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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第5章:中堅

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78/80

78話:第16層

 14層のモンスターは、どちらも木の上を駆ける事が特徴だ。

 だから、どちらも体重が比較的軽めになっている。

 そして、この体重が軽いという事は俺にとってはとてもありがたい。


 なぜなら、軽いという事はそれだけAbsorbスキルで上限に到達するまでに必要な食べる量が少なくて済むからだ。

 そして、1日の食べる量を瀬奈と母に制限されているから、必然的に上限に到達するまでの日数も短くなる事に繋がる。

 その結果、約3週間でフォレストランナーが吸収上限に到達し、5月に入ってからはラックマの吸収へと移行していた。


 12層のクラッグベアは320kgだったのに対して、14層のラックマは210kg。65%の量・期間で済むのはとても嬉しい。まぁそれでも5週間はかかる予定なんだけどな。

 肉の質は非常に良く、瀬奈の調理のおかげでいくらでも食べたいくらいに美味しい事だけが救いだ。





 ラックマを食べ始めて1週間後。

 ゴールデンウィークも終わり、かおりんが高校へ戻っていった久々のソロダンジョン。


 俺は、15層へと足を踏み入れた。

 14層から15層に進む事でモンスターは一段階強くなるが、こっちもフォレストランナーを上限まで吸収した事で強くなっている。

 ソロの時は木の上に登る必要は無いから、地上を走ってモンスターを探していく。


 フォレストランナーは落下攻撃を最小限のステップで回避しながらカウンターで倒し、ラックマは木の上へと戻ろうとする所を後ろから斬り裂く。

 1か月も戦い続けていれば、対処にも慣れるものだ。

 1階層進んでモンスターが多少強くなった所で、俺の敵ではなかった。15層のモンスターを問題なく倒せる事を確認できたので、肉を地上へと持ち帰って換金すると、少し早い昼食をとった。




 そしてやってきた16層。

 この階層も15層と同じく、平原は階段の近くにわずかに広がっているだけであり、その先には深いブナの森が広がっている。

 ただ、パッと見ただけでも15層との違いが分かる。それは、15層よりも木が細長いのだ。

 14・15層の木はとにかく縦にも横にも大きく、枝も200kg以上のモンスターが乗っても折れないような太いものだった。

 それに対して16層の木はどれも細い。階段近くから見ただけでも、森の奥の方まで視線が通るのだ。木と木の間隔はさほど変わらないが、枝が横には広がっていないため、空から差し込む光が遮られず、とても森の中が明るく開放的だった。


 一見すると、とても戦いやすそうな環境ではある。だが、その環境に応じてモンスターも変わる。

 15層のような樹上からの落下攻撃ができるような森ではない代わりに、16層のモンスターは純粋な地上戦に特化した形となる。

 出現するモンスターについての知識がある状態だから落ち着いて戦いに挑めるが、これが完全に情報の無い、未到達階層になると難易度は大きく跳ね上がる事だろうな。



 ゴォォォッ、と強い風が森の木々を揺らし、大きな音を階層中に響かせる中、俺は剣を引き抜き、右手でしっかりと握りしめる。もう頭上を警戒する必要は無い。前と左右だけに視線を飛ばしながら、森の中へと進んでいく。



 ザザーッ、ザザーッ、ガサガサッ、コンッ


 木の葉が強風に揺られる音に紛れて、それとは違う音が耳に届いた。

 このあたりにいるはずのモンスターの動きの情報から推測すると、木々の間を駆けながら木の幹に掠ったように感じる。

 両足で地面を踏み締め、すぐに動ける体勢で待ち構えると、森の奥から一頭の馬が飛び出してきた。


 俺はいつものように、剣の腹をモンスターに向けて、その体当たりを受け止めようとする。


 ドムンッ! ゴンッ!


