ジャリュウへのプレゼント
「ひゃはははははは良いな良いなこの銃ってやつはああああ!!」
崩壊した都市にて、マウトが二丁拳銃ではしゃぎ散らしている。
後ろには巨大なライオンの捕食者、ガウラが首周りの襟飾りを大きく揺らしながら暴れ狂う。
鎧を纏う敵兵すら成す術なくガウラに蹴られ、砕けた鎧の隙間にマウトが発砲する。
圧倒的なコンビネーションだ。
闇姫も、この活躍には目を向けていた。
「鼠にしてはやるじゃないか」
彼らの方を向きつつ、目の前から迫る兵士達には見向きもしないまま、蹴りや拳で正確に殴り伏せていく。
こちらを見ている闇姫に、マウトも気づいていた。
(しめしめ確実に信頼を得てきているぞ!この調子で昇格できれば更に…!)
激しい戦いの一方で、最強の捕食者四人はテクニカルシティをブラブラ歩いていた。
四人で並列して歩いてるのだが、ダイルの気遣いでタイガはジャリュウと隣同士になって歩いてる。
タイガの顔は炎のように真っ赤だ。ハッキリ言って赤すぎる。
「どうしたタイガ?顔が赤いが…熱でもあるのか!!」
鈍感なジャリュウ。タイガは彼の顔を思い切り引っ掻いた。
頬から血を垂らすジャリュウは何故なのか分からない顔をしていた…。
「お」
ダイルが、前にいるある人物に気づいた。
長い緑のサイドテールに緑のワンピース…葵だ。
ガンショップの前で唸っていたが、四人に気づくと手を振ってくれた。
町の見学を楽しむ四人に、葵はガンショップを指差した。
「あそこ、とんでもなく面白いわよ!」
四人が入ると、そこは何とも荒々しい雰囲気の店だった。
木製の壁には猟銃から本格的な軍事採用も成されたライフル銃など、数々の銃器が並ぶ。
カウンターには、ライフルの模型を懸命に磨きまくる厳つい顔の店主が。
四人は普段中々見たことのない兵器に興味津々だ。ハウンディでさえも、目を見開いている。
「おうっ葵ちゃんっ今日もっ来たのかっ今日はっこんなのっどうだいっっっ」
磨きながら店主は器用に後ろの壁にかけられたショットガンを手渡した。
「AT-29ね。短時間だけどフルオート射撃できる珍しいタイプのショットガンよ!」
…葵の銃トークが始まるが、四人は全く聞かずに店内の銃を見て回っていた。
「私こんなゴツいの興味ないわーん」
そう言いつつも、タイガは銀色のハンドガンの各所をマジマジと見つめている。
ダイルは奥にある固定ガトリングを見つめているが…これは売り物ではなく飾りだ。
「どうだジャリュウ」
「これ良いな」
ジャリュウはどれも気に入ってそうだったが、中でも特に彼の心を惹いたのは、ごく一般的なタイプのショットガンだ。
「これ買ってくれないか?」
ジャリュウが葵にねだってきた。葵は、え、と声を上げたくなる。
こんな店があるんだよ、という案内程度のつもりだったのだが、まさか買う気にまでなろうとは。
あいにく、葵は今日は品揃えを見に来ただけなので小銭の一つもない。
諦めてもらおうと葵はジャリュウの方へ向くが…。
その時、誰かが葵の右肩を叩いた。
戦場でもないのに、葵は敵に背後をとられたかの如く驚き、振り返り様に拳を突き出した!
…葵の背後で彼女の拳を手の平で受け止めたのは、れなだった。
自信ありげな表情だ。
いつの間に来たのかという言葉すら忘れ、葵は慌てて拳を引っ込めた。
「…!れな!失礼!」
「大丈夫だよ、あと、買ってあげな」
れなは、左手に大量の札束を持っていた。
忘れていた。れなの家は金持ちなのだ。
「良いのか!?」
葵より先に、ジャリュウが彼女の手から札束をぶん取る。れなは寛大な笑顔で手を振った。
困り果てていた葵は思わぬ救いに喜んだ。
「ありがとう!れな!」
あまりの喜びに体が勝手に動いた葵は、れなの顔面に拳を叩き込んだ!
…ジャリュウは無事にショットガンを手に入れた。
と言っても、島の中が全てであった彼は銃の使い方など知らない。
葵はテクニカルシティの隅にある荒野の岩に試し撃ちをさせていた。
思った以上に大きい銃声にジャリュウは驚いたが、何発か撃っていくごとにだんだん精度が上がっていった。
一時間もする頃には、葵が蹴りで破壊した岩の断片を一射撃の散弾で破壊できる程に上達した。
「凄いわ、やっぱり捕食者って上達速度化け物ね」
「化け物って人聞き悪くね?」
と言いつつも、一時間前に初めて撃ったにも関わらず、ショットガンをペン回しのような感覚で回しているジャリュウは端から見ても化け物だ。
「とりあえずこれがあれば島はより安全になるな。防衛の為に役立てるよ!」
ジャリュウはショットガンを両手で持ち、そのまま飛行して去っていった。
他の三人はまだ町にいるというのに勝手なやつだ。
それ程に、彼は島の外を心から楽しんでるように見えた。
…ジャリュウは、海面を飛行しながらショットガンをまじまじと見つめていた。
島のなかではまず見られなかった道具だ。複雑な造形で幾つもの部品が揃いに揃ってる。
にも関わらず、強力な弾丸を放つのに必要な基本的な動作は引き金を引くだけ。
島の中がいかに狭い世界だったのか、ジャリュウは思い知らされる。
「ん?」
ふと、下から幾つかの音が聞こえてきた。
見下ろすと、そこには何人もの人間達が互いに争っている島があった。
剣や銃を互いに振るいあい、緑の草原には既に赤い血が撒かれてる。
剣が皮膚を切り裂き、銃弾が額に直撃し…阿鼻叫喚の光景のなか、ジャリュウは何かを感じた。
(…外の連中の戦いは、やはりレベルが違うな)
面倒ごとには巻き込まれたくない。ジャリュウは、そのまま島へと直行した。




