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第6話「同窓会」

 今朝は一人分多めの朝食を作らないといけなかった。何故なら柚美がいるから当然だ。


 正直、面倒極まりないと言いたいところだが、可愛い妹が空腹で倒れでもしたら大変だろう。病院まで連れて行く手間も考慮すると、我慢して作ってあげるのが良い。


 とにかく特製カルボナーラパスタを振る舞ってから帰ってもらおう。満腹になれば帰る気だって起こるはずだ。


「朝食よろしくお願いしまーす!」

「はいよ! ちょっと待ってろ」


 もう食べる気でいるみたいだった。そもそも朝食なら帰宅させた後で良かったかも知れない。


 雑念が内心でざわつく。不可抗力は無理して捻じ曲げる必要はない。無理するよりも計画的に進めた方が良い。だから、ちゃんと事前準備は整えているんだ。


 朝食が出来上がり、安奈がはしゃぎまくる。カルボナーラパスタを安奈の前に置き、一言だけ尋ねてみた。


「これでどうだ? もし、頂きたいなら挨拶してからだぞ?」

「わーい! いただきまーす!」

「どうぞ召し上がれ」


 香ばしい匂いを漂わせる艶のあるカルボナーラパスタは美味しそうの一言でしか表せない。


 安奈はフォークで適量を絡めて口内に運ぶ。よく噛んで食べる姿は、純粋に可愛げを見せつけていた。眩しい笑顔と満足げな表情から安心感が生じる。


「美味いか? パスタは久し振りだったんだよ。少し自信が持てなくてさ」

「兄貴が作るご飯に不味いなど、有りはしませんよ! めっちゃ美味いです!」

「それは良かった。ゆっくり食べろよ?」


 これで帰宅してくれるはずだ。これ以上は求められても、気持ちが乗らなかった。副収入を集める前に使い切ってしまいそう。


 心配しながらも安奈を見守ってあげた。これだとすぐお皿が空になりそう。けど、家事は高校卒業からやって来たんだから問題なかった。


 一体、どんな基準かを思い出してみる。内心は穏やかに伝えたい気持ちが浸透した。


 安奈から食事を終える挨拶に続いて動き出す。お皿は安奈が台所まで持っていく。皿を水につけていると想定し、いよいよ帰宅を提案したかった。


 そして午後一時を長針が示す。時計を放置し過ぎて見るのは久しいかも知らなかった。


 現在、午前十一時二十分を回っている。すでに安奈はうちに着いて解放された。


 少し安奈の別れたがらない性格が目立ち、最後に引き下がるまで時間は過ぎる。


 現在、外で懐かしい顔ぶれと待ち合わせしていた。何せ急に同窓会を開きたいと言い出して来たんだ。仕方なく同級生のわがままに付き合おうと思った。


「確か、ここだよな?」


 そこは人気が少ない道を辿った先に窺えた。まるで聞いたこともない店で落ち合う約束を交わしてしまっていたことに淡い後悔が生じる。


「まぁ、入ってみるしかないよな……?」


 実際、同窓会と言っても小規模だと聞いている。俺を含めて五人ほどで、食事しようと誘われた。


 本当なら彩穂も来る予定だったんだ。けど、タイミングが合わないと言って断っている。だから、一人で来るしかなかった。


「行くか……!」


 何故か入るために決心していた。よく分からない心境に疑問が湧いて来るけど、今から楽しい同窓会なんだ。そこまで気に留めて臨める訳がない。


 取り敢えず入った先は、和風を強調したような空間が広がる。綺麗な木製の机と椅子がセットで設置された店内を見て、一目で『和食屋』だと勘づいた。


 そして突如、聞き覚えのある声が俺を名前で呼び上げる。


「あっ、優星じゃん!」

「本当に来てくれたんだぁ!」

「やっぱり、誘って良かったでしょ? アタシに感謝しなさい!」

「こらこら、三人ともはしゃがない。高校卒業して以来の優星くんが同時に戸惑ってます」


 淡い恋心が内心に湧き上がった。いつの日か封じていたはずの気持ちが、再び蘇るかのような高揚感を巻き起こす。


