5-1 誤解だろうか?
そのあとは、「大きな物音がした」「天から光が降ってきた」と、屋敷の中は大騒ぎになった。
しかし、屋敷の者が駆けつけたレナールの部屋には、なにも破損がない。それどころか、中にいたのがその部屋の主と婚約者の女性だったので、「あらあら」と、駆けつけた者たちは、頬を赤らめながら「お邪魔しました」と、そそくさと去っていく。
即座に閉まったパタンという扉の音に、どう説明したらいいのかと考える間もなかったレナールは焦った。
「待ってください! 今なにか誤解をされませんでしたか!?」
手を伸ばして真っ赤になっているレナールの横で、アレッシェラは泰然としたものだ。
「まあ、かまわないだろう。明日、話せばすむし」
「そんな悠長な! 絶対に誤解をしていますよ。俺はともかく君が――」
「誤解もなにも、夜這いをかけたのは事実だからな。それ以上が、あったかなかったかというだけで」
そう言うと、さらにショックを受けたようにレナールは、赤くなっている。
誤解を解きに行くべきかと迷っているようだったが、アレッシェラの言葉で、迂闊に話すと、さらに誤解をされかねないと思ったらしい。
焦っている瞳に、クスッと笑いかける。
「大丈夫、明日私から話すから」
慌てている様子に、愛しさを感じて堪らない。
(ひょっとしたら……今までレナール様の命が食べ尽くされずに耐えられていたのは、私と彼との縁がもう繋がっていたからかもしれないな)
運命の相手――その名前の細い糸で。ほとんど覚えてさえいない頼りないものだが、それがもし、今までレナールの命が食べられるのを遅らせることができ、結果として守れていたのなら、嬉しいと思う。
自分ならば、多少命を食われたとしても、神降ろしの術で得た神力で回復できる。
だから、今はレナールが、こうして生きていてくれることがなによりも嬉しい。
心の中でそう思いながら、アレッシェラはレナールに笑いかけた。




