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声と共にトントンッと横から肩を叩かれ振り向けば、今度は頬杖をついた女の子と目があう。艶々とした黒髪を短く切った少し男の子みたいな色黒の、可愛らしいと言うよりはカッコイイという言葉が合いそうなそんな女の子だった。
「初めましてあたし近衛円って言うの。えんって書いてまどかよ、よろしくね」
「近衛、円さん? こちらこそ初めまして友野江神楽っていいます」
「神楽、いい名前ね。昭和っていうか和風っていうか? あまりない名前よね」
「そう、かな?」
そうかなぁ? まぁ有り触れた名前じゃないけど珍しい名前じゃないと思う。
ふむ? と視線を上に向けて考えていると、もう一度トントンと肩をつつかれる。
「ねえねえ、さっき王子と帝と一緒にいたでしょ。知り合いなの?」
「おうじ? みかど?」
「やーね、神宮兄弟のこと。あの双子の事よ」
「ああ……うん、学校の中案内してもらってたの。でも王子と帝って?」
問えば私と近衛さんの間を縫うようにして崎原くんが「王子と帝って言うのはぁ」と言いながら再登場。
「我が高校きっての天才美形兄弟って言われてる神宮秋都先輩と神宮海都(僕的どうでもいい)の二人の事でね」
「は、はあ……」
あれ、今なんかちょっと変な言葉が一部……。
「成績優秀で品行方正、先生方の信頼も厚くて誰にでも分け隔てなく優しい上に生徒会長までもやっちゃう素敵な素敵な秋都先輩を王子って皆呼んでるんだよ」
手を組んで目をキラキラ輝かせながら語り始めた崎原くんに、奥村くんが「また始まった」と小さく溜息をつく。
「それでその弟の神宮海都は学校の成績も品行も秋都先輩には遠く及ばないんだけど、文武両道を掲げる我が校で年一回行われる武術会……空手とか柔道の試合があるんだけど、唯一中等部から一度も負けた事がなくてね。だからどっちかと言うと秋都先輩とは反対で男子に人気があって帝って呼ばれてるんだけどまぁ僕的には秋都先輩以外どうでもいいって言うか」
「はいはいもういいから黙りなさい豊」
「むぐっ……」
まだ語り足りない、と身をのりだしながら続けようとした崎原くんの口を塞ぐ近衛さん。邪魔をされた崎原くんは何するんだと言いたげな目でじとり、と近衛さんを見やった。
「さ、崎原くんは秋都さんが大好きなんだね」
「そりゃもう400字詰め原稿用紙10枚20枚じゃたりないくらいおっきなおっきな愛がっ……」
「うるさいっつの! ごめんねぇこいつドが付くほどの王子信者でさ、話しが出たらいつもこうなのよ」
「あはは……」
秋都さんて人気者なのね。わからないこともないけど。でも海都が帝……ねぇ?