 俺はモンスターを受け止めた。

 だが、音が森へと響き渡り、衝撃が俺の両腕へと伝わってきたのは、モンスターが剣にぶつかる直前だった。

 これが風の鎧か。


 このモンスターはウインドホース。

 自身の身体の周囲に風の鎧をまとい、突進攻撃をするのが特徴の馬型モンスターだ。さっき俺の剣に最初に衝突したのはその鎧であり、続いて肉体がぶつかってきたのだ。

 この風の鎧がこのモンスターの武器であり、防具である。


 俺は剣を斜めにずらす事で受け止めた突進を左へと受け流す。そして、手首をひねって刃を向けるとウインドホースの側面を狙って剣を振り抜いた。


 プシュッ


 剣はウインドホースの胴体を斬り裂いたが、手応えは軽く、どう考えても傷は浅い。

 普段と同じ感覚で振り抜いたのだが、肉体に到達する前に風の鎧によって剣が押し戻されて、深くまで刃が届かなかったのだ。

 これが防具としての風の鎧の効果だ。

 今の攻撃は様子見を兼ねていたため全力ではなかったが、かおりんの鉄球だったら当たる前に止まるか、横に逸らされてしまうだろう。

 マッドホースの泥に似ているが、それよりも広範囲であり、効果も強く感じる。

 だが、全力でない攻撃でもしっかりと当たったなら、より深く斬り裂けるように力を込めれば問題ないだろう。


 一太刀を浴びせられたウインドホースは、俺から離れるように駆けていくと、反転しながら助走をつけて、スピードが乗った所で再び突進を仕掛けてきた。

 俺はこれを受け止めず、右斜め前へと鋭く踏み込み、すれ違いざまに剣を顔目がけて叩きつけた。


 グガァンッ!


 風の鎧が俺へとぶつかり、それによって後ろへと弾け飛びそうになる。

 だが、それを予測していた俺は、左足で踏ん張り、剣を止めない。


 ブシュッ!


 剣にも風の鎧がぶつかり、若干勢いは軽減されたが、剣先は頭部をしっかりと捉えていた。頭部から斬り進んでいく間も、いつも以上に抵抗を感じる。

 頭部から首、胴体へと刃は進んでいき、両断はできなかったが、致命傷となる十分な深さを斬り裂いた。

 ウインドホースは俺の横を通り過ぎると同時に、そのまま地面へと滑り込んでいく。

 こいつはちょっと面倒なモンスターだな。少なくとも風の鎧を纏っている間にかおりんがダメージを与えるのは難しい。倒れ込んだ現状でも風の鎧は無くなっておらず、ウインドホースから一定の距離の所に空気の膜のようなものが展開されていて、倒れ込んだ時に巻き上がった土煙がそれに防がれている。


 近づいて首へと剣を振り下ろしたが、その間も風の鎧は俺の攻撃に抵抗をし続けた。それでも、さすがに首が落ちるとすぐに消え去った。

 死ぬ間際までこれだけの威力を維持されるとなると、かおりんだと厳しいかもしれないし、瀬奈と悠斗は論外だ。

 やっぱり16層での合宿は無理そうだな。




 手早く血抜きをして地上へと売りに行った後、いつものようにウインドホースのハツ刺しを食べた俺は、再び16層へと戻ってきた。

 ハツ刺しは、深い階層にいるモンスターほど旨味が強く、弾力も上がっている。最下層まで進んでいったら、最後は鋼鉄のような硬さになるんじゃないかという一抹の不安はあるが、気にせずにモンスター討伐へと向かう。


