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新たなる姿

「畜生あのクソったれぇぇぇぇぇぇぇ!!」

闇の世界の漆黒の城…闇姫の城にて、いかにも悔しそうな声が響く。


城の一部の広間で、マウトが以前ジャリュウにつけられた顔の傷を抑えながら苦しんでいる。

何人かの捕食者が落ち着かせようとする声も聞こえてきたが、すぐに血が飛び散る音が聞こえ、見なくとも大体の光景は悟れる。

それを聞いていたのは、城の廊下を歩いていた闇姫三姉妹だ。

闇姫と影姫は無表情のままだが、黒姫はその闇姫そっくりな顔に満面の笑みを浮かべていた。

影姫が、広間の扉を見たまま闇姫に耳打ちする。

「もうボロが出てますね」

「その通りだ。そろそろやつはハウンディ達への復讐の為に勝手な行動に出ると見た。ああいうやつは大体そうなる」

もう先の展開が読めている闇姫は退屈そうに話した。

実際、扉の向こうのマウトの声が落ち着きを取り戻しだし、部下に何かを話してるのが聞こえてくる。何かしらの計画を設立してるようだ。

「…良いかお前ら。俺はハウンディとジャリュウをぶち殺す。さすがにもう戦えない状態だろう。大勢の兵士の目の前で公開処刑にかけてやる!死刑だ死刑だ!ひゃはははは」

勝手にイベントを起こそうとしてるようだ…闇姫はつくづく呆れた顔だ。



…しかし、退屈していた三姉妹のもとへ、一人の戦士がやってきた。


紫色の球体から翼と丸い手足を生やした生物…四天王デビルマルマンだ。

翼を羽ばたかせ、三姉妹の目の前で静止した。

「闇姫様にお会いしたい者が現れました!!」

こんな時に新兵か…この時闇姫は正直面倒な思いにかられていた。

だがその新兵は闇姫にとって思いもよらぬサプライズだった。




…城の入り口広間。

多くの兵士が槍や銃を構えるなか、見慣れぬ一人の戦士が立っていた。

髪は緑色。だが、長い後ろ髪はやや茶色かった。

両肩からは深緑の鱗でできたトゲを生やしている。

蛇の鱗のような柄のアーマーを纏い、顔や腕、足の各所に赤いライン模様がついている。何より、勇ましいオーラを放つ戦士だ。


「…俺が誰だか分かるか…いや、分かりますか。闇姫様」

「分かる。ジャリュウだろ」

えっ、と黒姫が声をあげ、闇姫そっくりな顔を驚きに染めた。

影姫の方は、ジャリュウの容姿の変化には大して驚いてはいないようだが、その表情に少しばかり目を丸めた。


…とても綺麗な顔だ。

少しでも迷いがある戦士はこんな顔はできない。迷いなど一片も感じさせない…美しい金の瞳だ。

ジャリュウは膝をつき、闇姫に頭を下げた。

「闇姫様。我が力をお使いください。俺は捕食者による世界の支配などはどうでもいいのです。ただ、この世界をあるべき形に変えたい。一人の人間として、それを望んでいるだけです」

「お前の考えを細かいところまで言ってやる。善の道に立てば苦難ばかりが訪れる。ならばやり方を変え、悪の道に足を踏み込み、力ずくでも世界を変えて見せる。…お前が考えてる事と何か違う部分があれば言ってみろ」


ジャリュウは頭を下げたまま答える。


「…その通りです。…しかし闇姫様。あなたと俺の支配の価値観は恐らく異なっている」

周囲の兵士達の武器を持つ手に力がこもる。影姫、黒姫は依然としてジャリュウを見つめた。

「俺の場合、支配とは…力とは、何かを変える為にあるべきもの、決まった事実を裏返し、自分の思う形に変える為のものだと考えています。闇姫様がお考えの支配とは、『悪』として自分が受けた天命を全うするべく行う行為の一つ」


ほう…と闇姫が息を吹くように呟いた。

「少しの間で随分礼儀を学んだな。いや、お前は数多くの戦地を渡った戦士。知識も多いぶん、そのような振るまいができるのは当然か」

ジャリュウへと一歩だけ近づき、一言だけ発した。

「面を上げい」

兵士達は、もう武器を下ろしていた。

闇姫らしくない言葉に、黒姫はまたもや驚いている。


「私の支配と張り合うつもりと見た。良いだろう、我が軍の下に置いてやる。私が『悪』として世界を牛耳るか、お前が『意思』のままに世界をあるべき形に変えるか…それは、世界を支配した後に決めるとしよう」

ジャリュウは、静かに一礼するのだった。




「…!」

それを見て危機感を覚えたのは、柱からこっそり覗いていたマウトだ。


まずい事になった。


ジャリュウの目的は世界をあるべき形に変える事。マウトのように自分の意のままに世界を動かしたいという『欲』とは違う。

二度と自分のような者を出さない為、世界の法則を変えようとしているのだ。

支配する事で、世界の全ての生物の自由を縛ってでも。

「あいつの事だ…!恐らく弱い者を労るとかいう法律を出すのかもしれんな。…今の世の中では一人の意見一つではどうにもならない。しかし、力ずくで世界を支配してしまえば実現するかもという事か…!」

拳を握るマウト。


世界は、静かな危機に立たされていた。

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