能が混じっているのだろう。
以前まで仲間だったとは思えない過激さだ。
ラオンはナイフを取りだし、更に続ける。
「巻き込みたくはないだ?だが私達が手を出せばお前はどうせ私達にも攻撃するんだろ?」
ジャリュウは目を閉じた。彼が何を考えてるかは、誰にも分からない。
ラオンは一同の前に出て、ジャリュウにナイフを向けつつ、後ろのれなに言った。
「おいれな。こういう時は力ずくが一番だろ?」
それまでは呆然としていたれなだったが、こう言われてすぐに意識が戻る。
「…!そ、そうだね!」
れなも先方に出て拳を構えた。
それにつづき、他一同も足を揃えてジャリュウの前へ出る。
ジャリュウは、残念そうに肩を緩めた。
「…仕方ない。後悔するなよ」
「こっちの台詞だ!!」
ラオンがナイフを構えて飛び出す!
ジャリュウはそんな彼女のナイフ目掛けて蹴りを繰り出した!
ラオンはニヤリと笑う。このナイフは只のナイフとは比にならない硬度。
怪獣に踏み潰されても平気なのだ。
このままジャリュウの足に突き刺さると睨んだのだが…。
…ジャリュウの足がナイフにぶつかるより前に、刃は粉々に砕け散った。
「…は!?」
そのままジャリュウの足はラオン本人の腹に叩きつけられ、そのまま彼女を吹っ飛ばした!
ラオンは遠くのビルに叩きつけられ、そのままビルはゆっくり倒壊していく。
「まずい!」
粉砕男が直ぐ様ビルの方へ飛び出した!
そして、倒壊するビルを両手で支え、中にいる人間達の命を守る。
「ジャリュウ!!あんた…!」
驚く一同のなか、タイガは特にらしくない表情でジャリュウに近づく。
…ラオンがビルにぶつかったのは偶然ではない。
こいつは意図的にビルにぶつけたのだ。
間違いない。ジャリュウは犠牲を出してでも世界を支配し、世界の法則を意のままに操る気なのだ。
…そんな支配の果てにある世界がどんなに良いものであっても、他人の命を踏み台にさせる訳にはいかない。
れなの心に、そんな言葉が浮かんだ。
れなは、より腰を深く落とし、目をつり上げた。
「ジャリュウ…!あれから何があったのかは分からないけど…容赦する必要はないみたいだね!!」
こんな自分だが、幾多の戦いを乗り越えた身。
だから分かる。今目の前にいるのが、何としても倒さなくてはならない相手である事は間違いない。
れなの闘志が、そう叫ぶのだ。
「俺はもうお前達と共にいたジャリュウではない。全員でかかってこい」
ジャリュウの長い髪が、風に吹かれるようにゆらめく…。
間違いない。こいつは、最強の捕食者だ。
負ける訳にはいかない…!




