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ハウンディの決意

「貴様、やるな…」

ジャリュウとハウンディは、捕食者の島での殺しあいの末に、とある二人の捕食者と出会う。

スキンヘッドにトゲ付きのヘルメットを被せた、ワニの鱗のようなアーマーを身につけた大男、ダイル。

その近くで戦いを見守るは、虎のような耳を金髪から生やし、虎縞模様の毛皮を着た女、タイガ。

砂煙がたちこめるなか、ジャリュウとダイルが向かい合う。

二人との出会いは、殺しあいの一端だった。

ジャリュウが先に飛び出し、少し遅れてダイルも飛び出す!

交差すると同時に、ジャリュウが手刀、ダイルが拳を振り上げる!攻撃は、同時にぶつかり合った。


…飛び出すタイミングは違ったが、倒れるのは同じだった。

両者とも血を吹き出している。あとはどちらが先に相手を食らうかだ。

這いずりながら、ジャリュウがダイルへ向かっていく。

草むらからその光景を見ていたハウンディは黙って見守っていた。


ジャリュウは震えながら立ち上がる。

動けないダイルに手を伸ばす…。


「…やめろ!!」

…直後、力強い声と共にダイルの前に立ちはだかったのは、タイガだった。


「どけよ。お前も助かりたいだろ?」

そう言いつつも、ジャリュウの顔は笑っていなかった。

「関係ないわ。私が守りたいから守るだけ…!」

この時点で、二人は他の捕食者とは何かが違った。

拳を握りながらも動けないダイル、そしてそれを震えながらも必死に庇うを見るジャリュウの目が揺らぐ。


「…お前たちも捕食者である以上、過去に色々あったんだよな」

ジャリュウが、意外な事を口走る。

予想外の言葉に、タイガは一瞬返答に迷った。

「…当たり前じゃない。私も能力がなくて世間にゴミ扱いされたのよ。悪喰にも、ゴミに力を与えてやってるんだから感謝しろ、と言われたわ。…頭に泥水をかけられる事なく、普通に高校に通ってたあの頃が懐かしい」

話の途中、ダイルがゆっくり立ち上がる。よろめきつつも、声を出す気力はあるようだ。

「…俺もだよ。かつては妻子持ちの立派な父親だったが今はこのザマさ」

黙るジャリュウ。





…そして、ゆっくりと手を下ろした。






沈黙がよぎる。


「…どうした?手を下ろしたぞ。反撃しないのか?」

タイガは何も言わず、ただただ困惑した顔。

それを見て、ジャリュウも迷ったような顔をしていた。


そんな一同に、忍び寄る影があった。


草を散らしながら、突然現れる大きな影!

それは、タイガ目掛けて飛んでいく。

タイガは直ぐ様察知して爪を射出するが…。


タイガが切りかかるより前に、襲撃者から血が飛び散る。

緑の草を赤く染めながら、地面を滑っていき…相手は倒れた。

大柄な体格に熊の耳を生やした捕食者だった。

今の一撃で死んだようだ。白目をむいている。

タイガは、自分の爪を見る。血はついてない…。


…横を見ると、左手を蛇に変化させていたジャリュウが立っていた。

その蛇の口元には、血がついていた。

「あんた…私を庇ったの…?捕食者なのに…」

「何か、殺しづらくなってな。…だからって、仲間になる気はないぞ」

返答は早かった。唖然とするタイガ…。


…立ち上がったダイルが、大きな声を出す。

「そこにいるんだろ?狼」

どうやら、ハウンディの存在に気づいていたらしい。

ゆっくりと茂みから出るハウンディ。…攻撃してこないのを見て、ダイルも自ら彼に歩み寄る。

「…ジャリュウ。何で庇った?」

「さっき言った通りさ」

タイガは、ジャリュウをぼんやり見つめている。

それを見たダイルは、ほんの僅かに微笑みながら口を開く。太い牙がぎらつきつつも、その顔は優しかった。

「どうやら…俺達は生き残れそうだな。『俺達』は」

ジャリュウとハウンディ、そしてダイルとタイガが、互いに見合う。


「…ジャリュウ、お前が求めた世界は、意外と近いかもしれないぞ」

ハウンディが、ジャリュウに耳打ちした。


…二人は、悪喰の命の下、将来互いに殺しあう者同士でありながら、協力し、力を合わせ、ただただこの世界のあるべき形…平和な世界を目指してきたのである。


…その果てに、ジャリュウは見たのだった。


自分が未だかつて見た事のない者達。

全力で戦いを謳歌し、互いにいがみ合いつつも、互いをよく理解している…ジャリュウとは全く違う人生を、戦いを歩んできた戦士達。


れなと闇姫を…。


「れなと闇姫の戦いを見てから、俺は思った。何としてもこの島から抜け出してやると。自分達捕食者は無害であるとこの世界に訴えかけて…ごく普通の暮らしを手に入れると。…その暮らしのなか、お前やれなたちと戦って、己の力を磨き、強大な悪に立ち向かうと…」


ジャリュウは、ハウンディにしか見せない表情を見せていた。


ハウンディは、何も言わずに彼を見つめた。

「…だが、すまん。もう俺は、平和なやり方を信用できそうにない。何度俺達は戦った?平和の為に、何度迫害された?…俺はもう…。…でも…。…でも、お前とは戦いたくない」

震える声のジャリュウの肩を、ハウンディは迷わず叩いた。


冷ややかだが、何かを感じる…強い声で言う。

「俺が犠牲になる。捕食者になった時点で死ぬ事を覚悟した身だ。タイガを、助けてやれ」


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