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たぶん今の私の顔は、他人には早々見せられないかもしれない。
目は大きく開かれ、瞳には星がパチパチと飛び回り、口許にはよだれが。
今、私はテラス(食堂。今の時代はテラスって言うんだって)であるモノを目の前にしてる。胸元で手を組み、じーっと、そのあるモノを見つめている。
秋都さんと海都が、苦虫を噛み締めた様な顔をして、私を見ていた。
あるモノ。それは異国より現れいで、その甘い芳香で群衆を惑わし、一口口に含めば、黄泉へ舞い上がる様な幸せな気持ちになれると言う…その名も!!
【ケーキ】!!!!
あぁ…ケーキ……。近所のお金持ちの家の娘が、よくお庭で見せびらかす様に食べてた。私はそれを隠れ見ながら、匂いをお腹いっぱい嗅いで嗅いで嗅いでそれだけで一日中幸せだった。
それが今、私の目の前に……ッ。
「か、神楽ちゃん、どうぞ、食べて?」
今にも感動で泣き出しそうな私を見兼ねたのか、秋都さんがフォークを差し出して来た。
「えっ!?」
「そんなにじーっと見てなくても、それ、神楽ちゃんのだから。食べていいんだよ?」
「で、でもこんな高価な物……」
ケーキ一つで、大福30個の値段。なのよ、私の時代では。
「大丈夫。ここは学生食堂だから、通学生には安く提供してくれるんだよ」
「そうなんですか?」
「うん。だからほら、遠慮しないでお食べ」
遠慮気に見上げる私に、優しく微笑んでフォークを握らせる。
「早くそのしまりのない顔、どうにかしろよ。つーかヤベーだろーがその顔……」
私の斜め横で海都が悪態を付いた。でも、今の私にはそんな物は右から左。震える手で優しくケーキにフォークをさし、そぉ~っと口に運びぱくり。
リンゴ~ン リンゴ~ン
(私の幸せ度を表す鐘の音)
その一口で私の理性のタガは外れ、息継ぎもせず、ケーキを口に運んだ。
「おいひっ…んむぅっ……んんっ!しやわせぇ~」
「「うわぁ……」」
「兄貴、1カットじゃ足りないんじゃないか? こいつ」
「あはは……みたいだね」
「1ホール頼むか?」
「う~ん…」




