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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第5章:中堅

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69話:テロ組織

 こちらに歩いてくる3人組。さっきの会話からして、まともな人間じゃないな。


「何か用ですか?」


「用はあるよ。君、冒険者でしょ?」


「そりゃダンジョンにいますからね」


「どうして冒険者になったんだ?」


「んー、美味しい肉が食べたいってのと、下層の誰も見たことがない景色を見たいからですね」


「じゃあ20層とか最前線を目指してるってわけだな? ダンジョンの攻略とかも狙ってるのか?」


「まぁ結果的にはそうなるかもですね」


「なるほどねー。じゃあここで止めるしかないね」

「だねー」

「己の不運を恨むんだな」


「あんたらってあれか?

 ダンジョンを攻略するな、そのまま残せって言ってる『ワクチン』って連中か?」


「おぉー、よく知ってるじゃねえか。そうだ。俺たちはワクチンの日本支部メンバーだ」

「Vigilante Alliance for Checking Conquest and Isolating Natural Environment、攻略阻止および自然環境隔離のための自警同盟ってのが正式名称だが、まぁワクチン(vaccine)としか呼ばれないな」

「名前長いからな」

「ダンジョンが出現する前の地球は地震や火山活動が多くて、温暖化も進んでいた。これは地球に溜まった過剰なエネルギーによって引き起こされていたんだ。

 それがダンジョン出現後は沈静化し、温暖化も止まって気温が下がりだした。つまり、地球が自らの命を脅かす過剰なエネルギーを消化するために、ダンジョンという神聖な消化器官を生み出したのだ。

 ダンジョンを攻略することは、この器官を停止させることであり、止まったら再び地球は過剰なエネルギーによって大爆発を起こして、世界が沈没し、人類は滅亡してしまうんだ」


 なんかそういうことを主張しているテロ組織があるっていうのは聞いたことがあったが、まさかそれがこんな所にいるなんてな。


「そのワクチンが俺に何の用だ? 話が長いから、もう要点だけにしてくれ」


「さっきの問答で分かったが、お前はダンジョンを攻略しようとしているな。

 それならここで止めるしかない」


「止めるってどうやって?」


「殺す」


「うわぁー、物騒」


「我らの地球の崇高な目的のため、冒険者の1人や2人、死んでも構わん」


「そう言って何人殺してきたんだか。ってかなんでダンジョンで殺すの? 街中で殺せばいいじゃん」


「ダンジョンという地球の器官に入る前のウイルスまで対処するのは手が足りないからな。

 悪さをしようと入った奴だけをターゲットにしている」


 なんかこの人たち、めっちゃ喋るな。気になるから色々と聞き出すか。


「それなら第1層とかでやればいいんじゃない? なんで第12層にいるの?」


「第1層では単純にレベルアップのために入る学生も多いからな。

 そのような者は放っておいても攻略されることはない」


「じゃあ第12層でやっている理由は?」


「中堅冒険者になれば、その先で攻略に動く可能性があるからだ。

 ここなら生えだした芽を摘むことがまだ間に合うからな」


「中堅冒険者っていうなら、第10層じゃないのか?」


「第10層はモンスターが厄介だ。我らの目的のためには、必要以上にモンスターを狩るべきではない」


「でも、ここにいるってことはお前ら、それなりのレベルなんだろ? 必要以上にモンスターを狩ってきたんだろ?」


「我らはワクチン。適度にモンスターを狩ることで、ダンジョンに侵入者への対応をする練習をさせるものである」


「じゃあ、お前らが今からやろうとしていることはワクチンじゃなくて抗生物質じゃないのか? 組織名、抗生物質に改名した方がいいんじゃない?」


 それか抗ウイルス薬とか。

 俺の皮肉に、男の頬がピクリと動いた。


「若造が……いいか、若いお前は知らないだろうが、ガン治療には治療ワクチンというのがあるんだよ。ガン細胞を免疫に攻撃させるためのワクチンっていうのがな。

 冒険者という名の増殖するガン細胞を、ダンジョンと共に排除するのが我らの使命だ」


 へぇー、そんなワクチンあるんだ。なんでこいつら、そんなこと知ってるんだろう……知識だけは一丁前だな。


「じゃあなんで最前線に行かない?

