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と言うわけで放課後。
「と、友野江さん!」
授業を終えて帰り支度をしているとなにやら教室の外がざわざわと騒がしい。放課後だし、皆が帰り支度をしてるからこんな物だろうと荷物をまとめていると、慌てた様子の女子生徒が私を呼び「あれあれ」と指を指す。
なぁに? とその指先を辿って視線を巡らすと、不機嫌全快で教室の出入り口に立つ海都を発見。
「海都?」
なんで2年生の階にいるのかしら? と首を傾げていると、声をかけてきた子が半ば興奮気味に「友野江さん帝と知り合いなの!?」と聞いてくる。
「神楽を呼べって。神楽って友野江さんの事だよね!?」
「えっ、帝が来てるの!?」
その子の言葉に他の子達もざわざわと騒ぎ始める。やれこっち向いてだのやれカッコイイだの様々だ。一人は顔を赤らめ黄色い悲鳴まで。
「知り合いっていうか……」
お家でお世話になってるの、と言えば「同棲!?」と返される。いや、違うから。そんなんじゃないのよと言っても「羨ましい!」と言って今度は話を聞いてくれない。
「えっと、あの、だからね?」
「神楽! くっちゃべってないでさっさと来い。お前らも一々騒ぐなうっとうしい!」
なんと弁明しようかと迷っていると、先程より更に怒り顔になった海都がギロリと周りに集まった女の子達を睨み付けながら怒鳴り声をあげる。
ピタリと止むざわめき。だけどそれはほんの一瞬で、次は囁くような物へと変わっただけ。
「神楽だって。誰よそれ」
「あ、ほら今朝王子が案内してた転校生じゃない? 2組に来た子」
「あー。あの子ね」
と、今度は私へと視線が向けられる。
流石にいたたまれなくなって、荷物をもってコソコソと教室を出て学校の入口へと早足で向かった。それを見ていた海都が隣に並ぶ様に歩く。
「ったく、だから俺は嫌だっつったんだお前の迎えなんて」
「ご、ごめんなさい、私もまさかあそこまでの騒ぎになるなんて……」
さっき秋都さんと海都と三人で食堂にいた時の話。
『あ、そうだ海都。今日僕生徒会で遅くなるから神楽ちゃん連れて帰ってあげてね』
『は? なんで俺が』
『だって神楽ちゃん今日初めて学校に来たんだよ。帰り道わからないだろうし迷子になったらどうするんだい』
まだこの町の地理だってわからないんだから、と言う秋都さんに海都はあからさまに嫌そうに目を細める。
『俺はこの後用事があるんだ。親父かおふくろに迎えに来てもらえよ』
『どうせクラスメートの女の子と遊びに行くだけなんでしょ? 母さんは茶道教室の日だし、父さんは今日遅くなるって今朝言ってたじゃないか』
『俺は今日貴文のとこに呼ばれてんだよ。大体なんで俺がそんなお守りみたいな事を』
それでも嫌だと突っぱねようとする海都に秋都さんはニッコリと笑いかける。
『海都』
『な、なんだよ』
『あまりワガママ言うと、おにいちゃん怒っちゃうぞ?』
確かに今秋都さんは微笑んでる。ええ、とっても眩しい笑顔なのに何故かしら、その微笑みを見ていると背筋をゾゾゾと悪寒が駆け抜けていく。
それは海都も同じ様で、さっきまでの強気顔がサーッと一瞬で青ざめてしまった。
『お願い、ね。海都?』
『わ、わかった』
という事があったんだけど……。
「でも驚いちゃった。貴方が来ただけであんな騒ぎになるなんて。秋都さんならわかるけど」
「おいコラ待て、そりゃどう言うこった」
「だって貴方口悪いんだもん」
「あれはあいつらが一々騒ぐからだろーが」
「それでもあんな風に女の子達に怒鳴るだなんて」
まあ確かに騒がしかったけど、ね。
「秋都さんだったらきっとあんな言い方しなかったはずだもの」
「あのなぁ、俺より秋都の方が万倍も質悪ぃんだぞ。あの笑顔の下でどんなえげつない事考えてんだか想像しただけでも怖気が立つぜ」
両手で肩を抱きながらぶるりと震える海都に、私はそんな事ないわよと反論を返す。
「秋都さんは優しいもの、親切だし。他の女の子達の反応を見てたらわかるわ」
「わかる? わかる、ねぇ」
何か含みのある口調でそう言う海都に「何よ?」と返すけれど、彼はそれ以上何も言わずさっさと歩いて行ってしまう。
その背中を見つめながら、私は小さく首をかしげた。
「私変なこと言ったかしら? ……まぁ、いっか━━━」




