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宿敵同士への眼

…テクニカルシティの事務所にて、久々に仲間達が全員集結した。

闇姫に傷つけられた粉砕男を中心に、これからどうすべきかを考えているようだった。

「闇姫が捕食者達を滅ぼそうとしてるのは確かだな…」

粉砕男の隣で肘をつくラオンが意見を出す。

「…とは言うが、捕食者も全く安全な存在とは言えないんだよな」

「その通りだ。そもそも捕食者自体得体が知れない。やつらが何者なのかも探る必要があるが…それでもやはり俺達が戦うべきは闇姫だ」

粉砕男の目の前にはれなが座っており、その左に死神兄妹、右にれみと葵。

皆の視線は、れなに向いていた。

いざという時、闇姫相手に一番よく戦えるのは、れななのだから。

「…え?なに?私の手足に何かついてる?」

(そこは顔じゃないのか)

ラオンだけは、れなを見る目がどうも冷たかった…。



…と、まさにその時だった。

突然、事務所の二階からガラスが割れる音が響いた!


一同は立ち上がり、冷静な面持ちで二階へと駆け上がる。





「…お前は!」

ラオンが、その侵入者を見て驚きを隠せない。



「…あんたたち、ジャリュウを助けて!!」


窓を割って入ってきたのは、タイガだった。









「一つ聞こう。何で一人で来た」

「…言えんな」

青い海の上、闇姫とジャリュウが睨みあう。

一人で来た事情を話そうとしないジャリュウの重苦しい表情を見た闇姫は、それでもう分かった。

「何者かの命令を受けてるな。しかしそいつに逆らえない」

ジャリュウはあからさまな程に驚いた顔だ。

様々な戦場の様々な戦士の顔を見てきた闇姫は、相手の表情を見るだけである程度の諸事情が分かる。特に今回のジャリュウの表情は心情がだだ漏れだ。

「これでお前達の背後に黒幕がいるという事が分かった。厄介になる前に、そいうを殺そう」

「ま、待て。通さねえぞ! 」

こうなればもう何としても闇姫を通す訳にはいかない。

…悪喰では闇姫に勝てないと、今ので分かったのだ。

あんなやつでも一応自分達の主。

…ダイルの言う通り、自分達も食うつもりなのかもしれない。


…でも、もし生き残った者に自由を与えるというのが本当だったら…?

だとしたら、闇姫に悪喰を殺される訳にはいかない。

…だが、その悪喰が死ねば、逆に自分達は自由になるのでは…?

…ジャリュウの心は、闇姫の冷たい目に睨まれ、不安定になっていた。


…とにかく、ここは戦うしかない。


ジャリュウは先手を討つべく、右腕を蛇に変化させ、闇姫へけしかける!


闇姫はその腕を掴み、引っ張ってみせる。


ジャリュウの右腕の骨や筋肉の複雑な構造が、ほんの一瞬で引きちぎれる音が、鈍く響く。


次の瞬間、ジャリュウの腕は完全に千切れ、血飛沫が派手に舞い散る。

闇姫はその返り血を浴びつつも、なお表情を変えない。


「ぐうう!!」

痛みに若干声を裏返しながら、ジャリュウは腕を再生した。

再生した腕も、所々血がついている。

息をきらしながら、ジャリュウは闇姫を睨み返す。彼は退く気は微塵もないようだ。

闇姫は腕を組んだ。ジャリュウの度胸に応えてやる必要があると考えたのだ。

「…良いだろう。お前達の主を殺すのは、お前を殺してからだ」

闇姫の背中から灰色の翼が飛び出し、勢いよく飛んでくる!





「うおお待てー!!」





ジャリュウの目の前に何者かが現れ、闇姫に蹴りを放つ!!