 今第12層にいるような冒険者より、今第20層とかにいる冒険者の方が攻略に近いぞ。中国に行ったらどうなんだ?」


「中国にも同志はいるから、彼らがなんとかするだろう。まぁ、20層まで行ったら、我らの手には負えないから放置するしかないがな」


「抗生物質が効かないってか。じゃあダンジョンが免疫力で倒してくれるのを祈るしかないな。使えないワクチンだ」


「それでも目の前のお前を殺せば、ダンジョンの負担が減るというものだ。そろそろいいだろう、大人しく死ね」


「まぁ待て、最後に1つ聞きたい。お前らの組織はそんなに大きな組織なのか? 他にも日本のダンジョンにいるのか?」


「まぁ冥土の土産に教えてやろう。奥羽ダンジョンにいるのは……」


 正直これ以上は聞いてもな。興味ないし、正面から倒せば良いだけだ。

 3人で歩いてくる時の様子はしっかりと観察していたが、とても強そうには見えなかった。立ち姿、重心の置き方、武器の構え。油断もしまくりで、3人でようやく第12層のモンスターを倒せる程度という印象だった。

 第12層にいるのも、ここら辺まで来れば結構人も減ってくるからだろうし、まぁ所詮その程度だろう。



 ということで、話している途中で、一歩踏み出した。剣道部で鍛えた踏み込みはAbsorbスキルによる強化を経て、一般人には反応できない速度に達する。そして、抜刀と同時に放つ水平の居合。

 こいつらも俺と同じで魔導鋼のプロテクターを装着している。でもフルプレートアーマーじゃない。所々に守られていない箇所がある。その1つである膝を剣は斬り裂いた。


「ぐわぁ!」

「貴様!」

「許さねぇ!」


 元々俺を殺そうとしてただろうが。人を斬らば、我が身も斬られると思え、って言うだろ。殺ろうとするなら殺られる覚悟を持ってろ。自分勝手というか、さすがテロ組織だな。


 1人がほぼ戦闘不能になり、残りは2人。

 武器は槍とハルバード。ハルバードってそれどこで売ってるんだよ。協会の直営店には無かったぞ。

 リーチは向こうの方が有利だが、2人の動きを見れば素人丸出しって感じだ。


 2人が同時にこちらを突き刺す動きをしてきた。冷静に動きを見切り、わずかに早く届きそうな右から来た槍を左へ払う。払われた槍はハルバードにぶつかり、2人の動きが止まる。

 こうなれば余裕だな。大きく右に踏み込み、槍使いの脇を下から斬り上げる。


「あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!」


 そのまま後ろへ回り込み、動揺している3人目の背中へ一太刀。


「があ゙ぁ゙……」


 さて、このままでも死にそうだが、テロ組織は確実に死んでもらわないとな。

 2人目、3人目の足も膝で切り落とす。これで這って逃げることもできない。

 あとは消化器官に任せるか。マウンテンスタリオンを探してこよう。


 あー、かおりんがいない時で良かったわ。今後もかおりんを連れて来る前にしっかりと下見するようにしなきゃな。



◇◇◇




『あの子、諦めずに強くなってるわね』


『そのようだな。理に沿った使い方をしている。我らを長く楽しませてくれそうだ』


『さっき、例の集団と戦ってたわよ。何か話していたみたいだけど、その後は余裕で倒してたわ』


『例の集団か。いいところまでいっていたが、あれでは駄目だな』


『そうよね。最初は使えるかと思ってたけど、人間同士で殺し合うのは許されないわ』


『一番大切な奥意には届いてないのがな。分析力は悪くないが、そこに宿る意志を想像できぬのが人間の限界か』


『人間は陰謀論が好きって言うし、簡単なそっちに流れちゃったんでしょうね』


『陰謀論? なんだそれは?』


『知らないの? それはね……』


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