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13話 悪魔族、番の友と話す

次回投稿予定時刻:13:30ごろ

「おはようございます、フレイル様」


「おはよう、ティナ」


あの日から一晩経ち決めた通りに執務室で会った。彼女の部屋は城の来賓用の部屋だ。流石に直接部屋に行ける訳がないので待ち合わせた。


「昨日はごめんなさい」


「仕方がないよ、あれは」


あの事について一応の説明は昨日の時点で受けていた。簡単に言えば気付いたら言っていたらしい。要は昨日変な事を言った俺と同じという事だ。お互い様、という事で決着は付けた。今更変えるのも嫌という事で引き続きこの呼び方に。俺の呼び方は決心がつくまで保留という形で着地した。


「早速で悪いんだけど部屋を変えよう。この後お母様が来るからさ、仕事の邪魔にならない様に」


「分かりました」


一応お母様に部屋の使用許可は取ってあるけど、お母様の前で彼女と話すのは気が引ける。後単純に見られたくないってのもある。そのためにお母様の仕事の時間より前に会ってる訳だし。


そのまま2人で別の部屋に移る為に部屋を出た。ドアを閉めた所で部屋からお母様の声が聞こえたけど今関わると引き留められるので無視だ。階段をいくつか下りメイリアに準備してもらった部屋に着く。


何も気にすることなくドアを開けた。部屋は清潔な状態であり、特に問題はなさそうだ。中にはワラが待機していた。メイリアの代わりだろう。あの人も忙しいからな、メイド長みたいだし。


「しばらく2人で話したいんだけど、いいかな?」


「かしこまりました」


この前と同じで音もなく消え去ってしまった。どうやって消えているかは正直分からない。代わり身の術みたいに視線をそらしているわけでもないし。ただの身体能力と言われたら納得するしかないけど。


「消えましたね」


「うん、どうやって消えてると思う?」


「透明化からの壁抜け、だと思います」


魔法か、考えになかったな。あり得そうではある、お母様の魔法よりかは出来そうだし。


「座ろうか」


「えぇ」


ティナをソファーに座らせた後俺は向かい側の席に行こうとした。しかしながらそれは彼女自身に阻まれてしまう。


「その、座れないんだけど」


「座れると思いますよ?」


いや、放してくれないとそもそもとして向かい側に……あ。そこまで考えてようやく彼女の行動が理解出来た。隣に座って欲しいのだろう、彼女は奥に詰めているし。婚約者ではあるし、これくらいならいいか。されるがままに、その隣に座った。


「もう少しくっついてもいいですか?」


「いいけど……」


あまりにも距離が近過ぎる気がする、会って2日目にしては。嫌ではない、むしろ嬉しい方が勝つんだけど疑問を抱くには十分な行為だ。


「やっぱり、近くない?」


「我慢してください」


どことなく、彼女から吹っ切れている感じがした。何故かなんて考えは無用だ。むしろ考えなくても原因は分かる。


「昨日はよく眠れた?」


「そうですね、少々寝付きにくかったくらいで、よく眠れたと思います」


良かった、普段と違った場所だし緊張して眠れなかったなんて事がなくて。昨日のあれがある関係ですんなり寝ているなんてのははなから予想していない。


「それと、少し見て欲しいものがあるのですが、よろしいでしょうか?」


「うん」


彼女はそのまま自身のスマホを取り出して1枚の写真を見せてくれる。その写真には彼女と2人の女の子が映っていた。赤と青、ぱっと見の印象はそんな感じだ。


「この子達は?」


「私の友達です。その、それで……私の話し方には何も言わないでもらえると──」


話が終わる前に、スマホから着信音が鳴り始める。そこにはテレビ電話と書かれてあった。


「2人から紹介するように言われてて、いいですか?」


「どうだろう、公式には発表してないから──」


「ごめんなさい、繋げますっ!」


外部に漏らしていいかとか考えている間に繋がれてしまった。断れなかったんだろうな、紹介する事を。せめて何かあった時は俺が責任を取ろう、うん。


「おっ、やっとぅわやばっ!」


「めっちゃイケメンじゃんっ!」


映って早々、堂々と顔に言及されたのは初めてだ。なんか少しだけ複雑な気分だ、嫌じゃないんだけどね。画面に映し出された2人は右側に赤い服の子、左側が青い服の子だった。


「ははは……」


「2人共、フレイルさんが困ってるでしょ?」


「あーごめんごめん、アテナの言い方が嘘っぽかったからつい」


「これで信じた?」


「うん、ごめんね疑って」


どんな紹介の仕方をすれば嘘だと言われるのだろうか。胡散臭い説明だったとかかな、だとしても容姿だけでそんな風に話せるのか?


