↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/32

3話 悪魔族、字が読めない

次回投稿予定時間:16時30分ごろ

「フレイル様、本をお持ちいたしました」


台車で持ってきてくれた絵本、その1番上に乗っていたものを俺に見せてくれた。そこに書かれていた文字は見た事もない。


5歳って言ってたし読み書きはまだ習っていなかったのかな? こうなると普通の本は読めないだろうしただの読み聞かせになる。仕方がないか、文字を読めないとどうしようもないし先に文字を覚えるとしよう。


「お食事の後にお読みいたしますね」


彼女は本を元に戻しワゴンをベットの横によせる。蓋が開くとそこにはおかゆみたいな食べ物があった。メイリアさんはスプーンで少しすくい上げ、俺の口の前まで持ってきてくれる。俺は口を開けそれを口の中に入れた。


「美味しい……」


口に入れた瞬間、おかゆの味付けとは思えない旨みを感じた。なんかおかゆっぽくはないな、普通の食べ物みたいだ。


「よかったです、きっと料理長も喜んでくれますよ」


料理長か、味の最終確認とか現場の指揮とかで実際に作るのは稀かなって思ってた。他国の王様が来ている時に初めて作る、みたいなイメージだ。1つ懸念点があるとすればこのおかゆっぽい物がどんな食材で出来ているか。正直どんな食材が使われているのかまったく見当がつかない。




「ご馳走様でした……料理長ってどんな人なんですか?」


「あぁ……なんと言うか、料理長は個性的な方ですね」


個性的か。そう言われるくらいの何かが料理長にはあるんだろう。どんなのだろう? 料理の材料は自分で取りにいくとかかな?


「それとフレイル様、私にそういった口調で話すは必要ありませんよ」


「えっ?」


口調、って今おかしかったかな? 二重敬語とか言われてもすぐに対応出来ないんだけど。


「フレイル様は魔王様のご子息、私に敬語は不要です」


思っていた方向と違う指摘だった。その立場に合った言葉使いを意識しろって忠告でいいんだよね、これは。


「分かりました」


「分かった、ですよ?」


「……うん」


これって結構難しいな、無意識で出ちゃうかもしれない。王族っぽく偉そうに振舞えば出来るかもしれないけどそれはしたくないし。あくまで偉いのは魔王である母親だからね。


「その料理長って人は忙しいの?」


「忙しいと思いますよ。魔王様の食事から兵士のものまで、1人で作っていますから」


自分で作らないと納得がいかないタイプか。それ絶対人手が足りないだろ。大きな鍋で作ったとしても1人じゃ大変だろうし、多分この人は誰に出すかによって何を出すかを決めている。わざわざ1人で作っているんだ、それくらいはすると思う。


「ミーをコールしたのはユーかなっ!メイリア!」


ドアの方から大分個性的な声が聞こえた。そういう方向での個性的だったのね、正直聞き取りずらいからやめてほしい。男は一対の大きなの鳥の翼を持っており体は人間、いわゆる獣人的な人。服装はまさにシェフといった格好の男だ。それに加えて母親と父親から感じた不思議な雰囲気を感じた。


「マイネームはホルスウェル、ナイストゥーミートゥー!」


「……こちら、料理長のホルスウェルさんです」


自己紹介、って事でいいんだよねこれは。それならこっちも──名字が分からない。どうする? 名前だけだと失礼だよね。ないかもしれないけどある可能性だって捨てきれない。


「ミートできてホーナーですっ!、ヒズハイネス!」


「"お会いできて光栄です、殿下"だそうです」


……とりあえず料理の感想を言っておこう、別に不自然な返答でもないだろうし。名乗らなかった事には目を瞑っていてほしい。自分のフルネームが分からない以上下手に名乗らない方が良いと思った。


「美味しかったよ、ありがとう」


「オゥ、ベリーベリーハッピーです! ソー、ミーはメニーフルーツをブリングです!」


どこからともなく様々な種類の果物が出てきた。リンゴにバナナ、みかんにメロンかな? 若干見た目が違うから合っているかどうかは分からない。


「クッキングタイムっ!」


その掛け声と共に目の前にあった果物が一瞬で鮮やかに盛り付けられた。こんな喋り方をしていても実力しっかりとある様だ。


「ミーのワークがメニーリメインなので、シーユーアゲイン!」


果物をメイリアさんに渡し、料理長は部屋から出ていってしまった。最後まで何を言ってるか分からない人だったな。ある程度聞いていたら聞き取れる様になるのだろうか?


