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第14話「安奈と二人きり」

 鶴谷先生と別れた後は真っ直ぐ帰宅した。少し気持ちが整ったみたいで気楽である。


 取り敢えず帰宅してから新たな職業準備を進めたかった。


 そして自宅に到着して玄関の鍵を開けようとして異変に気づく。


「あれ? 鍵が開いてるじゃん。閉め忘れたのか?」


 不思議と疑問が浮かんで空き巣を警戒した。心配になって早く中に入る。もし、仮に空き巣が入ってしまったなら色々と不味かった。


 すぐ中を確かめてみる。そこで捉えた光景は凄く拍子抜けだった。


「あ、お帰りなさい! 待ってました!」

「はぁ? 何だ、安奈かよ」

「勝手に上がらせてもらってまーす!」


 そこに安奈がポテチを食べながらくつろいでいた。しかも、部屋に置いていたはずのゲームまで持ち出されている。俺が留守にいている間、好き放題していたみたいだ。


「上がり込む時ぐらい連絡しろよ」

「兄貴は普段から返事が遅いからなぁ〜。それとも可愛い妹から連絡して欲しかったんですかぁ〜?」

「お前ってうざいわ」


 ゲーム画面から目を離さずに挑発めいた発言をかまして来る。あまり安奈は兄を見下したりはしないが、何かと揶揄って来たりする一面が目立った。別に嫌悪するほどでもない問題である。


 取り敢えず安奈には頃合いを見て帰ってもらいたかった。夜遅くまで居座らせてやれるほど、心配に欠けた兄貴じゃない。だから、遅くなる前に帰らせようと気をつけていた。


「俺は部屋にいるからな? 困ったことがあれば声かけろよ?」

「はーい!」


 どことなく適当さが窺えて心配だった。けど、ここは自宅だから問題は起こらないと信じたい。


 安奈をリビングに残して部屋を目指した。


「まずは編集から練習しよう。これは必須スキルだからな」


 まだ購入したばかりのパソコンは届いているはずがない。それが届くまでに出来ることは済ませておきたかった。


 編集方法を学ぶため、それらが記載された電子書籍に注目する。自分で分かりやすいと思った本を購入して編集に取りかかった。


「これだな! この『YouTuber必見の編集スキル講座』かぁ? これは良いかも知れない!」


 思わず歓喜のあまり声が上がってしまう。すると、急に後ろから掛けかけられた。


「何が良かったの? 編集スキル講座ぁ?」

「––––うわっ⁉︎」


 何故か安奈が横に現れて驚く。もはや、急な登場は予期していなかった。


「な、何で勝手に入ってんだよ! 声ぐらいかけてくれ!」

「ごめんごめん。驚かせようと思ったから声かけなかったぁ〜」

「全く。隙あらば悪戯するのやめてくれよな」

「兄貴のリアクションが大袈裟すぎて良いわぁ〜。凄い驚き方だったね?」


 安奈はニヤけながら揶揄うかのように言って来る。なんてうざったい奴なんだろうと考えてしまった。


「良いから部屋から出ていけ! 今、忙しいんだよ!」

「えー? でも、久し振りに兄貴と過ごしたいじゃん! ダメなの?」

「ダメに決まってるだろ。俺は暇じゃないんだよ」

「え〜? ケチぃ!」


 どうやら安奈は不貞腐れてしまったようだった。可愛げを感じさせるような文句が漏れて来る。


 それでも俺から了承するつもりはなかった。何故なら新しい仕事かも知れないんだ。当然と言えば当然だろう。


 とにかく安奈を振り解こうと金でも出しておこうと思った。これで引き下がってくれるはずだ。


「しょうがないから何か一つお菓子でも買って来れば良いんじゃないか? 金なら出すからさ」

「は? 子供扱いはやめてくれませんか? こう見えても私はお姉さんなんですからね!そんな甘い罠に引っかかりませんよ!」


(絶対に言いたかっただけだろ。決まれば良いんだろうな)


 そんな風に回避されてしまい、仕事が集中できなかった。これからつまみ出す方法を考える。


 すると、安奈が後ろから抱きついて来た。


「おっにいちゃん! 久し振りに遊びましょうよ! 可愛い妹と過ごす時間だって大事ですよね!」

「なっ⁉︎ 抱きつくんじゃねぇ!」

「良いじゃん! 兄妹愛は無限大なんですから!」


(本当に好きだな。ラノベに夢を見過ぎだろうが)


