綺麗なお姉……さん?
「只今帰りました」
大きな門をくぐり、玄関からそう声をかければ奥からパタパタと足音をたてながら咲湖お母さんが「お帰りなさい」と笑顔で迎えてくれる。
「どうだった? 学校。楽しめたかしら」
私から荷物を受け取りながらキラキラとした瞳で訊ねてくるお母さんに、大きく頷き返して今日出会った人達の話を始める。
「はい、とても。お友達も出来たんですよ。すっごく面倒見のいい女の子で。あ! あと食堂にとっても美味しいケーキを出してくれる人がいて……」
三つも食べちゃいました、あ、それとそれと……。興奮気味に喋る私の話をお母さんはうんうんと優しい微笑みを見せて聞いてくれる。
「よかったわぁ。神楽ちゃんが人見知りしちゃったらどうしようかと心配してたの」
ホッと胸を撫で下ろす仕草を見せるお母さん。確かに私も最初は緊張したけど円や崎原くんや奥村くんが次々と話しかけてくれるからそんな気分も吹っ飛んじゃって、とっても楽しかった。
「これなら明日からも大丈夫ね。楽しんでらっしゃい」
「はい! ありがとうございます咲お母さん」
「さぁって、じゃあ晩御飯にしましょうか。秋都も今日は遅くなるらしいし先に私達だけで食べてしまいましょう」
「はい」
じゃあ着替えて来ます、と部屋へ向かおうとした時にお母さんが「あら?」と声をあげる。
「そう言えば海都は? 一緒に帰ってくるって秋都が言っていたのだけど」
「あぁ、あの人なら……___」
『ええ? ここから一人で帰れって……なんで?』
『だから俺は用事があるっつってんだろ。このバスに乗ったら家の真ん前にとまるから一人でも行けるだろ』
『そりゃ、真ん前で停まるなら……でももう夕飯の時間になるのに寄り道してる時間は』
『あー先に食ってろよそんなの』
『そんなのって……せっかくお母さんが作って待ってくれてるのにそんな言い方』
『バーカ、あの人が料理なんてする訳ないだろ。むしろ台所に立ってたら連れ出せってのが暗黙の了解なんだようちは』
どう言う意味? と首をかしげて見せれば、海都は私の頭をペシンと軽く叩きながら「テメェで考えろ」とだけ言って背中を向け反対方向へと歩み始める。それを「ちょっと待って」と腕を掴んで止めると彼はげんなりとした顔で振り返る。
「なんだよ」
「ちゃんと帰って来てね?」
「あぁ?」
「この際夜遊びの事は何も言わないけど。いつものことだってお母さんも言っていたし。でもちゃんと家には帰ってきてね。約束」
はい、と小指を差し出せばそれは何だという顔で見返される。
「指切り。知らない? この時代じゃもうしないの?」
「いや、知ってるが……なんで指切り?」
「約束事をする時はこれが普通でしょ? 私も弟やお父さんと約束事をする時いつもこうやって指切りしてたの。ほら、小指出して?」




