第9話「本命と戯れた時間」
買い物から帰ったら、三人で昼食にする。
今度は青夏が手料理を振る舞ってくれるらしい。俺は優子と新しくダウンロードしたスマホゲームで遊んで待っていた。
「前からやってみたかっんだよねぇ。優星と出来るなんて思わなかったよ」
「そうか。今度からやり尽くしてみるわ」
「よろしく!」
優子と仲良くゲームして完成を待っていた。すると、昼食が出来上がったことを青夏が報告して来る。
「出来たよぉ! スマホをやめてくださーい!」
「えぇ〜! 今が良いとこなんだよなぁ〜」
「外せない時に来ないで欲しいわ」
「むぅ〜!」
青夏は膨れっ面で激おこが窺える。なので、早く切り上げて昼食を頂いた。
今回は豚キムチ丼だと聞いている。前に並べられた目立つ赤色は、まさしくキムチを決定づけていた。美味そうな匂いが漂って来て食欲がそそられてしまう。
「「いただきまーす!」」
「ゆっくり噛んで食べなさいよ?」
そんな掛け声をセットでつけて来た。
それより早くも一口を頬張ってみる。口内で広がる辛味と肉などの組み合わせが絶品だった。
俺もかなりキムチは食べる習慣があり、今日は青夏が手作りしてくれて普段と違った美味しさを知る。
「「ご馳走様でした!」」
「美味しかったでしょ? 普段から料理するんだよねぇ〜」
「やっぱり、普通は料理するだろ」
「同感!」
優子までも口を揃えて共感を示して来た。人と共感することは気持ちが晴れるようですっきりさせてくれる。
取り敢えず二人は昼食が済んで帰宅すると言い出した。二人と久し振りの買い物で楽しめて凄く満足である。また、今度も一緒に買い物したかった。
「じゃあな!」
「「バイバーイ!」」
最後まで二人を見届けてから家に上がろうとする。そしたら、スマホに通知が来ていた。
早速、中身を確認すると、柚美からメッセージが届いていたみたいだ。とにかく早めに確認しておく。
『これからお邪魔しても良いですか? 返事を待ってます』
柚美から会いたいとメッセージして来た。これは恋人として受けるべき内容である。取り敢えず今はフリーだから会っても問題なかった。
『別に構わないよ。だから、今から来ても大丈夫だ。気をつけて来なさい』
すぐ内容を記して返信しておいた。これで柚美は来てくれるはずだ。
最近は柚美と会えていなかった。だから、少し寂しく思っていたのも事実。それを今日は解消したかった。存分に柚美を相手する予定が出来てしまう。
しばらくしてインターホンが鳴った。返信から十五分は経過している。それに丁度良い時間帯だった。
「いらっしゃい。よく来たじゃん」
「こんにちは。久し振りだから凄く張り切ってます。今日は何して過ごしますか?」
「それは上がってから話し合おう」
柚美を中に案内した。リビングに差し掛かってから柚美は一言だけ要件を告げて来る。
「実は明日が休日で暇なんです。今日とか泊まって行けませんか?」
「え、急だな⁉︎ うーん。正直、柚美は高校生だから早くないか?」
「もう立派な大人ですけど! どこに不満があるんですか?」
確かに見た目は大人びて来た。けど、もう少し成長は待ちたい。恋人と一夜を過ごすなら高校生活が二年生に突入してから考えるはずだった。それを今から急に実行するのは抵抗がある。
深く思い悩んだ。やはり、宿泊は早い気がしてならなかった。
「うん。やっぱり、宿泊するのは早い。もう一年は見積もっておきたいんだよ。それが守れないと関係は破綻するかも!」
「うぅ〜。意地悪ですぅ」
そうやって拗ねた顔を可愛かった。怒った顔もあどけなさが生じて可愛いを引き立たせている。
(これは気が狂いそうだわ。マジで襲いたくなっちまう。けど、悪い大人にはなりたくない)
そんな善良な心が性欲を拒否して安全性を重視した。これで柚美が奈落に落ちることはないだろう。恋人関係は安全面が大事だった。