 さっきは馬型モンスターのウインドホースを倒したので、次は熊型モンスターだ。

 こっちもかおりんや合宿向けじゃないと思うんだが、実際に戦って確かめるしかない。


 階段を離れてから、左側の森へと足を踏み入れる。

 森自体は右側のウインドホースがいるエリアと変わらない。木の幹で視界は遮られるが、木々が直線上に重なっていなければ、かなり遠くまで見通せる。

 次の熊型モンスターもこっちが先に見つけられるといいんだが、無理だろうな。

 首をキョロキョロと動かしながら、モンスターの気配を探る。風が吹き荒れている16層では、14層と比べて音での探索は難しい。

 モンスターの特徴も頭に入れているので、俺は両手で剣を持ち、顔の前で中段の位置に構えながら進んでいく。


 ヒュンッ、ヒュンッ


 鋭く空気を裂く高音が微かに聞こえてきた。

 ようやくターゲットが近づいてきたようだ。音が聞こえた方向に剣を構え、木の幹に隠れながら進んでいく。

 空気を裂く音が徐々に近づいてくる。確実にこっちに気づいて、攻撃を仕掛けてきているな。


 ここにいるモンスターはウインドベア。

 前足を振るうことでかまいたちを発生させる、遠距離からの斬撃を得意とする熊だ。

 このかまいたちが本当に純粋なかまいたちなのか、風魔法で作られたウインドカッター的なものなのかは分かっていない。だが、前足を振るっている事からかまいたちだと考えられており、ダンジョン協会の資料にもかまいたちと記載されている。

 ウインドベアの特徴であり、最大の強みはこのかまいたちである。威力自体は適正レベルの冒険者なら片手で持った剣で防げる程度であるが、鋭さは魔導鋼の剣に引けを取らない。そして、攻撃がほとんど見えない事が厄介だと言われている。

 だが、魔導鋼の剣や防具で守っていれば問題ない。そして、一切見えないわけではなく、この環境も上手く使えば、かまいたちをほとんど受ける事も無い。


 俺は剣を中段に構えたまま、木の幹に隠れて耳を澄ませる。かまいたちの音から方向と木の幹を叩いている高さを確認した俺は、木の幹から離れる。

 そして、タイミングを見計らって木の幹から飛び出した。

 飛び出した俺は、その先にある別の木の幹の影へと再び身を隠す。タイミングが良かったので、今回はかまいたちを受ける事は無かった。

 そして、先ほど隠れていた木の幹を確認する。そこにはいくつもの切り傷が刻まれていた。あの高さで、あの角度で飛んできているんだな。


 切り傷の角度を確認した俺は、再び木の幹から飛び出した。今度は遮蔽物に頼るだけの移動ではない。剣を僅かに傾け、繰り出されていたかまいたちに対して直角に交わるように剣を構える。


 キィンッ!


 剣に軽い衝撃が伝わり、高い音が響く。これなら問題ない。かまいたち自体も少しだけだが見えた。空気が揺らいでいるように見えるとは聞いていたが、モヤっとしたものが飛んでいた。

 再び木の幹に隠れて、少しずつ近づいていく。

 俺が近づくのに合わせて、ウインドベアも下がっているようだが、俺が近づく方が早い。こいつはそこまで動きが素早くないのが救いだ。これで素早くて、どんどん下がっていくようなモンスターだったらヤバかっただろう。


 俺は木の幹に隠れる頻度を下げて、一気にウインドベアに接近した。そしてかまいたちを放つために振るわれた腕へと、剣を叩きつけた。


 ガギイィィンッ!


 かまいたちが特徴の遠距離型のモンスターではあるが、16層の熊型モンスターに相応しい力強さを持っている。

 それでもAbsorbスキルによる強化を重ねている俺の敵ではない。力比べで完全に押し切られたウインドベアの腕は後ろへと弾かれた。

 その隙を逃さず、俺はさらに近づき、弾かれた反動で無防備に前に突き出された反対の腕へと、切り返した剣で流れるように斬りかかった。


 ズジュゥッ!


 振り上げた刃はウインドベアの手首を両断した。そのまま脇を通り過ぎ、背中へと剣を振り下ろした。

 大きな雄叫びをあげて痛そうなウインドベアへと、間髪入れずにラッシュを叩き込んでいく。痛みと出血に耐えきれず、前へゆっくりと倒れていった。

 動きが止まった事を確認してから首を落として、無事に16層のモンスターも危なげなく倒せる事が確信できた。



 まぁこのかまいたちの中でかおりんに鉄球を投げさせるのは危険だから、かおりんは連れてくるのは無しだな。

 合宿の事も考えると、早めに18層に進んで挑戦しておきたい所だ。


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