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第13話「懐かしき先生に相談事」

 鶴谷先生が隣に座って来た。相変わらず豊満な胸は男を魅てしまうんだろう。


 もはや、俺は鶴谷先生はイケナイ女性だと認知していたんだ。勝手すぎる話で申し訳なく思う。


「そうか。お前は夢を叶えたんだな? それで恋人はいないのか?」

「いませんけど何か?」

「はぁ〜。やっぱお前が出来る訳ないよなぁ。何せムッツリだもん」

「鶴谷先生だってアダルト雑誌好きでしょ」

「まぁ、エッチは好きだよ。経験は少ないんだけどね」


 普段から鶴谷先生は自分で収めているんだと言いふらしていた。それも俺にだけ話してくれる話みたいだ。何か特別な感情とか湧いていたらしいが、教師としての立場は弁えている方だった。


「まだ俺が好きなんですか?」

「バカ。こんな場所で言うな。聞かれたらどうすんだよ」

「密かに通話してたの忘れてませんよ?」

「たった三回だけだろ。全く、教師失格になるだろうが」


 鶴谷先生から提案してくれた話だが、きっちり三回だけと言う約束は守っていた。本当なら交際なんか考えていた時期もあり、鶴谷先生が恋しかったんだ。ここだけの話、鶴谷先生を恋愛対象として見ていた。


 あの時は柚美が告白して来る前である。だから、好きな人は鶴谷先生だった。いつも愛想よく接してくれて恋してしまったんだ。不可抗力にも程がある。


 取り敢えず両者がラーメンを食べ終えた。この後は二人とも予定が入ってないみたいだ。そこで無理だと分かっていながら一つ提案してみた。


「相談があります。鶴谷先生の自宅で聞いてくれませんか?」

「は? 私が住んでいる家は散らかって入れてあげられないんだよ。悪いな」

「良いから気にしないでください。何なら片付けを手伝います」

「しょうがない。良いだろう。代わりに片付けるんだぞ?」

「チョロい。マジで了承されちまったよ」


 案外、俺たちは仲良しだ。鶴谷先生は俺なら相手してくれる。だから、少し無理っぽいことも頼めてしまった。


 自宅に上がってみると、清潔感を漂わせる玄関が窺える。きっと掃除が行き届いているんだと思った。


「やっぱ綺麗だわ。鶴谷先生は昔から清潔感抜群だったもんな?」

「当然でしょ? 掃除ぐらいするよ」


 さらに、短い廊下を通過してリビングに差し掛かった。その先は軽い飾りと爽やかな色合いが目立っている。


「久しいなぁ〜。昔とイメージは変わらないかも」

「こらこら。あまり鑑賞に浸らないでよ」

「分かってますけどぉ……」


 そして地面に設置されたテーブルを挟んで向かい合った。鶴谷先生がオレンジジュースを出してくれる。俺は遠慮なく頂いてしまった。


「相変わらず飲み物は用意されるんですね?」

「いつも私だって飲むから置いてあるの。別に良いんでしょ?」

「はい」


 鶴谷先生をプライベートで知る生徒は俺のみ。


(俺ってラッキーだわ。こんな空間に邪魔して来れる奴は早々しないだろ)


 少し内心でラッキーを噛み締めた。俺としては幸運でしかないんだ。それが当然だと思えてしまう。


 それから鶴谷先生に相談してみた。これが本来の目的だから守らないといけない。取り敢えず相談内容を話した。


「実は内緒話になります、俺、交際しているんです」

「––––は? 誰と?」

「今年から高校一年生になった子です、年齢的にヤバいから周囲に隠してました」

「いつからなんだ?」

「交際は今年がスタートです。でも、約束は四年前にしました」


 急に空気が変わるのが感じ取れた。鶴谷先生でも驚いたはずである。実の教え子が未成年と交際しているなど、普通はあり得ない話だった。


 けど、鶴谷先生は説明を聞いて冷静に答えたくれる。それも真面目に考えてから出た結論だった。


「相手が良いなら問題ない。交際開始が高校一年生からだって言うのは判断が上手い。それが向こうからだったんなら、適切な判断だと思うぞ」

「本当ですか!」

「うん。正直、すぐ付き合いたかったと言う気持ちを押し殺せていたんだろう。それに四年は待ったわけだ。後、未成年だから交際できない訳じゃない。同意して成り立つ関係は存在するだろ?」


 真剣に聞き入れてもらって助かった。気持ちが救われたかも知れない。ただ、問題は俺を狙っている女性が存在することだ。それだけは否めなかった。


 俺が俯きながら話してみる。それでさえも鶴谷先生は回答してくれた。


「気持ちは断っとけ。しょうがないだろ。人間なんだからさ。失恋ぐらい経験してしまう人が多いんだよ」

「そ、そうなりますよね……」

「落ち込める奴ほど、真剣に向き合おうとしていた証だ。別に自身を追い込む必要はない。それで関係が崩れるなら仕方ないと思うぞ?」

「はい……」


 どれほど人生が厳しいのか分かった瞬間だった。一人で考えてみても分かったはずの結論が受け入れられなかったんだ。でも、鶴谷先生が終止符を打ってくれた。


(青夏たちには悪いと思ってる。けど、仕方ないのかも知れない。もう俺は柚美がいるんだもんな?)


 内心が整頓された気がする。少し落ち着いて来たんだ。それでも青夏たちと関係は壊したくなさった。ならば、全力で支えていかないとダメだろう。


「もう分かりました。俺が取るべき行動が」

「ふーん? 意外とモテちゃうとか思ってもみなかったな。それも高校時代から仲が良かったんだもんね?」

「はい。でも、俺は柚美と付き合っているんです。だけど、自分を想ってくれるあいつらを見捨てません。絶対にみんなで幸福を掴み取るんです!」


 俺は息巻いた。それが己の背負うべき使命だと考えた上で決意する。


 これから少しずつ悲しい想いをさせてしまうんだ。けど、それで終わらせたくなかった。俺は責任を背負って生きようと思う。


「ありがとうございました。とにかく今日は失礼します。本当に感謝でいっぱいです」

「もう良いの? お前が良いなら構わないけど」

「はい」


 心がしっかりした答えを抱けているみたいだった。今後は青夏たちを支えていく術も身につけて行きたい。それを得れば青夏たちは去っていかないはずだ。


 本当なら他とも付き合いたかった。でも、辿る運命は選択肢が限られている。そうならば決意は出来ていた。


「それじゃあ世話になりました。さようなら」

「おっと。その前に電話番号でも交換しておこう。どうせ迷った時は相談相手なんかいないんだろ? 私が出れる時に相手するよ」

「ほ、本当ですか? ありがとうございます!」


 こうして俺は再会した鶴谷先生と言う理解者を獲得した。これは大きく人生を支えてくれそうである。

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