 あの四人が待ち受けているなど、俺は想像していなかった。もはや、運命の再会を果たせる日が来るとは、思いもよらない奇跡と巡り合ってしまう。


「それじゃあ優星くんと再会した祝福にぃ––––」

「「「「乾杯!」」」」

「ここは普通の和食屋さんだろ」

「気にしないのぉ!」


 相変わらず先頭に立って場を盛り上げるのが得意な愛葉和音。かつて学校一の美少女で名声を獲得したマドンナ的存在は健在みたいだ。


 そして隣席に座る青い髪色が特徴的な鈴江青夏は、当時学内で一番のファッションリーダーとして名を馳せていた。それも健在と見て間違いない。


 俺が座る左は夜能零波。零波は読書好きで、彩穂と並ぶ執筆技能を誇っていた。当時は趣味で無料小説投稿サイトを利用してバズってしまう結果を残している。彼女と執筆技能を高め合っていたからこそ、今の彩穂が存在した。


 最後に俺から右隣の武原優子は、とにかくゲームが得意で、あらゆる実況プレイ動画を投稿していた人気配信者だった。よく彼女から配信で稼いだ収益で映画鑑賞やランチを付き合わされた経験がある。もはや、同じゲームを買ってもらい、一緒にプレイさせられた記憶も確かに残っていた。


 以上が現役の個人勢Vtuberグループ『青嵐神楽』と呼ばれる四人である。今では大手より人気を獲得しており、プライベートスタジオを所持しているとか噂で聞いている。


 まさか高校時代で仲良くしていた四人と再会する日が来るなど、微塵も想定していなかった事態だった。


「優星は同人作家やってんでしょ? 名前も売れてるじゃん!」

「いつも優子は欠かさないで購入してる。それに自分が運営するサイトでも取り上げているわ」

「凄いバズってたんだよ! さすが優子は偉いねぇ!」


 すでに酒が回って酔っ払っているみたいだ。成人を迎えたらお酒が飲みたいと喚き散らしていたから当然だろう。


 注文を終えて食座が来るまで会話して待機する。


 四人はニコニコしているみたいだが、俺と再会できて嬉しかったのか疑問だった。


「それで彩穂は来れなかったんだね? せっかく高校時代の友人と会いたかったのに」

「あいつは美容院を予約した後で話が舞い込んで来て焦ってた。結果、俺だけ来たんだよ」

「二人とも同棲とか熱愛カップルじゃん!」

「違うわ!」


 すかさず同居している事実で和音が揶揄って来る。そう言う揶揄い屋は昔と変わらない一面だった。凄く男子から評判を買われていた一面とも言える。


「それで恋人は出来たの? どうせ私たちと会っている時点で彼女いないんでしょ?」

「まぁ、その通りだな……」

「本当に女運のない奴」

「うるせぇ」


 最初は根暗だと思っていた零波は、平然と本音を語るような奴だった。それ故に俺と話す時は毒舌に近い発言をかまして来る。実に子うるさい上に喧しい印象が強かった。


「それより再会した日ぐらい読書から離れろよ」

「うるさい。別に優星と会いたかった訳じゃないし」

「無理に誘って来ちゃったんだぁ! 四人が揃わないと落ち着かなくてさ!」

「優星に会いたいとか、毎日聞かされているせいかうんざりだよぉ。和音は見る目ないからねぇ」

「はっ⁉︎ な、何で私だけ⁉︎ みんなで告白しようって約束したじゃん!」


 和音が机を強めに叩いて驚いた。今から二人の喧嘩が始まりそうな予感しか湧いて来ない。言い争うと止まらないのが和音と青夏だった。



「バカ。隣で眺めてやるとしか言ってねぇし。誰がこんな冴えない犬を好きになるかってーの!」

「だから、青夏は『犬』って呼び方はやめてくれないかな! これでも人間なんだからね!」

「は? 冴えない奴のどこが人間なの? 和音なら相性抜群でも私は逆。そんな奴と仲良く出来ません」


 青夏は和音でも容赦ない一言を浴びせる。けど、和音は引き下がろうとしなかった。二人は譲りたがらない性格が目立っている。これも当時と変わらない一面かも知れなかった。

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