3-1 問題解決にはまずどうする?
その夜、アレッシェラはグラフォーレ家の屋敷に用意された一室で、考えこむように若草色のソファに座っていた。
あれから館に通され、応接室でお茶を用意されても、レナールは顔を出さなかった。
滞在用の客間に通された今もそのことが気になっているのか、目の前では、ルイサが困ったように水差しを抱えている。
「明日から、いかがいたしましょうか。レナール様には、突然断られましたし」
頬に手をあてながら話すルイサの声に、アレッシェラは目を上げた。
「レナール様の反応は聞いていたとおりで、予想の範囲内だ。問題はない」
「予言した闇魔法の使い手を捜さなければなりませんが……。今日お会いしたレナール様の頑なさだと、側に近寄るのも難しそうですよ」
「そうだろうな」
フッと微笑む。
「だが、それであっさりと帰っては、このソ・レイジェラの大聖女が出てきた意味がないではないか」
「それは、そうですが……」
「それに――今まで会った相手にはない感覚が気になるのだ」
「え?」
アレッシェラが口にしたことに、水をグラスに注ごうとしていたルイサが横で戸惑った顔をしている。それに、話していなかったことに気がついて苦笑をした。目を細めて、いつも優しい側近を見つめる。
「レナール様に会うと――なぜか懐かしいような気がするんだ」
「それは一体――」
「わからない。ただ、泣きたいような、全身で彼を抱きしめたいような、そんな奇妙な感覚に襲われるんだ」
アレッシェラが今までの婚約者候補には語ったことのない感覚だ。それに、ルイサも驚いたのだろう。
パチパチとした瞬きをしているのを見ながら、とはいえ、とアレッシェラは自分の言葉に苦笑いをした。
(実際に抱きしめたら、逃げられるのは間違いがないだろうな)
おそらく正しい予想に、自分ながら苦笑して腕を組む。そして、ひとつ息をついた。
「闇魔法の件はもちろんとして、私としてはこの感覚の正体も見極めたいのだが……。さてどうしたものかな」
「それならば、やはり、もう少しレナール様とご一緒に過ごされてみるしかないと思いますわ」
側でルイサがためらったように頬に手をあてながら、少し顔を傾けている。
「ただ、今の御状態ではそれが難しいかと……」
「確かに――」
ふむと、アレッシェラも顎に手をあてて頷く。
聞いていたとおり、縁談については、とても頑固な考えのようだ。
「今の様子だと、おそらく断るだろうな」
赤紫色の眼差しを少し斜めに動かしながら考えた。
「だとしたら――」
ふと天井近くで視線を止めて、にやりと笑う。
「その性格を逆手に取るか」
「どうやってですか?」
不思議そうなルイサを前に、アレッシェラは前を向くと不敵に笑ってみせた。




