二人の捕食者を追って
「タイガ、大丈夫か」
ダイルが、消耗しきったタイガに肩を貸しながら島の一部に身を隠していた。
ハウンディとラオンが見張り番だ。
急いで帰りたいところだが、まだここには何がいるか分からないし、何よりタイガが弱りきっているというのにこのまま連れて行く訳にはいかない。
岩に凭れて息を切らすタイガのいつにない姿を見て、ラオンは今ここで襲われれば自分達だけでは不十分な事を悟った。
しかし…先ほどの戦いで消耗して、助けを呼ぶ為の電波も下手に飛ばせない。
もし飛ばせば、また負傷者が一人増えてしまう…。
「…何も起きない事を望むしかないな」
…ダイルはジャリュウが飛び去っていった方向をしばらく見つめ続けていた。
…その頃、れなと葵はとある敵との戦いに悪戦苦闘していた。
深い谷があるとある山岳地帯にて、二人はある依頼を受けてここへやってきた。
…盗賊を倒してほしいという何の変哲もない依頼だったのだが、今目の前に現れた敵は只の敵ではない。
スッポンのような長い首を持ち、甲羅を背負う黒髪の大男と、トンボのような羽を背中から生やす青髪の細い女。
こいつらは捕食者だ。もう見た目と魔力の質で判別できる。
「トンボは隠れた最強クラスのハンターよ。それを思い知らせてやるわ」
「死んでも離さねえぞ!!」
一斉に飛びかかる二人の捕食者を回避し、葵が直ぐ様ハンドガンで発砲する!
トンボ女には肩に命中し、そこそこ怯ませられたが、スッポン男は自慢の甲羅を向けて弾を弾いてしまう。
弾くと同時に、その重量感溢れる見た目からは考えられない速度で飛びはね、葵に頭突きを決めてきた!
吹っ飛ぶ葵、れなは空中で彼女を受け止めて飛行姿勢を整えさせると、拳を構えてスッポン男の頭部へ叩きつけた!
頭を押さえて墜落するスッポン男だが、すぐにトンボ女が出撃し、れなに素早い連続体当たりをお見舞いした!
同じように落ちるれな…。
地上でれなとスッポン男、空中で葵とトンボ女が睨み合う。
早いところこいつらを片付けようと二人が構えたその時、トンボ女が一瞬体を震わせた。
葵は何かを感じとる。
どうやらトンボ女に、何者かが魔力でメッセージを送ったようだ。
「あら…?マウト様からの帰還命令ね。行くわよスッポン野郎」
れなと葵の動きが止まる。これは、耳を傾けた方が良いと思ったからだ。
「それならこいつらを相手してる暇はない!早いところマウト様のもとへ急ぐぞクソトンボ女…」
「待て!!マウト様って何だ!?」
れなの問いに、スッポン男が憎たらしく笑いながら答えた。
「俺達の主さ。マウト様は捕食者の王国を作り上げようと闇姫のもとへ潜入したのだ。闇姫に協力する事で領土を手に入れ、そこから闇姫の裏を突くという計画さ。俺達は密かにこうして島の外に出て、調査ついでに住人を襲ってたって訳」
ベラベラと話してくれる…。それほどこの計画に自信を持っているのだろう。
どちらにせよ…あの闇姫を騙せるとは思えないが。
「話してる暇はないわ。早くマウト様のもとへ急ぐわよ」
「ああ!俺達捕食者の天下は近い!ようやく…ようやく過去の自分とおさらばだ!」
スッポン男の言葉が、葵は何となく気になった。
過去の自分…?
「…とりあえず、私達もやつらを追うわよ!」
れなと葵も、彼らを追うために飛び出す!
目指すは北…闇の世界だ。
れなと葵は、スッポン男とトンボ女を追いかける。
四人がしばらく飛んでいくと、空は次第に赤みを帯びていき、禍々しい光景が広がりだす。
地上には鋭く尖った岩や紫の木々が並び、荒れ果てた大地が広がる世界。
その世界の先に、黒い建物が並び、漆黒の城が神座する町が見えてくる。
闇の国に到着した。前方の二人が向かう先は、やはり城…闇姫の城だ。
「ち、やつら追いかけてくるぞ…!」
捕食者二人はより速度を上げて飛んでいった。れなと葵も速度をあげようとするが…。
そんな二人の前に、牛の頭を持つ黒い悪魔達が二人現れる!闇の門番だ。
「通さんぞグハッ!!!」
出現して早々、れなと葵はそれぞれ門番に裏拳打ちを決め、一瞬で地上に叩き落とした。
何とも、哀れな門番だ。もはやこの程度、れなたちには何の問題もない。
「ちょ!あいつら悪魔を倒したわよ!」
予想外だったようだ。
あっという間に追い付いたれなと葵。
葵がトンボ女を、れながスッポン男を突き飛ばす。
その勢いで、二人の捕食者は城の窓に直撃、派手に破片を散らしながら城内へ突入した。
そこは、何もない不気味な小部屋だった。
れなと葵はゆっくりそこに潜入、倒れた二人を見下ろし、葵がこう問う。
「何を企んでるの?とりあえずマウト様ってやつに会わせなさい。今の捕食者の指導者であるジャリュウ達と話させる必要が…」
「ジャリュウならここだぞ?」
何者かが割り込んだ。
驚いて部屋の隅の暗闇に目を向ける葵とれな。二人の捕食者も同じだ。
…暗闇のなかには、鼠の耳に灰色の髪の小男が立っていた。そしてその横には緑の髪とアーマー、黄色い目を持つ男…。
紛れもなく、ジャリュウだった。




