7話 悪魔族、王を知る
今日は後4話出します。次回投稿予定時間:11:30
「お母様」
ピクニックから1日過ぎ俺はお母様から魔王の事を直接聞く事にした。本当はメイリアに聞こうとしたが──
「それはぜひ奥様にお聞きください。きっとお喜びになりますよ」
と言われてしまった。それでも聞こうとしたけど結局教えてくれなかったし……
「どうしたの? フレイル」
「あのね……」
──なんて言おう、聞く事しか考えてなかったからどう聞くか考えてなかった。どうしよう、言葉が出てこないな。
「ごめんね?」
しゃがみながら何故かそう言われた。なんで今謝られたんだ?
「ママはお仕事に行かないといけないの」
「……」
どうやらお母様は自分と遊びたいと勘違いしたらしい。まぁお母様ならしそうな勘違いだ。うーん……仕方がない、普通に聞こう。勘違いさせたまま行かせるのは違うしね。
「でも大丈夫、今日はママ仕事サボっ、早めに終わらせて──」
「お母様のお仕事してる所が見たいんだ」
「……?」
どうやら理解が追いついていない様だ。実際顎に手を当てているし、少し待ってみよう。数秒経った後、お母様は口を開いた。
「ごめん、よく聞こえなかったからもう一回言って?」
「お母様のお仕事してる所見たいなって、駄目?」
言葉を言い終えた瞬間、お母様が一瞬だけ輝いた気がした。目がチカチカするけど……魔族って光るのかな? いやそんな訳ないか、どちらかと言えば天使とかの方がイメージに合っているし。
「勿論!! いくらでも見ていいよ!」
「うわっ!?」
「よし! 今日はママのいいとこいっぱい見せてあげるからね!」
「じゃん! ここがママのお仕事をするお部屋だよ!」
飛行を数分間味わった後、窓から城へと入る。見た感じ執務室だな、少し散らかってはいるけど思っていたよりは綺麗だ。
「今椅子を持ってこさせるから、ちょっと待っててね」
「分かりました」
「もしもし──」
机に置いてある内線で誰かに持ってくる様頼んでいるみたいだ。電話を終えたお母様はまたもや俺を抱えてそのまま膝の上に座らされた。
「お母様、 これは?」
「椅子が来るまで、これで我慢してね?」
「……うん」
来るまで立ってるつもりだったんだけどな、どうせすぐに持って来るだろうし。それに──
「お母様、前は見えてますか?」
「見えてるよ? フレイルの頭が」
身長差的に俺が座っているとお母様の視界が塞がれてしまうのだ。お母様的には幸せなのかもしれないけど。そんな状態でしばらく待っているとドアがノックされる音がした。もう持ってきたのか、結構早いんだな。
「リバートだ、入っていいか?」
「いいよー」
許可と共にリバートが入ってくる。流石にまだ椅子を持ってくるには早かったか。
「ギャハハ!! 前見えてねぇじゃねぇか!!」
彼はお母様の姿を見て大爆笑していた。そんなリバートの態度は当然お母様を怒らせる。
「ちょっと! 急に笑うなんてありえないでしょ!」
「いやっ、これは笑うだろっ、ギャハハハハ!」
「もー!!」
何度か同じ様な会話を続けてようやくリバートは笑いを止めた。見えないけど、お母様が不機嫌なのはなんとなく分かる。
「悪い悪い、無理して座らせてるのが面白くてな。つい笑っちまった」
「次笑ったら本当に怒るからね!!」
「分かってるって」
リバートはあんまり気にしていない様だ。お母様が怒ると言っても全く怖くなさそうだし分からなくはない。魔法とかで脅してくるのなら話は別だけど。
「それで、なんで今日は殿下が?」
「そうそう! ねぇ聞いてリバート! 今日フレイルが『ママのお仕事見てみたい』、って言ってくれたんだよ!」
少し驚いた様な顔でこちらを見てきた。まぁ元々見ていた様なもんだけど……
「マジか、まだ子供だぞ?」
「そうなの! フレイルは将来凄い魔王になれるね!」
「それはまだ分かんねぇだろ」
「ううん、絶対なる。今ママがそう決めたからね」
そう言ってくれるのは嬉しい、少しだけど自信が付く。魔王になりたい、少なからず俺にはその気持ちがあった。まだよく分かってないから声を大にして言えないけどね。
「あんまり甘やかし過ぎるのは良くねぇぞ」
「甘やかしてないもんっ。ねっ、フレイル?」
「はぁっ、しゃあねぇ。ならやる事やんねぇとな」
リバートは頭を掻きながら、姿勢を正した。急に物々しくなったな……
「魔王様から暗黒衆のトップを任されてるリバート・ノートンだ。よろしくな、殿下」
「えっ?」
「ほら、フレイルの番だよ」
状況を理解し終える前に膝の上から降ろされた。挨拶するだけでいいんだよね?