とにかく短い話し合いを交え、最終的に結論が出る。
「それじゃあスマホゲームで良いか?」
「うん。優星くんが好きなゲームならやってみたいかも。早くタイトルを教えてください!」
「分かったよ」
早くタイトルが知りたいと柚美は急かして来る。焦って手元が狂いそうだった。だけど、しっかりスマホを持ちながら確かめる。
「ええと、タイトルは『星々の救世主』だ。普通にネット検索からダウンロードすれば良いんだよ」
「へぇ。コマンドバトル系かぁ。これは面白そうじゃないですか!」
柚美が急いでダウンロードしてみた。これは結構な容量を有する。だから、インストールだけでも時間はかかってしまう。
取り敢えず待ち時間は会話して潰した。より会話を盛り上げるため、色々と頭で工夫してみる。
「嘘! 彩穂先輩がダイエット始めたの⁉︎」
「あぁ。あいつが体重を落としたいとか、大袈裟すぎて笑いものだろ」
「そんな笑っちゃダメですよぉ! 彩穂先輩だって真面目に悩んでるんですから!」
咄嗟に柚美は彩穂を庇った。それは柚美なりの気遣いだと思う。
柚美としては彩穂に親近感があると聞かされていた。理由は小学生の時から身近にいたからだと言う。確かに理由としては十分すぎるだろう。
「きっと彩穂先輩は優星くんが好きなんですよ。何となく分かる気がします」
「そうなのか? 特に分からなくもないけど、大して詮索しようとも思わないんだよな」
「それは互いにルールを守って来たからですね。同居する上で決めたルールは絶対だったはずです。だから、彩穂先輩も言い出せなかったと思います」
柚美の何気ない発言は説得力を持っていた。彩穂は距離を置いた生活を強いられている。だからこそ、恋愛に発展させるような行動が見られなかったんだ。
原因が分かると悩んでしまう。彩穂まで自分を好きだとか言い出したら、俺は思い悩んで気づけば死んでいたかも知れなかった。
(さすがに考えてもしょうがないな。いずれ悩むなら悩むで良いか)
適当に問題を片付けておく。そしたら、長い時間を有してインストールが終わった。
「出来ましたよ! 早くプレイしてみましょう!」
「俺はデータがある。そっちは柚美が進めるんだぞ?」
「分かってますよ。けど、一緒が良いです!」
「それも言えてるな」
最初はプレイするためのチュートリアルを確認してからアバターを選択した。アバターはガチャを回して最初に出たキャラでプレイしていく。
柚美は一発目で当たったキャラを自由にカスタマイズしてみた。
キャラは容姿とか服装を好きに変えて遊べてしまう。だから、柚美は本編を遊ぶ前から歓喜する声が上がっていた。
「そこに宝箱がある。取ってから先に進め」
「うわっ! これ凄いレアだよね!」
「そうだな。今は使える装備品だろう。これは進めていくために必須だと思う」
この瞬間、柚美は必要な装備品を獲得したはずだ。これは進めてみれば使い道が分かって来ること間違いなかった。
少しずつストーリー進行が俺に近づいて来ている。これなら明日から同じところから始められるかも知らなかった。
ゲームを始めてから四時間は経過した頃。もう暗くなってしまって大変だ。だから、すぐ帰ることを提案してみた。
「そうですかぁ……。けど、今日は凄い楽しかったです! また、遊びに来ても良いですか?」
「当たり前だろ。俺たちはカップルなんだから遠慮はいらないよ。今度も来て良いぞ」
「やった! それじゃあさよなら!」
最後は柚美が見えなくなるまで見届けてからうちに戻った。
笑顔で満ち足りていた柚美を見てから安心感で溢れている。
(今度は出かける準備はしておこう。そうすれば急に誘われても対応が効くはずだ)
柚美とデートがしたい。これだけは譲れない想いだった。
柚美を独占している現状は、幸福以外の何者でもない。もはや、愛で満ち溢れた生活を続けるため、今から仕事に就いて備えておくんだ。




