↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/22

4-1 恋愛には行動力!

 

 戻った館で、アレッシェラは考え込んでいた。


 あのあと、レナールは兄のモーリスと一緒に、様々な後始末を終えてから夕方近くに館へ帰ってきたようだった。馬車から降りる姿が遠くの二階から見えたものの、その背中は自分の住まいになっている別館へとすぐに歩いていき、夕食にも顔を見せなかった。


 窓の外は、完全に陽が落ち、窓から見える館の窓の半分には、柔らかな橙色の光が灯っている。


 結局あれからレナールとは顔を合わせる機会がなく、アレッシェラが博物館であったことを話したルイサも、館で待っている間に作っていたお菓子とお茶を今テーブルに出しながら、困惑した顔をしている。


「ダリオ殿下が、きちんと謝罪に来られたのは男として見直しました。でも、そういうことならば、これからはいかがいたしましょう」


 闇魔法の使い手の正体については、結局はっきりとはしなかった。だからこそ、これからの行動について悩んでいるのがわかる。


 今日の収穫だった毒を塗られた石を思い出しながら、アレッシェラは俯いたまま呟いた。


「そうだな……。犯人ならば、昔から、レナール様の相当近くにいるはずだが、今の状況では、まだ完全に断定はできないな」


「このまま終わらせるのは、レナール様にとってよくないことですわ。でも、レナール様はアレッシェラ様には、帰るようにとおっしゃいますし……」


 グラフォーレ伯の依頼は解決したいが、レナールの頑なさは鉄壁だ。しかも、今日の誤解で、ますますひどくなった。


 どう解決したらいいのかと、いつも優しげな側近が頬に手をあてながら戸惑っている。その横で、アレッシェラは椅子に座ったままフッと笑った。


 そして、顔を上げる。


「だが、おそらく彼が、女神フロールの言っていた私の運命の相手だ」


「え!?」


 その言葉に、ルイサが驚いた表情になる。


「どうして、そう思われるのですか!?」


 急いで尋ねる姿に、微笑んで答えた。


「ここに来た時、私たちを助けるために、レナール様が魔法を使っただろう? 言葉どおり、術自体は、極めて初級の簡単なものだったが、あの時感じた魔力に一瞬違和感を覚えたのだ」


「と申しますと……」


「今までに、地上では感じたことがないものだった。とはいえ一瞬だったから、その時はまだよくわからなかったんだ」


 人差し指をくるりと動かしながら説明をする。それにルイサは、顔を傾げて、また困惑した表情だ。


「だが、今日私を捜して探知魔法を使ったあとの彼の頬に触ったら、皮膚にレナール様のもつ魔力の残滓があった。それでわかったのだ。彼は、本当はとんでもない力の持ち主だ」


「え!?」


「恐ろしく純粋な力――その力を手に入れれば、神皇にも魔皇にもなれるだろう。聖なるほうへ傾けば、神と等しい力を宿すし、魔に傾けば、すべての魔族の頂点に君臨できるのに違いない」


「そんな恐ろしいほどの力が、レナール様に……?」


「おそらく、本来は、神界に属する魂なのだろう。それがなにかの理由で、本来の聖なる力を一度限りなく純粋な澄み切った力に戻したから、生まれるまでの調整に百六十年もかかったのだ。そう考えれば、女神フロールの話と一致する」


「どうして、そんなことを!?」


 ルイサがびっくりしているが、さすがに、これはアレッシェラも両手を挙げるしかない。


「さあ? 神々の気まぐれは今に始まったことではないからな。とはいえ、よりによってそんな強大な力の持ち主を、今この世界に誕生させるとは……」


 百八十年もつきあっているが、神々の考えることはいまだによくわからないと、思わず肩を竦めてしまう。


(考えられる可能性としては、夢で見た相手の話していた言葉だが……正直、あれだけではなにもわからない)


 なにがあったのか。どうして、相手があそこまで悔いていたのか。すべてがわからないことだらけだ。


「ですが、そんな力を持っていたら、すぐに魔族に狙われます! それに、力の使い方を誤れば、本人にだって、どんなことが起こるか!?」


「ああ、だから気がついた者に狙われたのだろう」


「あっ!」


 自分の言葉で、ルイサはレナールの命を狙っている者の正体に勘づいたらしい。


「では、レナール様のお命を狙っているのは、魔族だと……?」


「断言はできんがな。さすがに神々も、そんな力を人界に生まれさせる危険性には気がついていたようだ。本来は、かなり厳重に封じられていたようだったが、おそらく成長の過程で、少しだけ一部の封が崩れたんだろう。そこからごくわずかに洩れてくる魔力で、今回の犯人に気づかれたのだと思う」


「そんな……どうしたら……」


 戸惑いながらルイサが、頬に手をあてている。


「それほどのお力をお持ちならば、一刻も早くレナール様に安全なところへお移りいただくか、犯人を捕まえるしかありませんわ。ですが、今の状態ではどちらも難しいと申しますか……」


 ルイサの言葉に、ふむと考えこむ。


「確かにな」


 今のレナールの様子では、どちらも難しい。


 だが――と、アレッシェラは瞳に力をこめた。


「手がかりはある」


「え、こんな短時間にですか!?」


「それを確かめるためにも、もっとレナール様の側にいなければならないのだが……。今では、まだお知り合い程度だ。さらに男女が親しくなりたい場合には、通常どうするのだろうか」


「それは、やはり、直接会って話すことだと思いますわ。でも、 昼間会ったばかりで、あんなことを言われたあとでは、おそらく避けられると思いますし……」


 頬に手をあてたままルイサは、困ったように俯いている。それに、なるほど、とアレッシェラは頷いた。


「つまり、避けられないように行けばいいということだ。よし、今から行こう!」


「え、ちょっと! 今は、おそらく就寝時間で……」


「婚約者が夜に忍んできた。結婚したくない男ならば、騒ぎ立てて墓穴を掘らないのに決まっている!」


 好きな人を手に入れたシモンヌの行動力を見習わなければ――と立ち上がる。すると、側でルイサは、目をパチパチとさせた。


「お、お待ちください、アレッシェラ様。それは、世間一般的には夜這いというのでは……!」


「今回、これぐらいの行動力は必要だろう!」


 慌てるルイサを尻目に、そのままアレッシェラは、先ほどの夕食の時に話題に出たレナールの部屋に通じる方向へと歩きだした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。