「ねぇメイリア」


今の内に知りたい事が彼を見てからいくつか出てきた。知らないままご飯に戻るのはもやもやしてしまう。


「はい、なんでしょうか」


「料理長って幹部の人より強いの?」


あの不思議な雰囲気が強さじゃなさそうなのは分かっている。でも万が一料理長が強かったら幹部の人がその域に到達していないだけって事だ。


「いえ全然。むしろ私の方が強いですよ」


「そうなんだ」


予想は外れた、だけどあの人と戦った事あるんだ。 意外、メイドさんはそういう事はしない人だと思っていたし。でもそうなると強さが関わっているっていう仮説はこれで無くなったな。


「それとさ、俺のフルネームって分かる?」


さっきみたいな場面に出くわした時困らない様に知っておきたい。知っていればあの人に自己紹介出来た訳だし。


「フレイル・メテオ・レヴィアタンですね。普段はフレイル・レヴィアタンと名乗っておりましたよ」


王族なだけあって名前は長めだ。覚えられない程の長さではないけど。おそらくレヴィアタンってのが国名かな、もしくはまったく関係ないか。


どっちかは分からないけどそれより気になるのがミドルネームの部分。メテオ、隕石って意味だ。何の意味もなく付けていると思うのは無理だし意味はあるのだろう。


「他に聞きたい事はございますか?」


「料理長ってなんの種族なの?」


あれは明らかに俺とは異なる種族だった。推測ではあるけど獣人っぽい。それ以外にあの翼が付いている理由は思い付かない。


「あの方は鳥魔族(ちょうまぞく)ですね」


「ちょうまぞく?」


全然獣人じゃなかった。悪魔に仕えているタイプかなと思ってたけど全然違ったな。どんな字かも分からないし。いや、もしかしたらそう呼ばれているだけであって本質は獣人と変わらないかもしれない。


「その、ベルフェも知りません、よね?」


「べるふぇ?」


何の事なのか俺にはさっぱり分からない。流れ的に”ちょうまぞく”と関わってはいそうだ。無難な所だと国名だろうか。


「……ちなみに我々の種族はお分かりでしょうか?」


「悪魔でしょ?」


彼女は絶句している様な顔をした。そんな顔をされても知らない物は知らない。一応記憶喪失という事になっているんだからそんな顔をしないでほしい。


「……もしよろしければ、色々とお教えしましょうか?」


「いいの?」


それは俺が元々知りたかった情報だし嬉しい、今どこにいるのかさえ知らないしな。


「勿論です」


「じゃあお願い」


「かしこまりました、今から食器の方を片付けて参りますので少々お待ちください」


彼女は食器を乗せたワゴンと絵本を大量に積んである台車を動かして部屋を出ていく。ワゴンは浮いたまま運んでいったけど、台車の方は普通に押して持っていった。


2つとも魔法でやればいいのにと思わなくもないけど多分大変なんだろう。実際の所は分からないから、推測にしかならないけど。


……今なら魔法を試せるかな? 最悪使えなくてもいい、使えそうだと分かれば充分だ。やり方なんて知らないけど、まぁいけるだろ。




「……」


出来なかった。そもそもどうやってやるのかが分からない時点で諦めるべきだったと思う。羽と尻尾は出来たからもしかしたら、と思ったんだけどなぁ。


「フレイル様?」


「うわっ!?」


彼女はいつの間にか帰ってきていた。全然気付かなかった、魔力を使おうとするのに集中してたせいかな。それにホワイトボードっぽい物もあるし、どれだけ集中していたんだ?