 昔からかまって欲しがり屋さんだった。いつでも甘えて来るから可愛がって来たんだ。けど、今になってボディタッチが多いと困る要因と繋がってしまった。


 何と言う不覚。こんな未来が予測できていれば接し方を間違えなかったはずだろう。しかし、もう過去はやり直せないんだ。ならば、取り敢えず凌いでかいくしかない。


「少しだけだぞ?」

「わーい! 兄貴ってばありがとう!」


 本当に俺は困った。ただ、確かに久しく相手してなかったのも事実である。だから、今日は思う存分に楽しんで帰ってもらうつもりだった。


 まずはリビングに来る。そこでスマホゲームを提案してみた。


「それじゃあ好きなスマホゲームで遊ぼう。一万円までなら課金しても良いぞ!」

「やったー! それなら私も少しだけだそうかなぁ〜?」


 ポケットから可愛らしい小さな財布を取り出して確認し始めた。意外と中身は入っているみたいである。どうやって稼いでいるのか少し気になって尋ねてみた。


「お前って金持ちだな? どこで稼いだんだよ?」

「んぅ? ちょっと新しく出来たSNSアプリで収益化したんだよねぇ〜。それでコツコツ稼いでみたんだぁ〜」

「へぇ〜?」


 意外な回答に驚いてしまった。さすが容姿はロリ美少女だし、中身もオタクなら引っ掛けやすそうだ。


(まさかエロい写真とか貼ってないだろうな。少し怪しい気もするから確認しておこう)


「後で俺にも教えてくれないか? 頼むよ!」

「別に良いけど、兄貴もアカウントは教えておきたかったし!」


 案外、すんなり教えてくれた。中身は見られても問題ないらしい。それなら安心だけど、確認は必須だ。万が一を考えて確かめるだけは怠れない。


 それから安奈が選んだスマホゲームで遊んでみた。タイトルはどこかで聞いたことがある。少し気になっていたから遊んであげて良かった。


「兄貴は初心者だから手伝ってあげるね! まずは村から始まるんだけどさぁ〜!」


 そして安奈から教えてもらいながらプレイする。


 何気に安奈が隣で距離を詰めて来て躊躇していた。それ以上は近づかないで欲しいが、また言い争うだけ時間は使いたくない。だから、少しだけ我慢してゲームに臨んだ。


 安奈とゲームしている間、いつも楽しそうな一言が聞こえて来る。同時に密着して来るところが勘弁して欲しかった。完全に寄りかかって来ている。


 安奈から香って来るシャンプーの匂いが性欲を掻き立てるようで困った。もはや、密着と匂いだけはやめて欲しくて仕方ないところだ。


 すると、急に質問して来た。安奈はラノベ絡みの話題を出す。


「兄貴ってさ? もし、転生して私が幼馴染みだったら、告白してくれるのかな?」

「は、はぁ?」

「最近、そんな展開があったんだよね。それが面白くてハマってるんだよ。それで気になったんだ」

「意外とラノベは進化しつつあると思う。ま、そんな展開も中にはあったかもな?」


 近頃は女子高生でもラノベを読んでいる。それは俺が同じ年代だった時と比べて増した感想だ。


 それなりに興味を持っていた女子はいたんだが、それ以上に人気がある。やはり、時代は進んでいるみたいだった。


 ただ、俺が読んでいたラノベから安奈は興味深々になっていったはすだ。それに影響されて柚美まで読み始めた時は傑作だった。これが共通趣向なんだろう。人は単純である。


「どうなの? 私は兄貴が幼馴染みなら愛してあげても良いんだよ? だって、今も好きだから」

「え? それマジ?」

「べ、別に言わせないで欲しいんですけど! 早く兄貴も答えてくれないかな!」

「お、俺はぁ……」


 本当なら青夏とか別と付き合いたい。けど、ここで本心を晒すのも良くなかった。それに安奈が迫って来た質問は期待しているからだろう。


 なら、答えは一つしか残されていなかった。


「もちろん愛していたかも知れないな! 俺たちは運悪く血縁同士だったんだ。本来の運命が違えば愛し合っていたんだろうな!」

「ほ、本当に⁉︎ う、嬉しい!」


 安奈は普段から見せている笑顔を晒す。それは喜び過ぎて自然に浮かべてしまった表情だと思った。それが安奈らしい。


 それから二人でとことんゲームを楽しんでいると午後五時が過ぎた。気づいたら彩穂が帰宅して来る。


「あれ? 安奈ちゃんってば来てたんだね?」

「あ、お邪魔してまーす!」

「ごゆっくりどうぞ」

「ありがとうございます!」


 一昨日から同人関係で仕事に出払っていた彩穂は凄い疲れているみたいだ。後で飯でも作ってやらないと体が持たないだろう。


 今日は安奈も遊び疲れたはずだし、帰ってもらう頃合いだと考えた。


「よし、今日はお終いだ。ご飯も作らないといけないから帰ろうか!」

「うーん? まぁ、しょうがないよなぁ〜」


 意外と素直に聞いてくれるみたいだ。これで安奈が引き取ってくれる。


 後は彩穂を支えていきたかった。暇が作れた時は編集講座を読んで勉強する予定である。ただ、それは彩穂にも伝えたかった。

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