謎タイミングの鬼ごっこ
ジャリュウとハウンディ。
二人の捕食者と対峙したれな姉妹は、この事をドクロに話しながらテクニカルシティの隣森を歩いていた。
花を踏まないように器用に歩いていく。
「でも特に積極的に襲ってくる訳ではないでしょ。そのまま放っておけば良いのよ」
ドクロは言うが、それでもやはりあの二人のあの何とも言えないオーラを感じると、安心していられないような気がしていた。
それに、島の上にあったドローンも不安要素。捕食者に関わってるのが自分達だけだとも思えない。
これから、また何か大きな事件が起こらない事を祈るばかりだが…。
「我が妹よ」
不穏な気持ちになったところへいきなり低い声がしたものだから、れな姉妹は跳ね上がった。
振り替えると、ドクロの背後に黒いスーツを着た骸骨男が立っている。
彼はテリー。こう見えて、ドクロの兄の死神だ。
どこから現れたのだろう…。こいつはこんな風に神出鬼没なのだ。
「お兄ちゃん何しに来たの?乙女達の間に割り込む気?」
「相変わらずキツいなお前は。そうに決まってるじゃんか」
骨の手でドクロを撫でるテリー。別に悪いやつではないのだが、何というか、色々とうざい。
「…なるほど捕食者か。捕食者が賢い連中ならその島にこのまま籠ってくれそうだが、同時に何かしらの理由で襲撃をかけてくる可能性もあるという事か」
どちらにせよ、力を振るえば危険な相手である事には変わらない。このままいつやってきてもおかしくない…。
「…まあ考えてても仕方ない!鬼ごっこでもしよう!」
…やはりれなは度を越えた楽観的思考。突然切り替えて鬼ごっこでもしようとか言い出した。
だがそんな彼女のムードで周りが癒されるのも事実。確かに今は考えてても無駄だ。
「じゃんけんぽん!!」
れなたち三人の手がパー、テリーの白い手はグー。
見事にテリーの一人負けで、彼が鬼となった。
テリーはヤル気満々だ。れなたちは逃げる役になったのだが、実は若干焦っていた。
その理由は単純明白。
「に、逃げろー!!」
叫ぶなり、れな、れみの順番で背中に軽い感触が走った。
振り替えるとニヤニヤと顔…というより頭蓋骨の穴を歪めるテリー。脂肪も皮も無い彼は、とにかく速いのだ。
開始一秒で捕まったれなとれみは、近くにあった切り株に座って不満そうな顔。
「何でドクロちゃんは捕まえないの!?舐めプ!?ひいき!?」
れみに怒鳴られ、それなりの速さで走り始めつつもニヤニヤしているテリー…。妹だから油断してやってるのだ。
…と、遠くの方を見てみると、ずいぶんな距離を離していたドクロがこちらに向かって走ってくるのが見えた。
なぜわざわざ鬼に向かっていくのか。テリーは困惑してタッチする事を忘れてる…。
「れなとれみに失礼でしょーが平等に扱えー!!」
テリーの顔面に豪快な蹴りをぶちかますドクロ!
吹っ飛ばされるテリー。地面に叩きつけられ、草を撒き散らし、白い体の一部を泥で茶色く染めながら倒れるテリー。
その隙を突き、ドクロは今走った距離を取り返すように再び逃げていった。
「さすが我が妹。相手にとって不足はないわぁぁ!!」
再び草を散らしながら駆け抜けるテリー。突風が舞っている。
…一応言うが、これはただの鬼ごっこだ。
「待てー!!」
骸骨男が全力疾走で追いかけてくる…死神兄妹の鬼ごっこは恐ろしい光景だ。
ドクロも負けじと駆け抜ける。足の速さはドクロも自信がある。
森の中のあちこちを走り回り、森の住人は良い迷惑だ。
…また別の場所では。
「この辺にするか」
ドクロマークから短い手足を生やしたような姿をした生物達が、長い雑草に囲まれた広場でブルーシートを敷いていた。
彼らの近くには、真っ黒で、赤い字で「闇」と書かれたマーク付きのトランクが。闇姫軍の物だ。
彼らは闇姫軍の兵士。ここで野宿するつもりのようだ。
「…ん?」
突如、大地が揺れる。
振り替えると…雑草と雑草の隙間から、猛スピードで走る白髪の少女が見えていた。
あまりに突然の事に兵士達は対処できず、そのまま一瞬で突き飛ばされた!
真上に吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる兵士達…。
「いてえええ…な、何だった…」
一人が顔を上げると、更にとんでもないものが目に飛び込んできた。
それは同じように猛スピードで駆け抜ける…骸骨男だった。
恐ろしい形相でこちらに迫ってくる…。
今度は先程以上に動揺する兵士達。硬い骨の体に打ち付けられ、またもや吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「ちくしょーふざけやがって!」
兵士達は怒り狂い、兄妹の後を追いかけた。
色々と森を駆け抜けまわり、軽く突風が起きて森の木々が揺れだした…。
…ワチャワチャとした鬼ごっこの末、ついに兵士は疲れ果ててしまった。
「と、とても追い付けん…」
緑の地面に腰を下ろし、(といっても腰がないが)激しく息を切らせる。
かなり広範囲を移動していたらしく、兵士達は先程とは全く違う広場に出ていた。
「ん…?」
ふと気配を感じる兵士達。
横を見ると、そこにはれなとれみが切り株に座っていた。
目が合う一同。
「あ。闇姫の兵士達」
れなが、右手を向ける。
右手の平から放たれる、青い破壊光線。
「うぎゃああああ!!」
派手に吹っ飛ばされる兵士達。何もしてないのに闇姫の兵士というだけで吹っ飛ばされてしまうのだった。
「タッチ」
…そして、テリーは難なくドクロを捕まえるのだった。




