第8話「青夏&優子と買い物デート」
朝っぱらから手料理を振る舞う。今日は客人が二人ほど、訪れているから張り切っていた。
「お待たせ! 出来たよ」
「ふふーん! 優星が料理してくれるなんて新鮮だねぇ〜」
「うわっ、美味そう……」
それぞれ異なる反応が窺える。特に青夏が素直すぎて愛嬌を感じてしまった。
とにかく二人から感想が聞きたい。目の前で二人が朝食を頂くまで見届けていく。
「「いただきます!」」
二人の目前に並んでいるのは、肉野菜炒め定食とフルーツヨーグルトだ。意外とメニューがガッツリしていそうたが、ちゃんと適量を出した。多分、二人とも食べてしまえると思う。
同時に二人は食べ始めた。二人して動作がもの静かである。ちょっとお上品な一面に驚いた。
しかし、肝心なのは食べてみた料理が美味いかと言う評価だ。いつも振る舞って来た人たちで絶賛しなかったことはない。つまり、俺は絶品料理を作れているはずだった。それを二人でも通用するか気になる。
「––––うん。美味い」
「そうだね? 特に焼肉のタレが程よく絡まってる」
「全体の焼き加減も上等。これは凄いかも……!」
二人から頂けた評価は期待していた通りだった。
評価した後で、黙々と出された料理を食べていく。凄く味わって食べている姿は、つい満足感を抱いてしまった。それだけ嬉しかったんだ。
「「ご馳走様でした」」
「どうも。美味しく頂けたようで安心したよ」
「ちょっと天才すぎるでしょ。次も食べさせて欲しいかも」
「同じく」
どうやら満足してくれたみたいだった。二人とも揃って『美味しい』と言ってくれている。これなら今後も料理を振る舞っていける。
すぐ二人が食べ終わった皿を片付けた。待たせてしまう間に新作の同人誌を読ませておく。
しばらく食器洗いで二人を放置した。遠くから熱中してしまう二人の様子が一目で分かる。ここで読ませておいて正解みたいだ。
「悪い。待たせちまったな」
「ううん。大丈夫だよ。それより面白いじゃんか! 凄いハマっちゃったわ」
「青夏にしては珍しい反応だな? そんなに面白かったか」
「うん!」
青夏は満面の笑顔を見せつけて来る。その笑顔は何より可愛いの一言しか出て来なかった。もしも、柚美と交際していなかったら、青夏を誘っていたかも知れない。なんて、つい妄想が浮かんでしまった。
それから青夏たちと近くで買い物に行く。二人と買い物なんて何年振りだろう。思い出してみようとするが、意外と記憶は蘇らなかった。
「今日は何か買ってあげようか? 私ってば太っ腹だし!」
「それなら頼む。基本は何でも良いよ」
「よし! それじゃあ電化製品売り場に行こう!」
真っ先に優子が場所を決めて来た。それも買ってもらえるとなれば、電化製品から選んでも構わないのか疑問だ。
何気に電化製品売り場を訪れてみた。そこに売られているものは高値が多い。そこを見ていくならば、是非とも電化製品から選びたい。けど、本人は詳しく言ってくれていない
どうしようか悩みどころだった。あまり高価なものを買ってもらうなど、欲張りだと思われてしまいそう。
(選ぶなら出来るだけ安い奴にすれば万事解決だろう。異性から金を出してもらわなくても生活は無事だ)
場合によれば買う必要はない。無理してまで買って欲しいと思わないからだ。けど、気持ちだけ受け取っておこうと思う。
優子を先頭に近いところから回っていった。意外と青夏が積極的に見て回っている。
もし、青夏から買いたいものが挙がった時は、俺と交代してもらいたい。それは後で判断しようと思った。
「あっ! これ良いかも!」
「お、どれどれ?」
