地に伏す捕食者の王
地に伏す悪喰の目の前に降り立つタイガ。
無様な姿で倒れる悪喰を睨み付けながら、右手から爪を射出、血を流す額目掛けてとどめを刺そうとした。
だが、そんな彼女を横から誰かが受け止める。
れなだった。
「タイガ。気持ちは分かるけど…」
「こいつはジャリュウを殺したのよ!!!」
悪人もなるべく生かしてやりたいれなと怒りが収まらないタイガ…。他の仲間達も舞い降りてくる。
「…?おい、あれは…」
ラオンが、悪喰の右肩辺りを指差した。見上げる一同。
…悪喰の右肩から、緑の光が溢れている。
…そして、光は一瞬消えたかと思うと、悪喰の右肩を突き破り、何かが姿を現した。
…それは、赤い血を纏うジャリュウだった!
「ジャリュウ!!」
タイガが目を輝かせる。
ダイル、そしてれなたちは驚きを隠しきれず、ハウンディだけは表情を変えない。悪喰の体を滑り降り、悪喰の前に立つジャリュウ。
自らの血にまみれた顔で、悪喰は驚く。
「ジャリュウ…!貴様は食い殺したはず…。なぜだ…」
よく見ると、ジャリュウは赤い光の玉を持っていた。
悪喰はそれを見ると、みるみる青ざめる。
ジャリュウがその玉を握りつぶすと、玉から四つの光が飛び出し、タイガ、ダイル、ハウンディの手元へ舞い降りる。
「あんたの心臓、頂くぜ」
「やめろ…!も、もう殺しあえなどという掟など作らん!お前ら全員に自由をくれてやる!!早くその光を我が内に戻さんかぁぁぁ!!」
ジャリュウは、光の玉の断片を口に放り込む。
悪喰は恐ろしい悲鳴をあげ、島中の木々を震わせた後、一気に意識を失う。
…れなたちは、ただ呆然としていた。
気づくと、ダイル、タイガ、ハウンディも光を口にしている。
「…お前ら、すまなかった。うっかり食われちまって」
「何を言ってるジャリュウ!お前があの時俺達の言いたい事を全て代弁してくれたようなものだ!タイガとハウンディもそう思ってるだろ?」
ダイルが笑いながら振り替えると…そこには、顔を真っ赤にするタイガの姿が。
タイガはダイルを押し退けると、ジャリュウの頬に強烈な平手打ちをぶちかます!
肩に力が入るれなたち。
「クソ馬鹿!!何食われてんのよ!!最強のあんたが!!一足先に死ぬつもりだったの!?」
涙が止まらないタイガは、更にもう一発平手打ちをお見舞いした。
ジャリュウは笑いつつも、明らかに痛みを隠しきれてなかった…。ダイルは大笑い、やはりれなたちは置いてきぼり。
…さすがに十発目が飛んできた時、ジャリュウは身を後ろに反らした。
「避けようとすんじゃないわよ!!」
「ちょ、待てタイガ!!叩きすぎだ!死ぬ!それにこんなんじゃ、お前に礼を言えねえよ!」
タイガの動きが止まる。
ジャリュウは、ポケットから何かを取り出した。
赤の宝石と、青の宝石だ。
タイガが彼に渡した物。
「やつの体内は真っ暗で、俺は体を食いちぎられ、正直希望を失った。でもこいつの煌めきを見て、お前らの事を思い出したんだ。タイガ、ダイル、ハウンディ、そして」
れなたちの方を見るジャリュウ。
何とも言えない表情のれなたちが立っていた。
「島の外の、面白い連中の事をな」
「…」
四人の捕食者は、捕食者の王無き後、この島をどうしていくか話し合う為、一旦島の目立たない岩場まで向かった。
あとでテクニカルシティまで向かい、悪喰撃破に協力してくれたお礼をするという事だ。
残されたれなたち四人は、横たわる悪喰の体を自分達のエネルギーで作り上げた青い炎で燃やしていた。
水平線の向こうの夕日が緑の島をオレンジに染め上げ、青い炎すらもその光に呑まれかけている。
炎はあっという間に悪喰を灰に変え、一同は穴を掘り、そこへ灰を流して彼の墓をたててあげた。
墓と言っても、島にあった手頃な大きな岩を置いたくらいだが、このまま腐りゆくよりは彼の為になるだろう…。
「…捕食者の王がこの様か」
…そんな彼らの姿を、一つの影が見つめていた…。