「あっ、私達の事教えてくれた?」


「今しようとしてたとこ、こっちからかけるって言ったでしょ?」


「いつまで経っても来ないから、ねぇ」


「ねぇ」


「ねぇ、じゃない!」


俺と話す時より少し大きな声で話している。3人の仲は良さそう、良さそうなのは置いといて、何をすればいいのか全く分からない。話を聞いておけばいいのかな? いつか話は振られるだろうし。後、ティナの喋り方が普段と違って軽い。何も言わないでほしいと言ったのはこの為だろう。友達だから遠慮なく喋っている、若干ではあるけど羨ましく思う。


「で、どこまでしたの?」


「友達としか」


「じゃあ自己紹介からだねっ!」


赤い子の方が俺に自己紹介してくれるみたいだ。それと同時に青い子の方も一拍整える。


「私は」

「私は」


「……流れ的に私でしょ」


「いやいや、今日勝ったの私」


「累計なら私じゃん!」


「ダウト、今日で同点だから」


「いーや、179勝で私の方が1多いもん!」


「今日で私179なんだけど」


軽い喧嘩みたいなのが目の前で起こっていた。ティナは少し呆れた表情で二人を見ている。見慣れた光景、というやつなのかな?


「178だよっ!」


「179だから」


「ほんと、勝負になると嘘つくよね」


「あんたの記憶力がないだけ」


「ふーん、やる? 今ここで」


「いいよ、2連敗させてあげる」


「それじゃあ──」


「右の赤い子がカレラで、左の青い子がクギノです」


「ちょっと!」

「アテナっ!?」


今から戦いが始まりそうな所で争いの種であった名前を彼女が教えてくれた。ただ物凄く2人が不満そうなのが画面越しからでも分かる。


「今勝負する流れだったんだけど」


「そうだよ! 普段なら見てくれるのに!」


「これ以上私に恥をかかせるつもりなら切るけど」


「……ごめん」


「ごめんなさーい」


彼女の一言で2人を言いくるめてしまった。俺がいなかったこれを止めるつもりはなかったのかもしれない。


「いやーでも本当に王子様って感じだね」


「そうかな?」


「そうそう、ただアテナの語彙力が足りないってのは分かった」


「それなー」


「……」


心当たりがある様だ、特に反論する様子はなかった。そういえばまだ何も話が進んでいない気がする。


「それで、何か用かな?」


「えっ、用って?」


「いやあったじゃん、顔見ようって」


「それは終わってるよ?」


「……ホントだ、もう終わってるわ」


じゃあもう終わってもいいのかな?なるべく彼女との時間を確保したいから終わってくれると助かるんだけど。


「そうだアテナ」


「ん?」


「私達の連絡先、教えておいて」


「連絡、先? ……!?」


ティナは少し戸惑った様子を見せた。俺に教えてなかったからかな、てっきり帰り際に教えてくれるのかと思っていたけど。この様子だと普通に忘れていたパターンなんだと思う。


「あ、あの、フレイル様、お電話を貸していただけますでしょうか?」


「うん、はいどうぞ」


彼女は少し焦った手つきでスマホに入力している。少しだけ時間がかかったが、無事入力が出来た様だ。


「これで、入っていると思います」


「ありがとう」


「その、忘れていただけですから」


チラッと見た感じ彼女の連絡先だけ入れた様だ。忘れているのか、それとも後でいれるのか、どっちでもいいんだけどね。


「じゃあまた明日かけるね!」


「明日もですか!?」


「当然だよ! 帰ってくるまでやるんだから。ねー」


「それは流石に迷惑でしょ」


「えぇー! そこは乗ってよ!」


そこで通話が途切れたのか2人の声が聞こえなくなった。彼女の肩は力なく下がり、元気がなくなった様に見える。


「はぁ……」


「お疲れ様」


彼女は今の姿勢を正す為にちゃんと座りなおした。そしてスマホをしまい、口を開いく。


「ごめんなさい、2人の我儘に付き合わせてしまって」


「全然、むしろ楽しかったよ」


「そう言っていただけると──」


もう一度スマホから着信音が鳴り始めた。かけ直すには──


「また……はぁ」


画面を見た彼女は画面を操作して電源を落としてしまった。


「出ないの?」


「えぇ、今お兄様の電話に出る義理はありませんから」



お兄さん、お見合いの席で家族について深く聞くのは違うかなと思って聞いていなかったけど興味がある。なにせ俺と同じ魔王候補、しかも先輩でもあるんだ。自分に活かせるものがありそうなら取り入れたい。本当なら本人に聞きたい所だけどそれは贅沢だしね。彼女の評価が若干低そうなのが懸念点だけど。


