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「美味しい……ケーキがこんなに美味しい物だったなんて」
これが感無量って言うのかしら。え、違う?
「神楽ちゃん、本当にケーキ食べた事ないんだ?」
「え、あ、はい。私の家、中の下だから、大福が食べられればいいくらいで……」
大福はお母さんの手作りで……っていうか、私のお母さんは料理が下手で、唯一作れるのが【ぼたもち】と大福だったのよね。
お陰で私は10の歳には既に一通りの家事は出来てたのよ。
「そうなんだ。じゃあいっぱい食べていいからね。そりゃもう気分が悪くなるくらい」
「いや……それはちょっと」
「もう2~3カット買ってきてあげるね」
「えっ、でもっ」
「ちょっと待っててね」
席を立ちウィンクをすると、秋都さんは食事受け渡し場所に向かって行った。
2~3カットってそりゃ嬉しいけど……。
太っちゃう……かも。
ま、とりあえず目の前にあるのを食べよう。
ニコリ顔に戻ると、また一口ケーキを口に含んだ。
ふと、私を見る視線に気付いた。
「何よ海都?」
「いや、別に?」
「そぉ?」
もう一口ケーキを口に……と思ったけど、海都の視線が気になって寸前のところで停めた。
「何なのよ!」
「何でもねーっつってんだろが」
「じゃあじーっと見ないでよ」
「俺がどこ見ようがテメェには関係ねぇだろが」
………。
ダメだ、口で海都に勝つ事なんて出来ないわ。
待てよ?
「海都、もしかしてケーキ食べたいの?」
「……は?」
私の質問に、表情を崩す海都。
「そうならそうと言えばいいのに。しょうがないなぁ」
「は? お、おい……」
私は立ち上がり、テーブルから身を乗り出して、フォークに乗った一口のケーキを海都の目の前に差し出す。
「はい、あ~ん」
小さな子供に御飯を与えるみたいに、ニッコリ笑って言った。
「あ~んってば!」
「……バカかお前」
「なんですってぇ!?」
「俺、甘い物大嫌い。反吐が出る」
腕を組んで、ふぃっと外方を向いた。
「え? だって、この間大福食べてたじゃない?」
「洋菓子が嫌いなんだ。バカみたいに甘ったるくて、芸術味も欠ける」
「はい?」
「日本人なら和菓子だ。わらびもち、大福、饅頭、おはぎにヨウカン。京菓子に比べれば洋菓子なんざ…」
淡々と語る海都に、私は口を挟めないでいた。