「フレイル・レヴィアタンです……よろしくね?」
「おうっ!」
手をガシッと掴まれされるがままに握手をした。結構力強いな、痛くはないけど。
「ふぅ、それにしてもよ」
「ん?」
「流石にまだ早計じゃねぇか?」
早計? 俺が関係しているんだろうけど、何かあったっけ? 別に変な話はしてなかったと思うけど。
「そう? 私はずっとフレイルだと思ってたけど」
「いや、まだ2人いるだろ。そっちに聞かなくてもいいのかよ」
「えぇ? ないない。フェイル達がフレイルに勝てるとでも思ってたの?」
「それは、まぁそうだけどよ」
「でしょ?」
俺がフェイル達に負けない事、か。多分後継の話だろう。ただそれだと「勝てる」という言葉に違和感がある。俺は長男だし基本的には継ぐ事になる確率が大きい。仮に一番優秀な者に継がせるとしても、この時点で決め付けるのは無理がある。
魔族である事を考慮した場合強さ勝負というものもあるにはある。ただこれも結論は一緒。まだ小さいのに誰が一番強いかなんて、分かる訳がない。
「にしても、大きくなり過ぎじゃねぇか?」
「生まれた頃はリバートくらいだったのにね」
大きく、一旦整理しよう。まず俺は何か凄い物を持っているらしくてそれは下2人に負けないくらいの物。生まれた時はリバートくらいだったけど、今はもっと大きくなっているって所か。成程、分かったぞ。これは──
「何の話をしてるんですか?」
聞かないと分からないやつだ。こんな情報で分かる方がむしろ怖い。
「フレイルの魔力の話、もしかして気付いてなかった?」
俺には魔力が相当あるらしい。それに魔力があるという事は魔法を使える素質がある訳だ……あれ? ならなんであの時は魔法を使えなかったんだろう? ただ魔力があるだけじゃ魔法にならないのかな?やっぱり使うには呪文とかが必要なのかな。
「はい、まったく」
「凄いんだよ、もう私と同じくらいなんだから!」
……もう私と同じくらい? 魔王のお母様と? いや待て、まだお母様の魔力が比較的低い場合がある。
「ちなみに、お母様の魔力って──」
「ママの? ママの魔力はね、今まで会った事ある人の中だと2番目に大きいよ」
うわぁ、血筋チートだぁ。転生と言えばチート、この2つはそれくらい切っても切れない関係だ。あまりこういう事を言いたくないけどチートっぽい物はない方が良かった。
俺は魔王になりたい、それは自分の力だけで挑戦したいという気持ち込みでだ。悩ましいところではあるんだけどね。この体は親から貰ったものだ。得手不得手、性格や身の振り方など、俺の身に起こる事の下地となっている。何があってもそれが俺自身の力である事に変わりはない。
ただ1つ言える事、それはこの考え方は非常に贅沢であるという事だ。もし仮にスラム街みたいな場所で生まれていたとしたらこんな考えはまず出てこないだろう。
「だから角は大切にね。成長しなくなっちゃうから」
「分かりました」
一応、これも角を折ったら極刑になる理由の一つでもあるのだろう。ここ2週間で分かった事、それは魔族は弱肉強食当たり前の実力主義。そして子供にはとことん甘い、この2つの事が分かった。
1つ目は分かりやすい、目の前に実例がいるし。2つ目は若干分かりにくかったが、要は「弱い者いじめは楽しくない」からだそうだ。強くなってから戦いたいという戦闘狂みたいな思考だがそれを若干理解出来ている俺も魔族の考えに染まっているのかもしれない。
「失礼します、椅子を持ってまいりました」
「やっと来た、どーぞ」
ドアが開き見覚えのあるメイドが入って来た。えっと、確かワラって名前だったかな。そのまま中に入ってくるが不思議な事にドアを閉めなかった。その疑問はすぐに晴れることになる。後ろに人がいたからだ。
「やぁ魔王様、ボクも入っていいかな?」
「サーちゃん! 珍しいね。ここまで来るなんて」
許可を取ったその人はまるで浮いているかのようにお母様の前まで来た。全身を黄色い布で覆っているので顔の下半分しか見えず少しだけ不気味だ。女性の声だったから男ではないと思うけど。
「フレイル様、お掛けください」
「うん、ありがとう」
「では、私はこれで失礼します」
椅子を持ってきてくれた彼女はすぐにこの場を去ってしまう。それにしても、この黄色い人はどういう人なんだろう? お母様の反応的に、結構仲は良さそうだけど。
