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二度目の異世界転生、ざまぁを助太刀させていただきます?  作者: 西園寺百合子


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43/50

43 セドリックの話を聞きまして

皇太子妃候補 メイヴィス・モルゲンシュテルン

皇太子  アルフレート・フローリアス(ローゼンタール)

伯爵令嬢 エレオノーラ・ヴァランティーヌ

子爵令息 クロード・ヘイスティングス

伯爵令息 セドリック・リヴェンデル

伯爵令嬢 ルシエラ・リヴェンデル

廃皇太子 マルテロ

「そんな…こんなに多くの人がいる前で…」

私は周囲を見回しながらそう言った。


会場には令嬢たちが大勢残っている。

誰も帰ろうとせず、この異様な状況を固唾を呑んで見守っていた。

割れたティーカップの破片が床に散らばり、先ほどまで華やかだったお茶会の面影はもうない。


私がそう言うと、セドリックが唇に中指を押し当てた。

静かに、という仕草。

その動作はどこか優雅で、育ちの良さを感じさせるものだった。

「ここには、王妃がいますから。公然の秘密、にすればいいんですよ」

そう言って、セドリックが微笑む。


「王妃、あなたも、本当の子が皇太子になったほうが嬉しいでしょ?」

エレオノーラがそう言って、勝ち誇ったような顔をした。

王妃の表情が苦しげに歪む。

「違う…そういうことを望んだわけではないの。私はただ…」

震える声だった。


「ただ、愛している人の子を残したかった?それで、俺が、どんな目にあってきたか、ご存知ですか?」

セドリックがそう言って悲しそうに微笑む。

怒りよりも、傷ついた子どものような痛みが滲んでいる。


「片方の子は皇太子になり誰からも好かれ、もう片方の子は、親に疎まれ人と接するのが苦手になったんです」

セドリックがそう言って王妃の手を掴む。

王妃の肩が小さく震えた。


「エレオノーラから、俺が皇太子の兄弟だと聞かされた時、どんな気持ちだったか想像できますか?」

そう言って、セドリックは王妃を責めている。

「ただ、髪の色と瞳の色が似ていなかったというだけで。俺は伯爵家に置き去りにされたんです」

その声は静かなのに重かった。

長年積み重なった孤独や不満が、言葉の端々から滲み出ている。

王妃の瞳には涙が浮かんでいた。

それは、一人の母親の姿だった。


ふと、セドリックの設定資料が思い浮かんだ。

控えめで、人と話すのがちょっと苦手。

内向的。


そんな彼がこれほど変わってしまったのは、自分の出生についてエレオノーラに聞いたからか。

そう思ったら、寂しくなった。

もし誰かが彼に別の言葉をかけていたら。

もし別の形で真実を知っていたら。


セドリックがどんな人生を歩んできたのかはわからない。

ただ、もし本当に親から疎まれていたのだとして。

それでも、王妃は愛する人の子であるセドリックを産みたかったのだと。

いい意味で彼に伝えることができていたら。

こんなネガティブな結果になっていなかったかもしれない。


もしかしたら、銀恋では。

ヒロインであるエレオノーラがセドリックに寄り添ったのかもしれない。

こんな結果にならないように、2人の仲を取り持ったのかもしれない。

エレオノーラが転生者でなければ…

ゲームのストーリー通りであれば、こんな悲しい場面は生まれなかったのかも。

そんな考えが頭をよぎる。


「もう、やめてください、お兄様…」

ルシエラがそう言って、ポロポロと涙をこぼした。

幼い頃から慕ってきた兄の姿に驚いたのかもしれない。

小さな肩が震えている。

「お兄様は、いつも、優しかったのに…どうして…」

そう言って泣いている。


セドリックが少したじろいだ。

「お、俺は、正当な主張を、しているだけで…」

声が少し弱くなる。

誰にしているのかわからない言い訳をはじめた。

先ほどまでの自信が揺らいでいる。


「エレオノーラが、正当な主張だと言ったのですか?」

たじろいでいるセドリックに、まっすぐに言い返してみた。

会場中の視線がこちらへ集まる。

「それは…」

セドリックはあたふたとしている。

言葉が続かない。

たぶん、エレオノーラにいいように言われたんだろう。

ずっと心に抱えていた不満に付け込まれたのだ。


「セドリック様は、間違っていませんわ!あなたが王となるべき人なんです!」

エレオノーラがそう言って、セドリックの腕を掴んだ。

セドリックがエレオノーラを見て悩んでいるように見えた。


「それ、俺にも言ったよね?『あなたが王となるべき人なんです』って」

そう声が聞こえて、振り返る。

そこには、マルテロが立っていた。


会場の入口に寄りかかるようにして立っている。

顔色はすごく悪い。

青白い顔に汗が滲み、今にも倒れそうだった。

起きていい状態なのか。

王妃がフラフラと立ち上がって「どうして」と声を漏らした。

母親の顔だった。


マルテロがセドリックのところまで行って、下から上へと視線を上げる。

双子の兄弟の初体面。


「君が、俺の、兄なんだ」

マルテロがそう言って、自虐的に笑った。

どこか照れくさそうでもあった。


「兄弟そろって、同じ女に騙されるなんて、情けないな」

マルテロがそう言うと、セドリックが驚いたように目を見開いた。

その言葉は責めるものではなかった。

そうしてセドリック「そうだな」と呟く。


長い沈黙の後の、素直な言葉だった。

向かい合って苦笑する2人は、まるで毒素が抜かれたように、すっきりした顔をしていた。

憎しみでも怒りでもなく。

ようやく出会えた、兄弟の顔だった。

その姿を見たルシエラがまた涙をこぼし、王妃も震える手で口元を押さえる。


重苦しく張り詰めていた会場の空気が、ほんの少しだけ和らいだ気がした。

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