今、優子がトイレで外している。その間に青夏と二人で会話を交わしていた。これまで青夏にも悩んでしまうことが沢山あったらしい。それを乗り越えて来たが、それは今より満足した環境じゃなかったみたいだ。
「大変だったな? やっぱり、声かけておいて良かった」
「本当に優星は気遣いが上手い。私なんか微妙だからさ」
「そんなことない。別に大して問題でもないだろ」
「そうかなぁ〜」
青夏を宥めるような発言で励ます。あそこまで青夏が追い詰められていたなら、さっきの 話も嘘じゃない。きっと真実を語ってくれているんだろう。
(これからは俺が守ってやるんだ。壊れて欲しくない大事な友達だからな)
俺は再び決心が固まった。健気でか弱い青夏は助けてくれる人がいなきゃ傷ついてしまう。だからこそ、俺が支えてあげたかったんだ。
「優星はさぁ……彼女いる?」
「……はぁ?」
「ふふっ。やっぱ気になるじゃん。私にも教えられないの?」
「ば、バカ野郎。俺って彼女がいるの思うか?」
本音を隠して生きるのは辛かった。それが守りたいと決心した相手なら尚更だ。
けど、真実は告げられない。度胸よりも柚美を優先しての判断だ。これを破って自分を許せる気がしなかった。
「––––だよね!」
(こいつは手強いな……)
その笑顔はズル過ぎる。魅力としては恋人に迎えるだけ十分だと言える。しかし、それで関係は左右できない。
「おっ待たせー! それじゃあいこっか!」
「りょうかーい!」
「おう!」
今更だけど思い出してしまった。そう言えば他の三人まで怪しい感じだったんだ。これは関係が拗れてしまうそうなのが真剣に悩みどころかも知れない。
(マジで困ったぁ……)
少し責任感が積み上がっているようだ。この重みを背負いながら関わっていくのは苦しいだろう。
とにかく今後はどこかでぶち当たる覚悟は固めておきたかった。そうじゃなきゃ直面した時が苦しい。警戒しておけば、相応の対処が施せるかも知れない。
お昼を迎えた頃には、買い物は済んでいた。実際に優子から買ってもらわないで終わる。
俺は少しだけ奢らせてしまう重荷を背負わなくて良かった。それだけお金を使わせることに抵抗があるんだ。
「今日は楽しかったねぇ!」
「そうだな。二人と久々の買い物は最高だったわ」
「本当に来て良かった。また、喧嘩して離れちゃうかと思ったもん」
高校卒業の当日に起きたすれ違い。それは青夏と喧嘩して起きてしまった一件だ。それを引きずってしまい、四年間は空白だった。
「あの時は私が悪かったんだよ。だから、青夏ちゃんは怒ったんだよね?」
「うーん? そうなのかなぁ〜」
「はぁ。やっぱり、教えてくれないんだね?」
「過去は語りたくない。もう、仲直りしてるんだし、三人で楽しく帰ろ!」
そんな青夏は優子を庇っているんだろう。何故なら当時の喧嘩騒動は優子がトリガーだった。
背後から優子に軽く押されて青夏を押し倒してしまう。そこで青夏の胸をガッツリ揉んでしまい、猛烈なビンタで辺りは沈黙する。さらに、泣いて走り去っていく後ろ姿を眺めながら立ち尽くしていた。
後から四人は声をかけてくれなくなる。連絡手段まで断ち切られて分かった。これは友情が壊れた証拠だ。ここまで施されたら、四人と会って許してもらおうと思えなかった。
彩穂だけが残ってくれたし、四人から告げられなかった絶交話を話してもらったんだ。彩穂は味方してくれたことは忘れないと誓っていた。
「まさか友達から揉まれるとか思ってなかったんだよ。あれは衝撃的すぎて三日は泣きっぱなしだったかも」
「大袈裟だろ」
「うるさいなぁ!」
以前に打ち明けてくれた話から驚愕すぎる展開だったようだ。あれで絶交してしまうほどの勢いに乗って四年が経過したらしい。本当に長い期間だった。
そして自宅に到着するまで会話しながら帰宅していく。