「お兄さんってどういう人なの?」


「お兄様ですか?」


「うん、少し参考に──」


俺の言葉を遮るかのように優しく肩に手を置かれた。しかも彼女の顔は難しい顔をしている。何か聞かせられない事でもあるのか?


「いいですか、フレイル様」


「はい」


「お兄様に参考となる部分なんてありません」


「いや、流石に──」


それはないと言いたかったが彼女は首を横に振ったので言わなかった。そんなに低い評価なのかお兄さんって。魔王候補、しかも年上だから実力も伴っている筈。ならどうして実の妹の評価がこんなに低いんだろう?


「何か、魔王として足りない所が?」


「いえ、お兄様が魔王となれば他の魔王に劣りはしないでしょう。仮に魔王として至らない点があった場合、そもそもお母様がそれを許しませんから」


あの魔王、あんまり人となりとかは知らないけど子供だからって何かするようには見えなかった。お母様はそこの信用はないけど。才能面が問題無いなら多少なりとも話は聞きたいんだけど。


「じゃあ、何が駄目なの」


「変態だからです」


……それだけ? それだけでここまで評価が低いの? ただそれ以上この話題について触れるつもりはなくなった。彼女にその行為について事細かく喋らせるのは気が引ける。


「ですから、フレイル様は今のまま魔王になってくださいね」


「分かったよ」


彼女の目は本気だった、それ程までに真似して欲しくないのだ。俺の回答に安心したのだろう、彼女の手は肩から離れた。


「外に出ませんか」


「外?」


「はい、気晴らしに庭の方を見られればなと思いまして。よろしいでしょうか?」


それ自体は問題ない、城と屋敷内ならどこに行ってもいいと言われている。でも折角ならもっと違う所がいいと俺は思った。


「ワラ」


「御用でしょうか」


先程消えた時と同様に一瞬で現れてくれる。普通のメイドならちゃんと呼び出しの魔道具で呼ぶ。しかし彼女は特別な訓練を受けているそうで待機中なら呼べば来るらしい。この前メイリアに聞いたらそう言っていた。


「外って出てもいい?」


「それはよろしいかと」


「外ってあれね、貴族街とかの事」


「そちらですか……」


最初から彼女がこうなる事は予想はしていた。というか即決も困る、ティナに説明する時間が欲しい。


「フレイル様?」


「折角ならこの国のいろんな場所を見て欲しいんだ。どうかな?」


「行けるのであれば、ぜひ。私も行きたいと思っていましたから」


結構好印象だ、これなら説得出来るかもしれない。このタイミングで彼女に許可を取ったのは説得力を増す為。俺が駄々をこねても基本メイリアに却下されるがティナなら話は変わる。


たまにしか来れない彼女のお願いを一蹴するのはメイリアでも悩む筈だ。しかも相手はメイリアではないときた、説得出来る確率は非常に高い。


「メイド長に報告すれば、問題ありません」


「そう、じゃあお願い」


「かしこまりました」


そう言い残してまたもや消えてしまう。その後許可が取れたので俺達は魔車がある場所へと足を運ぶのだった。

13話 早朝のベルライヤ


ベルライヤ「ねぇ貴女」


メイド「はい」


ベ「フレイルってもう起きてる? 起きてるなら顔を見たいんだけど」


メ「……もしかして、ご存じありませんか?」


ベ「何が?」


メ「フレイル様なら今朝方、執務室の方へと向かわれましたけど」


ベ「なっ!? それもっと早く言ってよ!」


ベ「フレイル! ……いない、昨日の様子だと絶対ここだと思ったんだけどなぁ……」


メイリア「フレイル様ならアスティナ様と別の部屋に参りましたよ」


ベ「ひゃっ!?」


メ「おはようございます、魔王様。お仕事の時間です」

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