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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第5章:中堅

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71話:第12層の熊

 かおりんと第12層へ進出した週末が終わり、いつも通り月曜日は週一の休暇日。

 その日の朝に、ボルダーグラップラーの吸収が上限に到達した。第10層のモンスターを食べ始めてから8週間で到達できたか。

 ようやくだな。マウンテンスタリオンは土曜日に持ち帰ってきた分がたっぷりあるから、毎週末にかおりんの力を借りて持ち帰ってくれば、あと3週間ちょっとで上限に到達するはずだ。


 ただ、問題はもう1体の方なんだよな。マウンテンスタリオンは崖を駆け上るために身体はかなり軽量だったけど、あいつは情報通りなら重すぎるんだよな……倍以上の重さってやめて欲しい。吸収上限まで一体何日かかるんだろうか。

 まぁ文句を言っても仕方ないし、明日は実際の重さと強さを確認しに行くか。



◇◇◇



 翌日、1人でやってきた第12層。いつもの真正面の渓谷にはマウンテンスタリオンしかいないから、そことは別の渓谷へ向かう。どっちが生息しているか看板でも出しておいてくれないかな。



 真正面から右隣の渓谷、マウンテンスタリオン。

 もう1つ右隣の渓谷、マウンテンスタリオン。

 さらにもう1つ右隣の渓谷、いた!

 マウンテンスタリオンを警戒して、上も見ないといけなかったが、ようやく見つけた。


 前方に広がる渓谷。谷の左右にそびえ立つ岩場は、左右で大きな違いが無いのが特徴だ。

 その中で、明らかに左側の岩場が大きい。こういう所にいるという情報通り、左側の岩場をよく見ると若干岩のゴツゴツ感が異なる部分がある。生物的な丸みのある感じもする。

 確認のため、近くに落ちている大きめの石を投げつけた。


 カーン


 高い音を立てて岩場にぶつかった。反応が無いな、外れだったか。


 ズ、ズズ……


 そう思っていると、岩がゆっくりと起き上がった。

 立ち上がったのは、体長1.8mと俺より大きくなった第12層の動く防壁、クラッグベアだ。

 その背中には、重そうな岩石の装甲が張り付いている。ボルダーグラップラーが岩を投げる熊なら、こいつは自らが岩となった熊だ。

 飛騨ダンジョンで戦ったロックバイソンとロックボアをかなり強くしたモンスターって感じだな。纏っている岩石が分厚い。


 グルアァァァァァッ!


 地鳴りのような咆哮。奴は丸太のような腕を振り回して、突進してきた。

 俺は剣を鞘から取り出さずに突進を右へと避け、すれ違いざまに剣を叩きつけた。 


 ガキィィンッ!


 硬いな。そんな弱く叩きつけたわけじゃないが、返ってきたのは硬質な金属音と、痺れるような反動だった。

 クラッグベアはこの硬さが最大の特徴だ。攻防一体。あの鎧を打ち壊さないといけない。

 僅かに装甲が砕けたが、この調子だと日が暮れてしまう。叩きつけじゃダメか。それなら。


 俺はUターンをして再度こちらへ突進してくるクラッグベアを再び躱す。

 ただ、方向はいつもと違う。上だ。

 高く跳び上がり、岩石の装甲へと着地する。そしてすぐに剣を逆手に持ち、真下に全力で突き刺す。

 線での攻撃がダメなら点で攻撃するまでだ。


 ゴォォォォンッ!


 衝撃波が渓谷を駆け抜けた。

 一点に加わった超質量により、クラッグベアの背中の岩石が耐えきれず、クモの巣状の亀裂が走り、次の瞬間には爆発するように四散した。

 装甲を突き破った剣は、そのまま奴の脊椎を貫通した。

 クラッグベアの巨体はそのまま岩場をヘッドスライディングしていき、俺はすぐに飛び降りた。奴はその先の岩場に頭から激突し、ピクリともしない様子を見て、ゆっくりと首を斬り落とした。

 首を落とすと岩石の装甲はガラガラと音を立てて崩れ落ちた。



 んー、硬かったな。次は突きじゃなくて、斬れるか試してみるか。

 岩石の装甲が落ちても、重いな。


 ジャイアントスイングをしてもぶつからない場所まで移動してから血抜きをして、内臓を取り出す。

 これがクラッグベアの心臓か。身体の大きさに比例して大きい。こちらはマウンテンスタリオンとは対照的に、赤黒いほどに濃い色をしている。

 いつも通り、ハツ刺しでいただく。

 っ! 奥歯で噛みしめると、ザクッ、ザクッという力強い食感が出迎える。その後に濃厚な肉の旨味が濁流のように押し寄せてくる。

 旨いな。食感も味も、元々の巨体に似つかわしくヘビー級だ。




 倒したクラッグベアの肉は何とか持ち運んで協会に売ってきた。

 解体前で200kg超えはなんとか背負って運べるレベルだった。Absorbの強化もかなり進んできたな。





「あれ、瀬奈も今帰りか」


「祐也も今帰りなんだ。今日は肉無しだね」


「まだまだマウンテンスタリオンがあったよな。ってか、持って帰ってきても冷凍庫に入らないだろ」


「そうなんだよねー。もっと沢山料理したいのに、食べられないからね」


「0.5kgくらいなら増やしてもいけるぞ」


「栄養バランスを考えてダメですー。お母さんも許さないだろうし」


 なんでそこまで厳格なんだよ。


「今の冷凍庫ってどんだけ入るんだ?」


「今のは……マウンテンスタリオン1体で8割位って感じかな?」


「そっか。次のクラッグベアはその倍の大きさだから入らないな。

 うーん。もっと大きいのを買った方がいいかな。金は俺が出すし」


「本当!? お母さんに相談するからね!?」


「いいぞ。ただ、そんな大きな冷凍庫とかあるのか? 業務用とかになるのか?」


「業務用だねー。どこのメーカーのにしようかな。

 あれがあれば、もっと熟成させたり、部位ごとにストックしたりできるなー。ワクワクするね!」

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