吹っ飛ばされつつも、体勢を整えて止まる闇姫。



「…またお前か」



ジャリュウの目の前に…れなが現れた。

黄色いツインテールが風に揺れ、ジャリュウの顔にかかる。

その感触で、親友ハウンディを思い出したジャリュウは、一瞬で理解した。


助かったと。


「こいつは私の専門だ!任せろ!」

頼れる台詞と共に闇姫へ向かって左足で飛行蹴りを放つ。

闇姫は蹴りを右手で受け止め、左手で殴り付けようとするが、れなは直ぐ様離れつつ、右足を構えて拳を受け止める。

闇姫も離れ、両手から紫の光弾を放って猛烈な遠距離攻撃を決めてくるが、れなは両手にエネルギーを集めて青く光らせながら光弾を殴って破壊していき、闇姫へ真正面から突撃、掴みかかる!

れなの手の平を闇姫も掴み、互いに退かぬ覚悟を見せつけあう。

睨みあう両者を見て、ジャリュウの強者の勘が、ある一つの事を予想した。

この二人は、大昔からただならぬ因縁に結ばれ、いがみ合っている。

しかしそれ故に、互いの事を誰より理解しあっていると。

お互い、相手が放つ戦闘スタイルを完全に理解しあい、中々決着がつかないこの戦闘が何よりの証拠だ。


…島の中で想像していた外の戦士のイメージは、山を切り飛ばしたり海をかち割ったりと強大な力を持つ強者というイメージであったが、それだけではなかった。

この広い世界で、何度も何度も戦いを続けていった者達…その者達は、戦いを通じて得た記憶や感覚が体に染み込み、新たな力を身に付けていくのだ。

今目の前でやりあってる二人を見れば分かる。この動きは決して生まれ持った物ではない。



れなと闇姫が互いの顔面を殴り付け、衝撃波がジャリュウの緑の髪を吹き付ける。

彼の無機質だった目は…驚きを隠せていなかった。



れなの体は黒ずみ、闇姫も口から血が垂れていた。

誰よりも闇姫の相手をしてきたれなは、戦闘力に差があれど経験で彼女をねじ伏せられる。

しかし闇姫も闇姫で、れなの事は経験で理解している。

れなと闇姫。この二人が戦い、どちらが勝つのか予測する事は、恐らくこの世の誰にもできない。


闇姫が拳を突きだす。

れなの方が負傷しているが、そんなれなにも容赦なく闇姫の拳は鋭く、硬かった。

れなの防御は間に合わず、顔面に拳が炸裂。あまりの衝撃に、三人の真下の海が凹み、海中に穴が空いた。

吹き飛ばされるれな。ジャリュウは、勝負あったと考えたようだが…。


れなが、吹き飛ばされながらも右手を構える。

そして、青い破壊光線オメガキャノンを発射した!

闇姫は翼を羽ばたかせてかわそうとしたが…。

「…!なに…」

光線は、生きているかのように闇姫の目の前で曲がり、彼女の背後へ回り込み、飲み込んだ!

蛇のような動きで、ジャリュウが勝てなかった闇姫を飲み込む光線…ジャリュウには一種の皮肉にも見えたが、嫌な気はしなかった。

いやむしろ、その光景に感動さえしていた。


(すげえ…)

恐らくジャリュウは、生まれて初めて他者の力にこの言葉を心に浮かべた。



闇姫は両腕で顔を覆って防ぎつつも、完全に防ぎきる事はできなかった。

手足から煙が出ており、脇腹からは血が出ている。

ゆっくり手を下ろし、こちらを睨む闇姫。

「腹立たしい事だ。幾万の戦士と戦った私だが、お前との勝負だけは確実な勝機を感じられん」

右手で握り拳を作る闇姫。ほぼ同時に、れなも左手で拳を握る。


二人は、閃光のごとく一瞬にして近づきあい、互いの拳を炸裂させた!

突風が吹き荒れ、雲が消し飛ばされていく。

ジャリュウはただただ、置いていかれた気分にされていた。


「ぐっ…」

…負けたのは闇姫だった。

右手を抑えながられなを睨みつつも、後退していく。

そのまま翼を激しく羽ばたかせながら空の果てへ飛んでいった。


…れなも完全勝利ではない。

今の衝撃で、左手の機能が全て停止して動かなくなり、ぶら下がるように脱力していた。


「…大丈夫?」

れなは、ジャリュウを見て呟いた。




ジャリュウは、何も言う事ができなかった。

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