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悪喰の正体

「折角ここまで強力な蛇の力を与えてやったというのに、外への憧れなどと言う下らぬ願望の末に命を失うとは」

再び悪喰の目だけが暗闇に輝き、目の前の三人を見下ろしていた。

タイガの全身が激しく打ち震えている…。

…恋する相手を無惨な形で奪い取った悪喰への怒りか。それともジャリュウを失った悲しみか。

「この島一の最強の捕食者が消え、お前達を含めても島にももう少数の捕食者しか残っていない。もはやこの島も壊滅か」

悪喰の目が、ゆっくりと揺らめきだす。既にダイルは嫌な予感がしていたのか、立ち上がっていた。

そんな彼を見て悪喰はある事を話し出す。

「…もう良いだろう。お前らに、この捕食者の歴史の真相を教えてやろう」


…タイガ以外の二人は慎重さを崩さない。


「お前達捕食者は、世の中から見捨てられた身。生きる資格を失った者達。そんな者達に、ワシは目を付けた。全てに絶望したお前達であれば、僅かに希望を見せればどんな計画にも利用できるとな」


ハウンディが、立ち上がる。タイガだけは、尚も震えていた。


「ワシはこの島を作り、そしてお前達に様々な生物の力を与え、ちょっとした遊びをした。この様々な生物を戦わせ、弱肉強食の頂点には誰が立つか、というサバイバルゲームだ。お前達はこのワシに従い、ワシの思うように殺し合ってくれた」

冷たかった悪喰の声に段々と感情が宿る。

…喜びだ。ハウンディは分かった。

「最後に生き残った者にくれてやる優勝品。それはワシの奴隷として一生使われる権利だ。島の外へ出して自由にしてやるという話は、お前達を殺し合わせる為に用意した虚言だ。世の中に打ち捨てられたお前達が何より望むもの。それは世の中に戻り、もう一度人生をやり直す事だろうからな。ピッタリだろう?」

つまり…ジャリュウが信じぬき、信頼する自分達と殺し合う覚悟もしてきた自由を得る権利の話も、全て嘘だった。最後はこの悪喰にこき使われ、あのジャリュウのように食われるのがオチという訳だ。

「あらゆる捕食者を食らいつくした最強の捕食者を作り上げ、世界の全てを手にする事。それがワシの目的だった…!世界を手にした後にその捕食者を食らえば、ワシは更なる力を手に入れる事にも繋がるしな!」

何とまあ、どこにでもいるような悪党だ。だがこの島に縛られ続けたタイガは、悪喰が世界有数の凄まじい悪党に感じられた。

そんな悪党が、ジャリュウを食い殺した…愛する人が、こんなやつに。


「てめぇぇぇぇ…!!!」

タイガは両手の爪を伸ばし、悪喰へ飛びかかる!

だが怒りに満ちた獲物の動きなど悪喰には止まって見えるだろう。

タイガも瞬時に触手に絡み付かれ、ジャリュウと全く同じ状況に。

それでも尚、タイガは悪喰の触手に爪を振り下ろして抵抗を続ける。

「全く失望するぞ」

悪喰の口が、再び出現する…。



…と直後、悪喰の触手が血を吹き出しながら引きちぎれてしまう。

地上に落ちたタイガを抱き抱えたのは、両手を赤く染めるハウンディだった。

「逃げるぞ」

ハウンディはそれだけ言うとタイガをおろし、ダイルと共に駆け出した。慌てて追いかけるタイガ。


…穴を見つけ、地上に飛び出す三人。

太陽の光が三人を照らし出す。

「逃がさんぞ」

突如島全体が激しく揺れ動きだし、地表をヒビが侵食していく。

地面は少しずつ盛り上がって崩れていき、そこから何かが現れる!


…それは、顔は人間、体は緑の毛を生やした四足獣、手足は爬虫類、尻尾は魚、背中に無数の赤い触手を持つ、醜悪かつ巨大な怪獣だった。

その怪獣…悪喰は、とてつもなく大量の牙と三枚の舌をちらつかせながら、三人へ死刑宣告を下す。

「この島の王であるワシに反逆せし愚か者ども!今ここで貴様らを消してやる…」

悪喰は、森の木よりも巨大な体で走りだし、三人へ向かってくる!

足元に他の捕食者がいてもお構い無しだ。次々に踏み潰していき、悪喰の足には血と肉片がべったりとこびりつく。

三人は飛行し、悪喰の隙を探しだす。

三人が見つける前に、悪喰が三人全ての隙を見つけ出す。

悪喰の背中の触手が複雑に絡み合い、虎を模したような形に変化する!

三人の目には、目の前に突然赤い巨大な虎が現れたように見えただろう。

「ワシはお前らに力を与えた。こんなものはもはや技ではなく芸も同然だ!」

その芸である虎からは、凄まじい殺気が溢れていた。三人に圧倒的な力を見せたところで悪喰は触手虎を空中の三人へけしかける。

触手虎は空中を駆け抜け、タイガへ向かっていく。

「こんな人形など…!」

自慢の爪を振るうタイガだが、触手虎の一部を構成している触手が飛び出し、爪の攻撃を代わりに受け、引きちぎれる。

触手の断面からは更に大量の触手が飛び出し、タイガを拘束する!

触手虎は巨大な手でタイガを叩きつけ、吹っ飛ばす!

ダイルが彼女を受け止め、何とか地上に落ちるのを防いでみせた。

「ぐ…こいつ…」

「タイガ…!悪喰よ、もう様をつけて呼ぶ必要もないな!」

ダイルは触手虎に突撃するが、その瞬間触手虎は元の触手に分裂し、ダイルを打ち付ける!

ダイルが怯んだ隙に、触手は更に集合して、今度は鰐の姿に!

「おのれ悪喰!!俺達をもてあそんでるのか!」

大口を開けて迫る触手鰐にダイルは蹴りを仕掛ける!

触手鰐は一瞬押される程度で、直ぐ様頭を叩きつけてダイルを押し返す!

まともに食らい、ダイルは地上に叩き落とされてしまう。

地上の木々がへし折られ、砂煙を見ながら、ハウンディは歯を食い縛る。


「この悪喰に歯向かった事を後悔するが良い」

触手鰐が、ハウンディに向かっていく!!

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