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「…………」
「あ、海都、神楽ちゃん目を覚ましたよ!」
「ぁあ?」
目を覚ますと、上から同じ顔が私を見下ろしていた。
「秋都…さん……海…都…?」
なんで……。
「私……」
「神楽ちゃん倒れたんだよ。覚えてる?」
「……いいえ」
「そう」
ふわりと優しく微笑む秋都さん。海都は無表情のまま。
頭が痛い。暑い……。汗で浴衣が肌に張り付いて気持ち悪い……。
「汗かいてるね。着替えたいでしょう? 母さんに頼んで来るからちょっと待っててね」
「兄貴、俺が行く」
「じゃあ頼むよ」
部屋には私と秋都さんが残った。
「気分はどう?」
「身体が重いです……」
「そっか。熱が高いからね。仕方ないよ」
前髪をかき上げ、秋都さんの掌が私の額に触れる。冷たくて気持ち良い……。
「お父さん……どうかしたの?」
「え?」
「寝言で言ってたよ。お父さん、行かないでって」
「…………」
今見た夢を思い出し、目頭が涙に濡れた。
「かっ……、神楽ちゃん!?」
「ふ…ぅ…ひっく……」
「……神楽ちゃん。訊いても…いい?」
「え……?」
「そりゃ僕達は会ったばかりだし、そんな奴には早々話せないだろうけど。神楽ちゃんの苦しんでる元……とって上げたいんだ。だから……」
話すかどうか迷った。話しても信じてもらえるかどうか……。
でも、この胸のつっかえがとれるなら……。
「……私は…たぶんこの世の人じゃないと思います」
「どう言う意味?」
「私もよく理解らないんです。ここに来る前、私は広島に……ここも広島なんですけど、私がいた広島は空襲をうけて、殆どがガレキの山だったんです。お米なんて絶対食べられないし、芋も大根もあんまり食べる事が出来なくて……」
でもここは違う。食べ物に困る事は絶対にないし、見た事ないものも沢山あって……。
「私の弟とお父さん、臨時兵として戦地に行ったんです。弟の神季はまだ十四歳でした。お父さん生まれつきかたっぽの耳と目が使えなくて……。お母さんもあの空襲の中はぐれて……心配で、心配で……。お父さんに会いたい…お母さんに会いたい…神季に……広島に帰りたいよぉ……っ」