「いやぁこれに魔王様の所へお使いに行かせたんだけどね、帰ってこないんだよ」
「はぁ!? まだそんな時間経ってねぇだろ!」
「うるさい」
「っ、おいお前今殺しただろ!」
「きゃー助けて―、まおーさまー」
今、なんかさらっと殺されてなかった? この前の2、3回殺してからみたいな話ってこれの事なのかな?その女性はお母様に抱き着いていたが俺の事が視界に入ったのかこちらに歩み寄ってきた。
「もしかしなくても、殿下だよね?」
「はい、フレイル・レヴィアタンです」
その瞬間、場の空気が冷え切ってしまう。あれっ、何か駄目な所でもあったのかな? お母様も「しまった」みたいな顔をしているし、どうしよう……
「一応、ボクの方から挨拶するのが、礼儀なんだよね」
「えっ? ……その、ごめんなさい」
そう言われてみれば、俺から挨拶するのはおかしいな。今更とやかく言ってもどうにもならないし次からは気をつけよう。
「謝らないで、先にボクの方から名乗っておけば良かっただけの事だよ」
「はい……」
「じゃあ、改めて。ボクはサネクト、暗黒衆の頭脳を担当してる。よろしくね」
「うん、よろしく」
サネクトさんか、頭脳って言っていたし頭がいいんだろう。じゃなきゃ、まずそもそもそんな職に就けない筈だ。
「妹が迷惑をかけてはいないかな?」
「妹?」
「教えられてない感じかな、これは」
サネクトさんはフードを下ろして顔を見せてくれた。見覚えのある顔だけどこんな黄色い人いたっけ? でもこの顔、どこかで──あっ!?
「メイリア!」
「そうそう、どうかな?」
「全然迷惑なんて、むしろ助かってます」
「そっか、良かったよ」
確認が取れたらまたフードを被り直してしまった。あんまり顔を見られたくないのかな?
「それで、何か問題でもあったの?」
「そうそう、この前の内戦で起きた事に関する報告書、出来たから提出するね。ほら、早く出して」
「いてっ、分かった、分かったって! ったく……」
リバートが腹を突かれながらも出したその書類を見るが、まだ字は完璧に読めないので断片的にしか読めなかった。「さんどランド」、「おーシャんぱーく」、「負傷しゃ237名」等々、パッと読み取れたのはそれくらいだ。
「あの人達も懲りないよね」
「だな、魔王様に勝てねぇのに独立とかよ、馬鹿じゃねぇのか」
「独立させてあげないの?」
気付かない内にそう口ずさんでいた。俺的には独立させてあげた方が良いと無意識に思ってたのかも。実際は独立すると国の利益とか減るから良くはない筈。
「うん、弱いからね」
「弱、えっ?」
「あんなんじゃ、他の魔王にただで領地を上げるようだしなぁ」
「強ければ良いんだけどね、ママに傷一つ付けられないようじゃそもそも話にならないんだよ」
なんとも魔族らしい答えが返ってきた。それと同時に納得も出来てしまう。独立させるのとただで上げるのとじゃ話が違うし。
「じゃ、ボク達はこれで。早く」
「へいへい、分かってますよ」
2人は魔法でどこかに行ってしまった。それにしても、随分と仲が良かったな。
「仲良かったね」
「一応、夫婦だからね」
一応? なんでわざわざそんな言葉を付けたんだろう? 別に夫婦ならそんな言葉付けなくてもいいのに。
「一応って?」
「あー、まぁ、結婚した経緯がね……」
歯切れが悪いな、言い方的にあまり聞かれたくはなさそうだ。実際顔を背けているし。いやまぁ気になるから聞くんだけどさ。
「じゃあどうやって結婚したの?」
「それはまだフレイルには早いかな」
「えー」
多分子供には聞かせられないような事があったのだろう。一体何があったのだろうか。
「じゃあ、お母様は? お父様とどうやって結婚したの?」
「ふふっ、ヒ・ミ・ツ」
「もー、何にも教えてくれないじゃん」
色々とお母様の事を聞き出そうとしたが何も聞けない。そうして新しい仕事の書類が来るまで話し続けたのだった。
7話 鎧のヒミツ?
フレイル「お父様ってなんで鎧を脱がないの?」
カムイ「……中身が無い」
フ「えっ!?」
フ(鎧だけで動いている、ってことかな?)
次の日
フ(あれっ、お父様の部屋の扉が開いてる)
フ(今着替えてたら中身が見れ──)
カ「ふぅ」
フ(マトリョーシカ……)
※鎧の試着をしていただけです




