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「ね、近衛さん」
「円でいいわよ。あたしも神楽って呼ぶし」
「あ、う、うん。あの、円」
「なぁに?」
「秋都さんが人気なのはわかるんだけど、海都が人気なのがちょっと……」
想像つかないんだけど、と言えば今度は奥村くんが「まぁ」と会話に入ってくる。
「あの性格だもんな〜。女はあれがカッコイイの! なんて言うけど、普通男には嫌煙されるタイプだよな海都も秋都も」
秋都さんは優しいのは本当だし人気者なのはわかるの。けど海都は冷たいって言うか」
すぐブスって言うしバカって言うし私が作った朝御飯マズイって文句ばっかりいうし。とてもあの人が秋都さんと同じくらい人気者だなんて……まあ確かに派手な女の子達には人気みたいだけど。
「帝の場合はあれよね、口数が少ない上に顔がいいとこ。あ、あと腕っ節が強いとこ? が人気な要因じゃない」
「あと金持ちだし」
「なんたって女形歌舞伎の重鎮神宮家の次期御当主様だもんねぇ。そりゃ玉の輿狙いの女子達は黙ってないでしょ〜」
「え!?」
「え?」
円の不意の一言に声を挙げた私に崎原くんと奥村くんの視線が向く。どうしたの? と首を傾げた円に
「あの、海都が神宮の次期当主って……私てっきり秋都さんがそうなのかと」
だって昔から家督を次ぐのは長男の勤めって言うのがお決まりだし。
「あー噂じゃそうらしいわよ。ね、蘭?」
「何で俺に振るんだよ」
「だってそーゆう話はあんたんとこの事務所の鬼畜眼鏡マネが詳しいでしょうよ」
「鬼畜眼鏡マネ? 美月の事か?」
「それ以外に誰がいるってのよ
」
「おいおいそれ本人には絶対言うなよ」
後で怖いんだから、なんていう奥村くんに円は意味深な笑みを返す。
鬼畜眼鏡マネ? と首を傾げれば円が「ああ」と頭を振る。
「こいつこう見えてアイドルやってんのよ。そんでその鬼畜眼鏡マネージャーってのがまた性格極悪の奴でね」
「あいどる? まねぇじゃあ? それって何?」
お仕事の種類? と問い返せばケタケタ笑っていた円が「え?」と瞳を瞬かせる。
「何って、アイドルはアイドルじゃない。ほら歌ったり踊ったり、こいつは俳優だけど」
「ああ、こっちでは役者さんをあいどるって言うのね」
そっかぁ、とポンッと手を叩けば暫し間をあけたあと円が吹き出し大きな笑い声をあげた。円だけじゃなく何故か崎原くんも奥村くんも同じように笑い始める。
え? え? なんで笑うの?
意味のわからない私はぽかんと口を開けたまま3人を見やる。
「なに、まさか友野江それ地で言ってる?」
「まっさかぁ。いくら何でもそりゃねーだろ」
お腹を抱えて笑い合う3人になおも私は首を傾げるばかり。
私なんか変な事言った? と聞こうとした時。
「やかましいわ!!」
スパパパアアンッ
と小気味よい音が教室内に響き渡る。その後すぐに仁王立ちして私達をみる先生と目が合い「ひっ」と声にならない悲鳴を漏らす。
「崎原、近衛に奥村。転入生とさっそく仲良くなってくれて先生は嬉しいぞ。うん、ほんとにな。けど今が授業中だって事完全に忘れてないか、ん?」
まるめた教科書をボンポンと掌に打ち付けながら、殴られた勢いで机に突っ伏した三人を上から見下ろす。
「いったぁい! ちょっと女の子の頭叩くなんて酷いんじゃないですか?」
頭をさすりながら円が抗議の声を上げれば、先生はにんまりと笑い
「じゃあ授業の途中に私語をするのは?」
「それは、まぁ、あたしが悪かったですけどぉ……」
それでも教科書で叩くとか、と膨れっ面を作る円。
「とにかく友野江と仲を深みたいなら昼休みにしなさい。友野江もわかったか?」
「は、はい!」
ごめんなさい、と返事を返せば先生は「よしよーし、いい子いい子」と頭を撫でてくれた。




