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二度目の異世界転生、ざまぁを助太刀させていただきます?  作者: 西園寺百合子


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29 つかみ合いの喧嘩しまして

皇太子妃候補 メイヴィス・モルゲンシュテルン

皇太子  アルフレート・フローリアス(ローゼンタール)

伯爵令嬢 エレオノーラ・ヴァランティーヌ

子爵令息 クロード・ヘイスティングス

伯爵令息 セドリック・リヴェンデル

伯爵令嬢 ルシエラ・リヴェンデル

廃皇太子 マルテロ

「あなたに関係ないわっ!」

エレオノーラが一瞬、怯んだように見えたけど、すぐ体勢を立て直したようだ。


「それより、あんたみたいな名前だけの伯爵家の令嬢風情が、どうして皇太子妃候補なのよ?」

エレオノーラがそう言って、私に掴みかかってきた。

勢いよく距離を詰め、腕が伸びる。

その手を、私が掴んだ。


お前が、アルフレートを殺したからだろ!

そう叫びそうになって、息を吐く。

この時間軸のエレオノーラは、まだアルフレートを殺してない。

まだ。


もしまた、エレオノーラが皇太子妃になったら、アルフレートを殺すかもしれない。

その未来だけは、絶対に現実にしてはいけない。

「どうしてかはわかりませんが、私はアルフレート様を(推しとして)愛してますから」

言葉を選びながら、真実を伝えた。

推しとして、だけど、この世界に推しという概念がないから。

推しという言葉を使うのはやめておいた。

推しどころか、モブも、この世界にはない言葉だ。


「愛?愛なんてもので、生きていけると思ってるの?必要なのはね、権力とお金よっ!」

エレオノーラがそう言って私を突き飛ばす。

床に靴音が鳴り、距離が一気に開いた。

本気で突き飛ばしやがったなと、エレオノーラを睨みつける。


「権力やお金を手に入れて、何をしたいんですか?」

私がそう言うと、エレオノーラが私を睨み返した。

一瞬だけ沈黙が落ち、空気が重くなる。

でも、すぐに表情を和らげて言った。

「あなたを、皇太子妃候補から外すことができるわ。ヴァランティーヌ家はモルゲンシュテルン家より、権力を持っているから」

エレオノーラは自慢げにそう言った。


「権力といえど、この国の婚約を解消することはできませんよ」

私がそう言うと、エレオノーラが逆上した。

もう、ヒロインの顔をしていない。

「だから、あんたから解消を申し出なさいっ、このモブがっ!」

そう言って髪の毛を掴まれた。

話し合いで終わる気がしない。

手が出た時点で、暴行罪だ。


「も、モブってなんですか?」

そう、すっとぼけてみた。

痛みよりも、情報を引き出すことを優先する。

「モブっていうのは、いてもいなくても、いい奴のことを言うのよっ!」

エレオノーラがそう言って「だから、早く婚約を解消しなさい!」と叫んだ。

モブの認識は私も同じだ。


でも、それを本人に言っちゃうのはどうだろう。

それにゲームではたしかにモブだけど…

「私は、皇太子妃候補ですよ?口を慎みなさいっ!」

そう言い返した。


今、私が生きているこの場所は、ストーリーが決まっているゲームの中じゃない。

それはエレオノーラも同じはずだ。

エレオノーラが私につかみかかろうとしたところで、扉がノックされた。

短い音が室内に響き、張り詰めていた空気が一瞬だけ揺らぐ。

すかさず「どうぞっ」と声を出した。


私がそう言うと、バンっと扉が開かれる。

重い扉が勢いよく押し開けられ、エレオノーラの視線が私から離れて、扉へ注がれた。

そのすきに、少し距離をとる。

それに気がついたエレオノーラが私を睨んだ。


扉の外には何人かの人が、どうしたんだろうと中を覗くように見ていた。

ざわざわと小さな声が広がり、何事かと集まってきた侍従や貴族たちが、扉の隙間から室内を覗き込んでいるようだ。

心配しているというより、何か面白いことでも怒ってるんじゃないかという。

野次馬的な雰囲気があった。


扉を開けたのは、アルフレートだった。

「外まで声が聞こえていたよ。どうかしたの?」

そう言って私の肩を抱いてくれる。

外まで声が漏れていたのか。

それは、野次馬も集まってくるよね。


アルフレートの体温が伝わってきて、さっきまでの緊張が少しだけほどけていく。

「…エレオノーラ様に髪の毛をつかまれて」

そう言ってアルフレートの陰に隠れた。

視線を避けるように半歩下がり、アルフレートの背中に身を寄せる。

髪の毛がぼさぼさになってるところを、他の人に見られるのは、皇太子妃候補としてはよくない。

意識して整えようとするが、指先が少し震えてうまくいかない。


「どういうことだ、エレオノーラ嬢。答えによっては、暴行罪となる」

アルフレートがエレオノーラをけん制してくれている。

声は静かだが、明確に怒気を含んでいて、室内の空気がさらに冷え込むようだ。

「私はただ、皇太子妃候補様とお話をしていただけです。少しよろけて、うっかり、皇太子妃候補様の髪の毛に触れてしまっただけですわ」

鈴が鳴るような声でそう言って、アルフレートの腕に触れている。

婚約者がいる前で、よくできるものだ。


アルフレートはエレオノーラを振り払ってくれた。

それを見て、少しだけ「いい気味だ」と思ってしまった。

いかん、いかん。

腹黒いところを推しに見られてはいけない。

チラッとエレオノーラを見ると、意外にも、傷ついている表情をしていた。

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