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二度目の異世界転生、ざまぁを助太刀させていただきます?  作者: 西園寺百合子


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32 もう1つの罪がありまして

皇太子妃候補 メイヴィス・モルゲンシュテルン

皇太子  アルフレート・フローリアス(ローゼンタール)

伯爵令嬢 エレオノーラ・ヴァランティーヌ

子爵令息 クロード・ヘイスティングス

伯爵令息 セドリック・リヴェンデル

伯爵令嬢 ルシエラ・リヴェンデル

廃皇太子 マルテロ

クロードの話によれば。

ヘイスティングス家が経営する薬局に害虫駆除をしたいからと薬を求めてきた町娘がいたらしい。

市販しているものを勧めたら、それでは効果がなかったというので、少し強い薬を処方して渡したそうだ。


症状からするに、私が飲んだ毒はそれだろうと。

毒の量を調整することで、死に至るまでの時間を調整できるらしい。

王城から毒について問い合わせがあったときは、声が出そうなほど驚いたそうだ。

そうして、慌ててその町娘を探したが、見つからなかったのだと。

クロードは何度も申し訳なさそうに俯きながら話す。


「そういう毒があることを、誰かに話したりしましたか?」

私が尋ねると、クロードは少し考えるようなそぶりをした。

眉を寄せ、過去の記憶を探るように視線を落とす。

「思い出してくれ」

アルフレートがそういうと「あっ」とクロードが顔を上げる。

そうして、彼の表情がさらに青ざめた。


「1度…エレオノーラ嬢から『じわじわと効くような毒はないか』と尋ねられたことがあります」

クロードがそう言った。

青ざめた顔が、白くなっていく。

倒れてしまうのではないかと心配になってしまった。


「作れるかと言われたので作れると…。お酒の席での、冗談のつもりで…申し訳ありません」

そう言って、クロードは何度も頭を下げた。

軽い会話のつもりだったこと、まさか本当に使われるとは思わなかったこと。

ため息しか出ない。


町娘がエレオノーラであるかはわからないが。

エレオノーラはクロードがその毒を作れることを知っていたことは確かだ。


クロードは皇太子妃候補の殺害未遂に手を貸したことになる。

でも、今回、断罪したいのはクロードじゃない。

だから、アルフレートも含めて、取り決めをすることにした。


「クロード様。今回の件で私がヘイスティングス家を訴えるつもりはありません。ですが、『もしも』のときは証言をしてほしいのです」

私がそう言うと、クロードは明らかに動揺した。

「あ、あの実は…」

クロードが申し訳なさそうに声を出す。


「実は、え、エレオノーラ嬢から『自分が皇太子妃になるから問題ない。何も言わなくていい』と言われたのですが…本当でしょうか?」

クロードはそう言うと、不安そうに私とアルフレートの顔を交互に見た。

エレオノーラの言葉を信じたい気持ちがあるのかもしれない。

ただ、そう言われて、呆れた。


それを、皇太子妃候補の私に尋ねますか?

思わず言葉を失ってしまう。

クロードに悪気がないのはわかる。

でも、あまりにも純粋すぎるというか。

言葉を選ばずに言うなら、バカなんじゃないだろうか。


「エレオノーラが皇太子妃になることはない。だから、メイヴィス嬢についたほうが賢明だと思うよ」

アルフレートがそう言って、クロードの肩に手を置いた。

クロードがビクリと体を動かして「はい」と返事をしている。

突然触れられたことに驚いたのか。

それともアルフレートの言葉の重みに反応したのか、肩が小さく跳ねる。

可愛そうなくらい、気が弱い。


エレオノーラにも、こんなところを利用されたのかもしれないなと思った。

そんなわけで、クロードに念書を書いてもらった。

彼にとっては、自分の罪を認めるようなものなのかもしれない。

クロードには悪いが、今はエレオノーラの断罪が最優先だ。


ヘイスティングス家の薬局を訪れたという町娘は、すぐに見つかった。

実際は町娘ではなく、エレオノーラの侍女だった女性。

毒殺未遂事件の後、すぐに辞めたらしい。

ただ、辞めるときに『退職金をたんまりもらった』と同僚に話していたらしい。

あまりにも不自然だった。


普通なら突然辞める侍女のことなど、周囲は気に留めないかもしれない。

でも、その直前に起きた事件を考えれば、偶然とは思えなかった。

そこで、アルフレートの『影』が探し出して事情を聞いてくれたのだそうだ。

頼りになる。

表には出ないけれど、必要な情報を確実に集めてくれる。

改めて、アルフレートが持つ力の大きさを感じた。


「これで、毒殺未遂については、エレオノーラが仕組んだということはわかったけど」

アルフレートがそう言って考えている。

腕を組み、少し視線を落としながら、次に取るべき行動を考えているようだった。


もう1つのほう、マルテロを陥れたのがエレオノーラだという件に関しては、全く進捗がない。

なにせ、マルテロと会えない。

証言を得ることができれば、エレオノーラの罪はさらに明確になる。

でも、肝心の本人と接触できないんだもん。


「毒殺未遂だけでも、十分に重い罪になるし。これで断罪してみようか」

アルフレートがそう言った。

たしかに、皇太子妃候補の殺害を計画しただけでも大きな罪になる。

普通なら、それだけで十分な証拠になるはずだ。

でもあの、ヴァランティーヌ伯爵の家のご令嬢だよ?

もみ消される図しか思い描けない。


もう1つ、別の切り札も持っておきたい。

廃太子になったとはいえ、王族を陥れたとなれば、王様だって黙っていられない。

王権派の皆さまからの指示も得られるような気がする。

今の状況をひっくり返すには、確実な証拠が必要だった。


「なんとか、マルテロに会えないかな…」

私がそう言うと、アルフレートが私を抱きしめた。

突然のことに、思考が止まる。

いつものように冷静でいようと思っていたのに、こんな不意打ちをされるとは思わなかった。


「一応、婚約者の前なんだから。他の男に会いたいとか、言わないでしょ」

そう言われて、顔が熱くなる。

いやいや、そういう意味じゃないよ?

慌てて否定したいのに、言葉がすぐには出てこない。

「ア、アルフレート様。もう、そんな冗談、言わないでください」

私がそう言うとアルフレートが私の肩を引き寄せる。

さらに距離が縮まり、心臓の音が自分でもわかるくらい大きく感じた。


「冗談…でもないんだけどな」

そう言われた気がして、頭がクラクラした。

聞き間違えかな?

アルフレートの表情を見る。

でも、いつも通り落ち着いていて、本当の気持ちは読み取れない。


一旦、落ち着こう。

婚約者のフリをしているだけで、こうやって抱きしめてくれているのは。

ただの…ただの、なんだろう?

推しが何を考えているのかわからなくて、プチパニック。


「…マルテロがいるところはわかったから。会いには行けるよ。話せるかはわからないけど」

アルフレートがそう教えてくれた。

さすがは推し。

調べてくれていたんだ。

「それなら、すぐに!」

思わず、アルフレートの体から自分の体をはなした。

アルフレートの視線が揺れる。

「…?」

どうしてだか、アルフレートが寂しそうな表情になった。

エレオノーラの罪が暴けるかもしれないのに、どうしたんだろう。


「いや。皇太子妃候補が、行くところじゃないから…」

アルフレートがそう言って言葉を濁した。

その様子を見て、私はさらに首を傾げた。

どうやら、簡単には向かえない場所らしい。

けれど、マルテロに会える可能性があるなら。

私は諦めるつもりはなかった。

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