「準備の方が整いましたので、始めてもよろしいでしょうか」


「いいよ」


メイリアはホワイトボードに指で字を書いていく。ペンで書いていないのに黒い文字が浮かび上がってくる。これが魔法、って訳でもないか。


魔法を使う為の力、分かりやすく言えば魔力を使っているのかな? 文字を指が止まりこちらに振り返る。そこには……そういえば読めなかったな。


「ねぇ」


「どうしましたかフレイル様」


「なんて書いてあるの?」


「……あっ!?」


忘れていたのか彼女は手を口に当てた。単純に読めない事を忘れていたのだろう、もし読めていたのなら俺も読めている筈だ。


「申し訳ございません、失念しておりました」


「気にしないで、それで何を教えてくれるの」


「魔族について簡単にお話ししようかと」


「簡単に?」


「はい、最初から色々とお話しても混乱するだけかと思いまして」


それもそうか。沢山教えられても一回で覚えられる気がしない。それなら軽く教えてもらった方が覚えやすいし彼女もやりやすいだろう。


「魔族というのは悪魔の力を受け継いだ種族、らしいです」


「らしいって、よく分かってないの?」


「その通りです。悪魔の力はありそうという事しか分かっておりません」


なんとも曖昧な答えだけどこれ以上分からないのなら仕方がない。予想とは違ったけど悪魔というのはあながち間違ってなかった。


「種族の種類は多岐に渡りますが、総人口は種族数の多さに反してそこまでいません」


「どんな種族がいるの?」


「数が多いので有名な種族だけでよろしいでしょうか?」


「うん、いいよ」


そう言うって事は相当数がいるのだろう。それならまずは有名どころだけでも覚えておこう。他は後で覚えていけばいい。


「現在有名な魔族は魔王と同じ7種族、私達悪魔族(あくまぞく)もこの中に入っています」


「そういう種族だったんだ」


「はい、純粋な悪魔に最も近いのが悪魔族の特徴です。竜魔(りゅうま)なんかよりよっぽど高貴なんですから」


「りゅうま?」


今説明している魔族の種類の1つだろう。悪魔族と引き合いに出すくらいの種族だとは思う。それで”りゅう”か、多分竜だな、そうなると”ちょう”は鳥の事か。見た目鳥っぽかったし。


「竜魔族は1番高貴なのは竜の力を持つ自分達だって信じて疑わないんです、どう考えても純血である我々悪魔族の方が高貴に決まってます。それなのに──」


恨みが溜まってたのか悪口を止める気配がない。これは間違いなく実体験も混ざっているな。そんなに嫌な奴らなのかなその竜魔族っていうのは。


「いくら竜の力が──申し訳ございません、つい熱が入ってしまいまして……」


「竜魔族の特徴は竜の力が使える、って事でいいの?」


「はい、実は悪魔族を除いた全魔族の一文字目にはその魔族の特徴を捉えた字が入っております。鳥魔族も鳥に似た姿でしたよね」


命名ルールは結構覚えやすそう。知らない種族に会っても感で当てられそうだ。


「残りは北の大地を支配する狼魔族(ろうまぞく)、隣国の人魔族(じんまぞく)、|南にある森を共同支配している拳魔族《けんまぞく》と角魔族(かくまぞく)、そして鳥魔族。以上7種族が魔族の代表的な種族です」


ホワイトボードに各種族の特徴らしき絵が書かれていく。見た感じ残りは狼、人、拳、角、鳥が特徴的な魔族って事だな……人って特徴あるのか? その疑問を投げかける前に鐘の音が響き渡る。


「もう戻らないといけませんので、本日はここまでという事でよろしいでしょうか?」


「うん、いいよ」


「では、失礼いたします」


……よし、行ったか? おそらくだが魔力の使い方が分かった気がする。メイリアがホワイトボードに書いていたのを注視していて良かった。これならいける──




「……」


全然無理だった。

3話 次の議題


ベルライヤ「えぇっと、次は……うん、これはこのまま──」


太った貴族「魔王様、それは見逃せませんな」


べ「うっ……」


太「先月決めたではありませんか、明日から始めると」


べ「……うん」


リバート(いつも思うんだが──)


べ「……じゃあ、明日からハンバーグのソースはデミグラスね」


貴族達「「「うおぉぉぉぉ!!」」」


リ(なんでこんな事を会議で決めてるんだ?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。