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二度目の異世界転生、ざまぁを助太刀させていただきます?  作者: 西園寺百合子


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49/50

49 1か月の答えを出しまして

メイヴィス・モルゲンシュテルン

アルフレート・フローリアス

結局、アルフレートの手を握り返せないまま。

もうすぐ1か月が経とうとしていた。


窓の外では季節が少しずつ移り変わり、庭園の花々も咲き変わっている。

けれど私の気持ちだけが、あの日から立ち止まったままだった。

そろそろ、アルフレートにちゃんと返事をしなくてはいけない。

曖昧なまま引き延ばすのは誠実ではない。


アルフレートの部屋を訪ねていいか、侍女に聞きに行ってもらった。

ここのところ、時間を作ってもらってばかりだから申し訳なく思っていた。

皇太子として忙しい日々を送っていることは知っている。

これ以上、無理をしてもらうのは申し訳ないから。

アルフレートの都合がいいときを聞いてもらいにいったのだ。


すると、アルフレートが部屋を訪ねてくれた。

思わず椅子から立ち上がる。

「あ、アル…私が行きましたのに。すみません、わざわざ」

そう伝えると「ヴィのことは、何より最優先だから」と言われた。

あまりにも自然に言われて、胸がきゅっと締め付けられる。


そういうところだ。

そういうところが、ずるい。


「もうすぐ1か月になるので、お返事をしなくてはと思って、お時間をいただきたかったのです」

私がそう言うと、アルフレートの顔に緊張が走った。

今まで穏やかだった表情が少しだけ固くなる。

彼もまた、この日を待っていたのだろう。

私もちょっと緊張する。


「この1か月、本当に楽しくて。…いえ、アルフレート様にお会いしたときから、本当に毎日が楽しくて」

言葉にすると、なんだか泣きそうになった。

思い返せば、出会ってからの日々は驚きと喜びの連続だった。

リアルで推しに会えた奇跡。

本当に幸せだった。

推しを遠くから見守るだけだった人生が、気付けば隣を歩けるほど近くなっていた。


「アルフレート様が、私のことを好きになってくれるなんて思っていなかったから。本当に、本当に幸せで…この1か月、本当に幸せで」

私がそう言うと「だったら」とアルフレートが手を伸ばした。

アルフレートの手を見ながら、首を横に振る。


「私も、アルフレート様のことが好きです。推しとしても、ひとりの男性としても。でもだから、皇太子妃にはなれません」

そう続けた。

言葉を口にした瞬間、胸が痛んだ。


アルフレートが首を傾げる。

予想していなかった答えだったのだろう。

ずっとあった、結婚してもいいのかという不安。

どれだけ幸せな時間を過ごしても、その不安だけは消えなかった。


「私はモルゲンシュテルン家の、底辺伯爵家の令嬢です。残念ながら、私にはなんの後ろ盾もありません。王権派の貴族との交流も無いんです」

そう。

私の家は皇太子妃となる家系にふさわしくない。

豪華な宮殿の一室を見渡しながら、あらためてその現実を思い知る。


今は愛だの恋だの言って結婚できるかもしれない。

けれど現実は物語ではない。

いざとなったとき、我が家ではアルフレートの力にはなれないんだもの。

王宮の権力争いも、貴族社会の思惑も、支えられるだけの基盤がない。


それは、これから王となるアルフレートにとってもいいことではない。

好きだからこそ、足を引っ張りたくなかった。

アルフレートは私の言葉を聞いて、納得したようだった。

反論するでもなく、静かに考え込む。


「モルゲンシュテルン家の伯爵令嬢だから。…そうか。それが、引っかかっていたんだね」

アルフレートがそう言って顎を擦った。

何かを整理するように視線を落とす。


「皇太子妃には、どうか、それなりの家門の方をお選びください。…1か月、本当に楽しかったです。ありがとうございました」

最後まで声が震えないように気を付けながら告げる。

カーテシー。

ゆっくりとスカートの端を摘み、完璧な角度で礼をする。

皇太子妃教育で学んで、唯一身についたものかもしれない。

最後を綺麗に締めくくれてよかった。


そう思ったはずなのに。

これで終わるのだと思うと、どうしようもなく寂しかった。


「うん。わかった」

アルフレートがそう言って座りなおす。

自分で別れを告げておきながら、胸が苦しくなる。

「では、私は…」

そう言ってそのまま、足を後ろに引こうとして、アルフレートに手を掴まれた。

驚いて顔を上げる。


「わかったよ。俺、皇太子、辞めてくるから。ちょっと待ってて」

そう言われて、開いた口が塞がらない。

「え?…こ、皇太子って、辞められるんですか?ん?違うな」

自分で何を言ってるのかわからなくてアルフレートを見る。


「ヴィが、皇太子と結婚できないっていうなら、俺が皇太子を辞めるしかないよね」

そう微笑まれて、なんて返したらいいかわからなかった。

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