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第4話「初デート」

 次の日。午前中はプロット会議を開く予定だった。今度の売り上げは増やしたいから手伝っておくのだ。


「最近はラブコメが流行ってる。けど、バトルファンタジーだって捨てたもんじゃないでしょ?」

「それもそうだな。商業漫画だと、バトル系が売れ筋を獲得している。つまり、関心は消えていないはずだ」


 二人でジャンルから話し合っていた。最近の人気ジャンルは『ラブコメ』と相場が決まって来たりする。けど、俺たちは『バトルファンタジー』も時代に遅れていない方も信じたかった。


 取り敢えず『バトルファンタジー』にラブコメ要素を加えた作品を制作していく。話し合いで決めたことは、なるべく貫いてみせるプライドを待っていた。


 俺は新作キャラのデザインよりも、連載作品を進める。

 こちらは非常に売り上げが良かった。独特なアイディアとストーリー構成が、読者から受けている。それはアンケートを取って確かめた。だから、間違いないはず。


 漫画制作は順調に進み、これなら今月も売れる見込みが持てる。現在の職に就けて良かったしか言いようがない。


「ぐはぁ〜! そろそろ飯にするか?」

「取り敢えず作って置いといて。後で食べるから」

「出たよ。集中すると止まらない性格が」


 彩穂は高い集中力を持つ。それは一度でも入り込んでしまうだけで、いつ頃に止まってくれるか分からないぐらいだ。進行具合は程よくても、進めてしまいたい気持ちを抑えられないらしい。


 これだから制作期間を早く終わってしまうんだ。進み過ぎてしまった矢先、三ヶ月間は作業を置かないと山積み状態だった。


「ご馳走様でした!」


 原稿に向かう彩穂の隣で生ラーメンを食い終えた。隣人が食事していても、彼女が意識を削いでしまうことはない。それほどの集中力が発揮されている。


 密かにトイレまで来ると、メッセージを確認する。すると、一時間前にメッセージが届いていたらしい。


 今から読んで早く返信してしたい。待たせてしまっているなんて耐えられなかった。


『今日はデートしませんか? 交際が始まって以降の初デートです。お願いします』


 デートに誘うようなメッセージだった。これは交際してからの初デートだ。とにかく空いている日程を伝え、予定日を作りたかった。予定日なら用事を持ち込まないように意識することは可能だからである。


 そして予定日が定まる。丁度、空欄を装ったかなような都合の良い日だった。


 大体、作品が早く仕上がれば暇が出来る。その日を使ってデートすることが、非常に大事だと思った。


「と、言う訳だ。今度の土曜日は出掛けて来る」

「は? 急にどこ行くの? あまりふらついて来ないでよ」

「少し帰りが遅くなるかも。飯は自分で作ってくれ。頼むぞ」

「はぁ〜。じょうがない。別に良いけど」

「サンキュー!」


 これで準備は整った。後は彩穂に知られないルートを選択すれば完了である。


 取り敢えず地図を開き、候補となるデートコースにチェックを入れていく。俺の自宅から距離を空けておけば、大抵は気にしなくて済むはずだ。


 まず候補としては、遊園地とか観光が適していると考えていた。柚美は乗り物系が好きだから遊園地はどうか検討する。


 このデートは交際して初だからこそ、必ず良い思い出にしたい。それを叶えるため、全力を尽くして臨んだ。


 デート当日。俺は少し知人がいない場所で待ち合わせていた。そこは大体の知人を避けたい故に選ばれた場所。何かしら遭遇する可能性は、念頭に置いてあった。不幸にも鉢合わせないように気をつけたい。


