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闇姫、島へと潜入

捕食者の島の地下にて。

捕食者の王である悪喰は、闇姫軍に送り込んだスパイ捕食者との通信が途絶えて混乱しているようだ。



「悪喰様」

暗闇のなかに声が響く。


悪喰の目の前の闇の中から、ジャリュウが歩いてきた。

相変わらず蛇のような無機質に黄色く輝く目で、悪喰の殺意に満ちた赤い目を見つめてる。

「侵入者です」

「直ぐ様始末しろ!!」

苛立っていた悪喰は怒鳴るように命じた。

やれやれとほくそ笑みながら、ジャリュウは再び地上へのルートを進んでいく。




海岸にて。

蟹のような赤い鋏と殻を持つ捕食者達が、空から舞い降りる侵入者を睨んでいる。


灰色の翼を広げた闇姫が、砂浜の砂を纏いながら降りてくる。


捕食者の頭に話し合いなんて言葉は無い。闇姫が地上に降りるなり、鋏を振りかぶって襲いかかる!

次々に振り下ろされる鋏だが、闇姫は右に一回動くだけで全員の鋏を回避した。

そのうち一人の鋏を掴む闇姫。

蟹捕食者は抵抗するが、闇姫の腕力から抜け出せる訳がない。

そのまま自身に引き寄せ、腹に左手の拳をぶつけ、その衝撃で鋏の腕を引きちぎる。

鮮血に身を濡らしながら、闇姫は腕無しの捕食者を蹴飛ばし、手早くとどめを刺す。

他の蟹捕食者は恐れる事なく向かってくるが、闇姫は飛び上がり、回転しながらそれぞれの頭部に蹴りをお見舞い。

蹴られた彼らの頭はあまりの衝撃で弾け飛び、やはり血の噴水が。


彼らの死体に冷ややかな目線を向けながら、闇姫は何も言わずに歩いていく。

黒いスカートとツインテールが、潮風を受けて不穏に揺れていた。

邪魔は殺すのだ。


森へ突入する闇姫。

ここでも虎やライオン、蛇にトカゲと言った様々な捕食者が現れたが、人差し指、強い者で片手だけで十分だ。

外見にどんな特徴があったかなど覚えてない。



しばらく進むと、川原に出た。

少し先には美しい清流が流れてる。


「よく来たな!」

勇ましい声が聞こえてきた。

上を見上げると、棘の生えたヘルメット、深緑のアーマーを纏う屈強な大男…鰐の捕食者ダイルが。

ダイルは地上に降りるなり、巨体に似合わぬ速度で闇姫に殴りかかる!

横に転がってかわし、反撃の拳を決めようとする闇姫だが、ダイルは表情を歪めつつも闇姫の拳を蹴って防いでしまう。

「ほう、やるな」

控えめな返事だが、闇姫は期待した。

そういえばこいつはこの間軽くやりあった最強の捕食者の一人。あの時は大した期待もしてなかったが、意外とやりそうだ。

ダイルは更なる追撃で拳を突き出してくる!

闇姫は下がりながら回避する。小柄な闇姫と大柄なダイル。体格差で不利に見えるが、即座に闇姫がダイルの脇腹に回し蹴りをお見舞いし、呻かせた事でそんなものなどもはや関係ない戦いである事を証明した。

タフなダイルはダメージを受けても高く飛翔し、今度は闇姫の頭上から拳を振り下ろしてくる。

闇姫は受ける事なく無難に回避した。ダイルの拳は地面にぶつかると同時に大地を凹ませ、周囲の木々や岩を吹き飛ばし、離れた距離にあった川もこちらに水飛沫が飛んでくる程にまで跳び跳ねた。

顔を濡らされた闇姫は不快そうだ。

「手早くとどめといこう」

闇姫は右手から鋭い爪を射出。肌色の手先に、黒い爪が伸びている。

ダイルは一瞬狼狽えつつも、勢いよく猛進してくる!凄まじい勢いで距離を縮めてくるが、それにも臆さず闇姫もダイルに走っていく。


爪を構える闇姫…。

そしてダイルは相手が構える隙を見逃さない。

川から顔を出す鰐のように、相手の動きを読んでどこをどう噛み砕くか考えている。ダイルの相手は大抵の場合、この単調に見える突進に騙されてその拳に打ち砕かれるのだ。

実際、これまでの百人あまりの捕食者は皆そうだった。


…だが、悪魔は違った。

闇姫はダイルにぶつかるまさにその瞬間、爪の構えをずらしてみせた。

体勢が崩れたのかと思い、ダイルは攻撃を叩き込もうとしたが、闇姫はその拳をヒラリと回避する。

「なに!?」

ダイルが驚いている隙に、闇姫は状況を利用する。

ダイルが勢いよくふらついた事で僅かに浮遊してるのを見て、彼の真下に入り込み、拳を振り上げた!

空高く打ち上げられるダイル。一瞬何が起きたのか分からないようだった。

闇姫の背中から灰色の翼が生え、空に打ち上げられたダイルへ向かう!

「うおおおおおおお!!!」

相手のペースにのせられつつも、ダイルは必死に叫んだ!


「…」

…何かの気配を感じた闇姫は、空中で振り替える。



…闇姫の背後から、どこからともなく蛇が飛んできた!

素早くバク転して蛇の頭上を飛ぶ事でかわすが、蛇は闇姫の足に牙をかすらせた。

軽く舌打ちしながら、闇姫は地上に降りる。



…右腕を蛇に変化させているジャリュウが、闇姫を睨んでいた。


いや、ジャリュウだけではない。左右の草むらの向こうから殺意を感じる。

全身を震わせ、今にも飛びかかりそうな虎の殺意、ゆっくりと、冷たい視線を向けつつもはっきりと分かる殺意を向けている狼の殺意。


「出てこい」

闇姫が一言だけ発すると、草むらからタイガとハウンディも現れた。

強い風が吹き、それぞれの髪が揺れる。特にハウンディの長髪と闇姫のツインテールが目立っていた。





…同時刻。


「おい。感じるか?」

テクニカルシティのれなたちの拠点、事務所にて。

黒いタンクトップを着た粉砕男が、遥か彼方から発せられている殺意を感知した。

「え?」

ソファーに座りながら、粉砕男をうっとり眺めていたドクロは気づいていない。

その横には、妹は渡さんとばかりに骨の顔の穴を歪めながら粉砕男を睨み付けるテリーの姿が…。


「…様子を見に行くぞ!」

立ち上がる粉砕男。

死神兄妹も後から立ち上がる。

そして三人は、捕食者の島へと向かうのだった。


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