35
「また始まった。海都の和菓子語り」
秋都さんがおぼんに3種類くらいのケーキをのせて戻って来た。
「はい、どうぞ」
目の前に並ぶ美味しそうなケーキに私は目を輝かせ喜びの奇声を上げた。
「何これ!? 美味しそぉ~」
チョコレートのや、苺がたっぷりのったのや、薄切りのリンゴがのったのや……
あぁ、幸せすぎで死にそう……
「何がいいか分からなかったから、うちの学食のベスト3を買ってきたよ。あ、でもこれは他の生徒には内緒だよ。本当は1人一個って決まってるんだ」
「そ、そうなんですか?」
い、いいのかな私だけこんな贅沢して……。
「第3位。チョコレートケーキ」
茶色いのを指差す。次に苺がたっぷりのったやつ。
「2位がショートケーキ。これは甘さ控え目でね、結構男子に人気があるんだ。僕も大好きだよ」
そうなんだ~。
「じゃあこれは?」
私は残りの一皿を目の前に持ち上げ、じ~っと見る。
まあるい形で、網目模様の…なんか可愛い。
「それはアップルパイ。砂糖で煮たリンゴをパイ生地……まぁパンみたいなものかな? にはさんで焼いたもの。美味しいよ、食べてごらん」
促され、一口含んでみた。
「うっ……」
「神楽ちゃん!?」
「がっつくから咽にでも詰まったんじゃね?」
「ううぅ……」
ポロポロと頬を流れる涙。感無量通り越して、泣き出す私。
「俺……ケーキ喰って泣いた奴、初めて見た」
「何も泣かなくたっていいのに……」
「だってぇ~」
袖口で涙を拭う。でもケーキを口に運ぶ手は、止まる事はなかった。
お茶とお昼ご飯を終え、午後。秋都さんや海都と別れ、ついに私は教室に向かいます!
「今日は体験入学生を紹介します。入って」
教室の中から担任の声がして、私はドキドキする胸を押さえながらドアを開き、中へ一歩一歩足を踏み入れた。
ざわっ……
足を踏み入れるなり、ざわめきだす教室内。
「友野江神楽さんだ。今日一日、仲良くする様に。自己紹介して下さい」
「あ、はい。えと……友野江神楽と言います。今日一日だけですが、よろしくお願いします」
ニコリと笑い、自己紹介をする。すると、一段とざわめきが高くなった。
な、何? なんで騒ぐの!?
「じゃあ席は……」
先生が周りを見渡していると、後ろの方に座っていた男子生徒が、勢いよく挙手した。
「はいはいはいはい!! 俺んとこ空いてるぜ南ちゃん!」
立上がり、私に向かって手招きをしてくる一人の男子生徒。
「奥村お前なぁ、教師を愛称で呼ぶなって言ってんでしょぉが!」
「はいはい、ごめんなさいよぉ」
怒る先生に、男子生徒はおちゃらけた様に謝罪した。
その男子生徒は髪を紫色に染め上げた切れ長の目で少し怖い印象の人。だけど顔いっぱいに子供じみた笑顔を浮かべていた。
「ったく。じゃあ友野江さん、君はあちらの席に」
「はい」
先生に促され、机の間をぬって席へと向かう。その間通る先々両方から声を掛けられよろしくと微笑み返した。
席に着くなり、先程挙手をした男子生徒に質問責めを受ける。
「ねね、家どこ? どこから来たの? ケー番訊いていい? メルアドは?」
「えっ? あっ、あのっ……」




