闇姫 盗賊を襲撃
「…ボス!大変です!お、恐ろしいやつが…!」
丸くて赤い体に盗賊服を着た…というよりも巻き付けた生物達が、岩のアジトで騒ぎ立てている。
一回り体の大きなボスが部下達を押し退けながら監視カメラのモニターを覗く。
…そこには、黒いツインテール髪に右目には翼のような形の眼帯、紫の宝石のペンダントに黒いスカートの女、闇姫が真っ赤な左目を光らせながら、洞窟のようなアジトを我が物顔で歩く姿が。
その後ろには青いダイヤモンドに手足と黄色い角を生やしたような姿の生物…闇姫軍四天王のダイガルの姿が。
「恐れる事ぁねえ。良い獲物が来たじゃねえか。悪魔の頂点がこんな場所に何の用だか知らねえが、こいつらをぶっ倒して金目の物を片っ端から頂こうじゃねえか!」
ボスは自信満々に、打倒闇姫を豪語した。
「…闇姫様。こんな不潔な場所に本当に宝があるのですか?」
「盗賊を見誤るな。やつらは時に凄まじい物を堀当てる時がある。まあ…」
岩の壁と天井が続くなか、闇姫は立ち止まる。
…通路の先から、何かが飛んできた。
一本の矢だ。
闇姫は、矢を軽くつまんで受け止めた。
「その宝の価値に気づいてない事が大半だがな」
矢は、真っ二つにへし折れた。
「…かかれー!!」
また、通路の闇から何かが駆けてくる。
短剣を持った丸い生物達…盗賊マルマンの軍団だ。
ダイガルが闇姫の前に浮遊しながら躍り出る。
「むん!」
強者の威厳に溢れる声と共に、短い手足を振るって無数の盗賊達を一瞬で薙ぎ倒した!
具体的にどんな打撃を打ち込んだのか見えたのは闇姫だけだ。盗賊達から見れば、見えない壁にぶつかったような感覚だろう。
ひっくり返った盗賊達を見下しながら、二人は先へ進んでいく。
「闇姫様」
特に何もない岩の通路のなか、二人は突然立ち止まる。
…目の前は、一見すると何もないが、二人はここに仕掛けられた罠に気づいていた。
「左右の壁に仕掛けられてます。どうしますか闇姫様」
「原始的な罠だ。避ければ体力の無駄だ」
闇姫は迷わず先へ進む。
突然の豪音と共に左右の壁が崩れ、巨大な鉄球が闇姫を挟み撃ちにする形で転がってくる!
闇姫はそこから動かず、体全体で鉄球を受け止める!
鉄球は一瞬にしてヒビで埋め尽くされ、粉々になってしまう。
全身に闘気を込めれば、避けるまでもないのだ。
「流石ですな。私も負けませんぞ」
ダイガルが闇姫の前へ先行する。
罠がこれだけではない事も分かっていたのだ。
…ダイガルが少し進むと、彼の頭上の天井が突如変形し、大量の矢を放ってきた!
頭上から次々に炸裂する矢だが、ダイガルの頑丈な体には一本も突き刺さらず、それどころか矢の方が潰れるように歪み、へし折れ、地面に落ちる。
「頭の硬さなら闇姫様より私の方が上ですぞ!!」
闇姫は軽く頷いて更に足を進めた。
「うひええ…どうしますボス!最大の罠を避けもしませんでしたよ…」
「か、構うな!!とにかく行け!もうとにかく行け!」
曖昧で頼りなさすぎるボスの命令で駆けていく部下達の姿は虚しいものだった。
そして彼らは一気に絶望に叩き落とされる事となる。
「…!!」
盗賊達は後ずさる。
…つい今まで目の前のモニターに映っていた闇姫とダイガルが、もう自分達のいるこの部屋に辿り着いていたのだ。
「…!か、かかれー!!」
ボスの一声で、部下達はやけになってその短い足を走らせ、短い手に短剣を持って襲ってきた。
…ダイガルは無数の盗賊の群れに向かって突っ込んでいく!
突き飛ばされる盗賊達。その勢いは凄まじく、壁や天井に穴を空けて吹き飛んでいった。
その衝撃で洞窟全体が揺れ、頭上からは砂埃が降り注いでくる。
残されたボスは岩の壁に背中を張り付け、部下達が突き破ったあちこちの穴を見渡しながら息を荒げる。
「あ」
ボスの目に何かが映った。壁にかけられた、大きな斧だ。
ボスは斧を手に取ると、闇姫目掛けて振りかぶりながら突撃してきた!
「おらあー!!!」
…勢いよく振り下ろされる斧だったが、ボスが振り下ろした頃には闇姫は目の前から消えていた。
地面に突き刺さる手元の斧を見て、丸く見開いた目で辺りを見渡す。
「ここだ」
…背後に回っていた闇姫が声をかける。ボスは急いで振り返り、斧を振ってくるが、焦りのあまり警戒が解けた。
勿論こいつを倒すのにこんな手間のかかる手順を踏む必要はない。完全なお遊びだ。
闇姫は彼に軽く蹴りをお見舞いしてやった。
とてつもない風圧と共に吹き飛ばされ、他の部下と同じように天井を突き抜けていくボス。
遊びは、もう終わりだ。
「退屈だ。こんな時は戦いたいものだな」
闇姫は軽くため息をつきながら、皮肉を吐き捨ててやった。
「闇姫様ー!ここにありましたぞ!!」
ダイガルが、ある一つの壁を破壊して何かを発見した。
瓦礫にまみれた壁の向こうには…沢山の宝箱が積み込まれていた。
闇姫は、大量の宝の中からある一つの宝を取り出した。それは、プラスチックの玩具のような剣…おおよそ宝とは言えないような一品だった。
「闇姫様。それ只の玩具ですよ」
「知らなければそう見えるだろう。だがこれは『眩ましの剣という宝剣。名の通り見た目で人々の目を欺いてきた高価な剣だ」
ダイガルは眩ましの剣を持ってみる。確かに他の剣よりも重く、本物の剣のようだった。
「しかしこんなのよりもっと強い剣は軍にいくらでも保有してます。なぜわざわざこれを」
「こいつを餌に、私の妹達を呼び寄せる」
ダイガルの表情が曇る。
ついに、闇姫の妹達がやって来るようだった。




