42 衝撃の真実ふたたび、でして
皇太子妃候補 メイヴィス・モルゲンシュテルン
皇太子 アルフレート・フローリアス(ローゼンタール)
伯爵令嬢 エレオノーラ・ヴァランティーヌ
子爵令息 クロード・ヘイスティングス
伯爵令息 セドリック・リヴェンデル
伯爵令嬢 ルシエラ・リヴェンデル
廃皇太子 マルテロ
エレオノーラは勝ち誇ったように話し続ける。
先ほどまで追い詰められていたはずなのに、その顔には高揚感が浮かんでいた。
口元を吊り上げ、自分だけが真実を知る優越感に浸っているようだ。
「自分の子でもないマルテロを皇太子に、いえ。次期、王になんてしたくない。王様がそう言うから、私がちょっと、アドバイスをしてあげたのよ」
そう言って、あははと笑っている。
静まり返った会場に、その笑い声が異様に響いた。
誰も笑わない。
むしろ、その場にいる全員が背筋に寒気を覚えているようだった。
つまり、マルテロが横領するように仕向けたのは、王だったということか。
どうりでマルテロの断罪がスムーズにいくわけだ。
王が、あのときすんなりと証拠を受け入れたのも納得できた。
「その上で、自分の本当の子である、アルフレートを皇太子にしたの。あの親父、アルフレートが自分の子だって信じないから、血液検査のことまで教えてあげたの、私が!」
そう言って、本当は暴漢騒ぎを計画していたことまでペラペラとしゃべった。
まるで武勇伝でも語るかのように楽しそうだった。
会場の令嬢たちは顔を見合わせ、困惑と恐怖の入り混じった表情を浮かべている。
いいおじを陥れようとしたのは、やっぱりエレオノーラだったのか。
あんな、いいおじを…許せん。
思わず拳を握り締める。
王妃は唇を震わせている。
「あの人…気がついていたの」
そう言って近くにあった椅子に座った。
力が抜けたように腰を落とし、そのまま俯く。
ただ、個人的に言わせてもらえるなら。
王だって隠し子がいたわけだし。
どっこいどっこいじゃない?
アルフレートは複雑な気分だろうけど。
「王妃殿下。あなたもおわかりですよね。この計画を立てたのが、私だけじゃないって」
エレオノーラがそう言って王妃の前に立つ。
勝ち誇るような笑みを浮かべながら。
ん?どういうこと?
アルフレートと顔を見合わせる。
彼も同じ疑問を抱いたらしい。
「アルフレートにはね、死んでもらわないと。そうですよね、王妃殿下」
エレオノーラがそう言った。
さっぱりわからない。
何を言ってるの?
会場にざわめきが広がる。
先ほどまでの話ですら十分衝撃的だったのに、さらに理解不能な言葉が続いている。
そこに、セドリック・リヴェンデル伯爵令息が現れた。
会場の入口からゆっくりと歩いてくる。
整った身なりはいつも通りで、その表情も穏やかだった。
「…どうしたんですか?王妃殿下まで、このお茶会に参加されていたのですね」
そう言って挨拶をしている。
優雅に一礼する姿は非の打ち所がない。
でもすぐに、雰囲気を察したのだろう。
妹であるルシエラに「どうした?」と尋ねている。
ルシエラは顔を青くしながら兄を見上げた。
ルシエラはしどろもどろ、セドリックに状況を伝えようとしていたが。
言葉がうまく出てこないらしい。
何度も口を開いては閉じている。
すると、エレオノーラが大きな声でセドリックに言った。
「バレちゃったの。全部、このモブと、あんたの母親のせいで!」
たしかに、そう言った。
モブは私のことだ。
じゃあ、『あんたの母親』って、誰のことだろう。
周囲の人の視線が、王妃に注がれる。
もしかして…セドリックって。
ドクンっと心臓が音を立てる。
いやでも、セドリックと王妃は似てない。
髪の色も、瞳の色も違う。
マルテロとも似ていない。
ただ、年齢は同じだ。
どくん、どくんと心臓が音を立てる。
嫌な予感が膨らんでいく。
「まさか…そんな…」
王妃がそう言って、その場に崩れ落ちた。
椅子から滑り落ちるように膝をつく。
周囲の侍女たちが慌てて支えようと駆け寄った。
「そうよ。セドリックは、マルテロの双子の兄。あなたに似てないから、リヴェンデル伯爵が預かって育てた子よ」
エレオノーラがそう言った。
誰も言葉を発しない。
ただ沈黙だけが広がる。
セドリック本人ですら、一瞬だけ目を伏せた。
「アルフレートが死んで、王が死んだら。王妃がその座に一時的に座る」
エレオノーラが崩れ落ちている王妃の肩を軽く叩いた。
「そうして、セドリックが、次期、皇太子、そうして、王となる、でしょ?」
エレオノーラがすらすらとそう言って、セドリックに抱きついた。
「そうだね。次期、王の座には、俺がつくのがふさわしいと思うよ」
セドリックが、静かにそう言った。
穏やかな声音だった。
「だからね、アルフレート皇太子殿下は、ここで、死んでもらえると助かるな」
アルフレートに向き直ったセドリックが、冗談でも言うようにそう言った。
その口元には笑みが浮かんでいる。
ルシエラが信じられないものを見るような目で兄を見上げていた。