「お待たせ! 待ちましたかぁ?」

「別に問題いないよ。少し前に着いてデートコースを確認していたところだ。とにかく問題がないか確認も取った」

「へぇ! 凄いじゃないですか。それじゃあ存分に楽しめそうですね?」

「そうだな」


 すぐ柚美から腕に絡みついて来る。新鮮な女子高生の体が密着し、少し性欲が沸いてしまった。

 けれど、今日は一般カップルと変わらないデートを心がけている。


 スタートしてから近くのコンビニに立ち寄っていく。コンビニで朝飯を買ってベンチに座って頂いた。


「うん、美味しい!」

「それは良かった。俺が好きなパンなんだよ」

「このチョコクリームが甘くて堪らない!」


 可愛げを見せる柚美は、夢中でチョコドーナッツに喰らいつく。俺から勧めて食べてもらったのだが、凄く気に入ってくれたみたいだった。


 朝飯が終わったら、最初は事前に決めていた場所を目指す。

 そこは新しく出来た遊園地だった。名は『森崎ウフルパーク』と言う。彩穂が見た時は、可愛げのない名称だとぼやいていた。一応、確認で聞いてみたが、特に訪れたい願望すらなかったようだ。


 けど、ここが柚美と楽しめるはずだと、色々と調べて分かった。


「先にジェットコースターに乗りませんか? 絶叫系が大好きなんですよ!」

「構わないけど、後で凹まないでくれよな」

「はーい!」


 腕を絡み取りながら歩いた。彼女が腕にしがみついた状態は歩きづらくてしょうがない。それでも本音は隠し通した。


 並んでからしばらく経過した頃。俺たちは先頭が回って来てしまった。柚美を奥に座らせておき、隣は俺が占領する。


(ジェットコースターなら昔は三人で乗った記憶がある。あれは確かお母さんが連れて来てくれた時だったはずだ。懐かしいかも)


 内心で過去を思い出す。微かに覚えていた柚美の笑った横顔が可愛くて堪らなかったんだ。それが今では隣に恋人として座っている。こんな運命を辿るなんて思ってもみなかった。


 少し緊張感が湧いて来てしまう。ただ、徐々に進み始めてからゆっくりと上がっていく。


 そして一番上まで登って来たところで覚悟を決める。


 正直、絶叫系は得意じゃなかった。けど、いざなら彼女と乗れたはずである。だから、俺は急降下する前に目を閉じた。


 発車したんだと、外を見れば分かる。現状は一気に自分を乗せたジェットコースターで急降下することだ。


 そして急降下なんて考えてもいなかった。当然ながら顔面に凄い当たりながら前進する。俺も凄く絶叫しているみたいな声が響き渡った。


「大丈夫ですか?」

「う、うーん?」


 気持ちは全開だったはずだ。あれだけ大きな声を出せば、かなり周囲から見られていたに違いない。けど、特にどうでも良い話だった。


 次々に乗りたいものを巡っていく。柚美がたくさん笑ってくれている瞬間を横から眺めて満喫した。もはや、これほどの幸福は普段じゃ味わえないだろう。


 そしてゴーカート広場を訪れた。大人コースで柚美は運転がしてみたいと提案する。柚美はとても瞳をキラキラさせながら願い出て来た。なので、考える間もなく決定する他なくなる。


「いよいよですね?」

「いつでも良いぞ」

「行きます!」


 ゴーカートが発進する。最初は少し勢いが強かった。けど、途中で一時停止してからスピードは調整していく。


 柚美の必死な横顔が可愛かった。彼氏として拝めてしまう瞬間は最高である。


 最後まで走り切り、二人でゴーカートから降りた。コースから颯爽と立ち去って外部に出る。そこで柚美が軽い感想を述べて来た。


「すっごい楽しかったです! いつか私が運転免許を取ってあげても良いかも知れませんね!」

「本当か? あまり俺は運転したいとか思わなかったから彩穂に任せっきりだったわ。それじゃあ将来はよろしくするな!」

「はい!」


 互いに新たな約束が交わせた。これだけ仲良く過ごせてしまえば、維持していくのも容易いはずだ。


 とにかく交際関係が続けていけるようにリードしたい。いつでも柚美が笑顔でいられる彼氏を務めたかった。

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