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二度目の異世界転生、ざまぁを助太刀させていただきます?  作者: 西園寺百合子


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14/50

14 私の部屋で作戦会議をしまして

伯爵令嬢 メイヴィス・モルゲンシュテルン

伯爵令息 アルフレート・ローゼンタール

伯爵令嬢 エレオノーラ・ヴァランティーヌ

伯爵 ディミトリ・オルブライト

シンと静まり返ってしまった。

さっきまで自然に続いていた会話が途切れ、部屋の中が静まり返る。

壁に掛けられた時計の針が進む音だけが、やけに大きく耳に届いた。


空気を変えたほうがいいかなと、話題を変えようとして窓の外を見る。

窓ガラスの向こうには、すっかり夜の帳が下りていた。

夕方でも柔らかな陽射しが差し込んでいたはずなのに。

今は月明かりが庭木の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせている。

…今、何時?


嫌な予感がして、思わず視線を時計へ向けた。

うっかり話し込みすぎてしまった。

気付けば、私の部屋に来てから何時間も経っている。

「うひゃっ!アルフレート様っ!ごめんなさい。うっかり、すっかり夜で…」


慌てて立ち上がろうとして椅子に膝をぶつけそうになりながら、あたふたする。

夕食すら食べていただいてない。

じゃなくて、夕食前には帰っていただかなくてはいけなかったのに。

私のバカバカ。

頭の中で自分を責めながら、両手をわたわたと動かしてしまう。

時間を忘れるなんて、本当にどうかしていた。


「あ…もう、遅いですし、続きはまた、後日…」

恐る恐るそう切り出す。

私がそう言うと、アルフレートがふわりと私を抱きしめた。

突然肩を引き寄せられ、温かな体温に包まれる。

アルフレートの優しい香りが鼻先をくすぐり、心臓が一気に跳ね上がった。

「え?もう、こんな時間なのに、帰れっていうの?」

アルフレートにそう言われて、目が回る。

近い、近すぎる。


いつも整った顔立ちだと思っていたけれど、こんな距離で見たら破壊力が違う。

「あ、いえ…その、しょ、食事、夕食でも、御一緒にぃ…いや、違うか?」

なんか、ナンパしてるみたいなセリフに困惑した。

何を言っているんだ私は。

頭の中で自分にツッコミを入れるが、口は止まってくれない。


「あははっ!ごめん。そんなに慌てないで。おとなしく帰るから」

そう言って、笑われてしまった。

肩を震わせながら楽しそうに笑う姿に、余計に恥ずかしくなる。

もしかして、からかわれた?

顔が熱くなる。

耳まで熱くなっている気がする。


こう見えて、前世(?)では、働く女子だったんだぞ?

社会人としてそれなりに経験も積んでいたはずなのに、どうして恋愛方面になるとこうも弱いのか。

実年齢的にはアルフレートのほうが年下のハズなのに、なんかくやしい。

「アルフレート様っ!」

頬を膨らませてそう言うと、アルフレートが私の手をとった。

大きな手に包まれた指先がじんわり熱を帯びる。


「冗談、だけど。冗談じゃないよ。本当は、このまま泊まりたいけど。おとなしく帰るから」

そう言われて、顔が熱くなった。

恋人のフリをしている相手に、ここまで言えるとは。

私の推しは、意外とチャラいのか?

真面目なキャラだったと思うんだけどな。

一途で、ずっとエレオノーラのことを考えていて。

ときどき歯の浮くようなくっさいセリフを言うんだけど、そこがいい。

乙女ゲームだもん。

そういうくさいセリフがいくつもあるからいいんじゃん。


脳裏に前世でプレイしていたゲームの記憶がよみがえる。

イベントスチルび甘いセリフの数々に悶えていた自分を思い出して、なんとも言えない気持ちになった。

じゃなくて。

「泊まるなんて言ったら、うちの両親がひっくり返って驚きますから。本当におとなしく帰ってください」

そう言ってあしらった。

できるだけ平静を装ったつもりだったけれど、声は少し上ずっていたかもしれない。

アルフレートがクスクスと笑っている。


その余裕そうな様子が少し悔しい。

「じゃあ、続きはまた明日」

そう言われて、ちょっとドキッとした。

また明日…も、会えるんだ。

当たり前のような一言なのに、不思議と胸が温かくなる。


「ええ、また明日」

自然と笑みがこぼれた。

玄関まで見送ると、夜風がひんやりと頬を撫でた。

門へ向かうアルフレートの背中を見送りながら、なんとなく名残惜しい気持ちになる。

彼が振り返って軽く手を上げる。

私も小さく手を振り返した。


アルフレートを見送ると、両親にアルフレートとどういう関係なのかをすごく聞かれた。

リビングに入る前から、質問責めだ。

どうって。

ただ、恋人のフリをしている私の推しですが。

そう、それ以上でも、それ以下でもない。


ただの、復讐を手助けしているだけの人。

…そのはずなのに。

なぜか胸の奥が少しだけ落ち着かなくて、私は誤魔化すように視線を逸らした。

「まあ、あれだ。話せるときがきたら、ちゃんと教えておくれ」

父がそう言って私の頭を撫でた。


前回のときもそうだが。

私がこの異世界で好き勝手に動けたのは、今も動けているのは、この寛大な心を持った両親のおかげだ。

本当にありがたい。

だから本当は、あまり心配をかけたくない。

でも今は、推しの復讐、そして、オルブライトおじさんの救出が急務だ。

「はい、お父様。もう少ししたら、ちゃんとお話しますね」

そう伝えるしかなかった。

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