67話:親友のレベル上げ
「おはよっす」
「おはよう、かおりん」
「おはよう、香織ちゃん」
父と決めた年末年始休暇が終わった1月4日。
初詣の時に決めた通り、かおりんだけじゃなくて今日は悠斗も一緒だ。3人でダンジョンに入るのは、夏の瀬奈との合宿以来だな。
「じゃあ入ろうか」
「はいっす。そういえば、私は今日何すればいいっすか?」
「今日はひたすらに倒したモンスターを運んで、持ちきれなくなるタイミングで売りに行って欲しい。
俺と悠斗はレベル上げだけに注力したいから、サポートというか稼ぎの方を任せたい」
「了解っす」
ダンジョンに入って、どんどん下へと進んでいく。
「おい、祐也。どこまで行くんだ?
俺のレベル6だから、あまり下に行ってもレベル上げられないぞ?」
「大丈夫、大丈夫。そこら辺もちゃんと考えてるから。
あと、この間も伝えたけど、今日のことは絶対に誰にも言うなよ」
「大丈夫じゃないっすか? 私も言いたくないっすから」
「かおりんがそう言うなら問題ないか」
「言いたくないって何だよ。何やらせる気だ?」
「何って、モンスターに一撃入れてもらうだけだが?」
「本当に?」
「まぁすぐに分かるって」
「なーんか怪しい……」
怪しくは無いんだが、体験する前に説明しても分からないだろうからな。
そうしてやってきました、第8層。
「おい、第8層まで来ちまったぞ。大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。ハヤテホースの突進を俺が受け止めるから、合図したらそのハンマーで一発ぶん殴れ。そんで殴ったらすぐにかおりんの所まで戻ればいい」
「それだけ? それじゃあ貢献度が低くて、大した経験値にならないんじゃ」
「一度やれば分かるっすよ。さぁさぁ行くっすよ!」
「まぁ香織ちゃんが言うならそうなのか」
「おい。なんでかおりんは信じて、俺は信じないんだ」
「だって祐也だからな。冗談だって言うだろ」
ダンジョンでは冗談は言わん。さすがに危険だろ。
ドドドドッ
「来たな。じゃあ受け止めたら、一発殴れよ」
「わ、分かってる」
うーん。緊張しているな。こう考えると、全く緊張してなかった瀬奈ってやっぱりおかしいんじゃないか? それとも俺への絶対的な信頼があったのか?
……それはないな。
ハヤテホースの姿はすぐに肉眼で見える距離まで迫ってきた。なんか久々だな。
ハヤテホースの方へゆっくり歩いて向かっていき、久々となる突進を受け止めた。
「いいぞー」
「ほ、本当に大丈夫なんだろうな?」
「大丈夫だから早くしろ。時間がもったいない」
恐る恐るハヤテホースに近づいていき、悠斗がようやくハヤテホースに接近した。
「ほれ、一発ドカーンといけ、ドカーンと」
「やるっすー」
「ちゃんと抑えてろよ! うりゃあ!」
悠斗の仕事道具でもある鍛冶用のハンマーがハヤテホースの腹に叩きつけられた。
まぁこれで大丈夫だろう。
ダメだったら第4層あたりで少しレベル上げなきゃいけないけど、瀬奈でも大丈夫だったんだから問題ないだろ。
いつものように左下に受け流して、首投げからの喉元への一突きで仕留めた。
「かおりん、血抜き頼んだぞ。
それで、どうだ悠斗。レベルアップしたか?」
「は……はあぁぁぁ!? なんで!?
なんであれでレベル上がった!? しかも3レベルも上がった!?
おい、どういうことだよ!? どうなってるんだよ!?
何やらせたんだよ!? どんな禁じ手使ったんだ!?」
「禁じ手ってお前。普通に殴っただけなのはお前が一番よく分かってるだろ」
「そうだけど、そうだけど! ちょっと説明しろ!」
「解体したり、モンスター探したりしながら説明するから落ち着け」
「血抜き終わったっすよー」
「おう。内臓取り出すか。じゃあ簡単に説明していくぞ」
その後もモンスターを倒し続けて、4体倒した所でかおりんが持てる量が一杯になった。
「じゃあ売ってくるっす」
「頼んだぞ。飯食ったら1体倒して、俺がそれを売ってくるから、その間にかおりんは昼休憩しておいてくれ」
「りょーかいっす」
ハヤテホース4体。あれだけで16万くらい、税金取られるから12万ちょっとか。
「ほ、本当に香織ちゃんがあれを持ってる……」
「運搬スキルだって言っただろ」
「いや、でも実際に見るのは違うだろ……」
確か瀬奈もかおりんの運搬スキルというか、モンスターを軽々と持っている姿に驚いていたな。
「さて、飯にするか。瀬奈が悠斗の分も作ってくれたからな。はいこれ」
「おお、瀬奈の弁当か。かおりんの分は?」
「さっき渡しておいたから大丈夫だ」
「じゃあ、いただきます」
「いただきます。それで、レベリングの理由は理解できたか」
「まぁな。それにしても午前中で7レベルも上がるのかよ……夏休みの合宿は何だったんだよ」
「俺にしかできない裏技みたいなものだからな。誰にも言いたくないってかおりんが言ってたのが分かっただろ?」
「そうだな。俺たちだけの秘密にしておきたいよな」
「そういうことだ。午後もやればもう少しレベル上がるだろ。一気に上がるから、頑張ってその力に慣れろよ。瀬奈も通った道だ」
「瀬奈の体力の秘密がこれだったとはな。学校の連中にバレないようにしなきゃな」
「部活でバレるんじゃないか? まぁバレても、頑張って上げたってことにすればいいだろ。
冬休みに知り合いの冒険者と合宿したってことにして」
「まぁそれで誤魔化すか。急に強くなりすぎるのも考えものだな」
「上げるのやめるか?」
「ふっ、デメリットよりもメリットがデカすぎだ。こんなの、やめられないっての」
かおりん、瀬奈に続いて3人目か。
皆のレベリングのためにも、もっと先の階層でレベリングしやすい所を見つけないとな。
「それにしても、祐也のスキルってスゴイよな。モンスターを食べて強くなるなんて」
「本当にな。まぁこのスキルを獲得した代償がレベルが上がらない事なんだけどな」
「Absorbねぇ。まるで暴食だな」
「暴食?」
「7つの大罪にあるだろ、暴食。お前の食べっぷりはそんな感じがするだろ」
「あぁ、グラトニーか」
「なんで英語?」
「いや、暴食といえばグラトニーだろ?」
父の持ってる漫画に出てくるんだよな、錬金術のやつ。あいつも大食いだったな。そう考えると、確かにAbsorbスキルは暴食っぽいな。
午後も悠斗のレベリングを続けて、合計10体のハヤテホースを討伐した。
いつもより遅い時間まで続けてしまった。まぁ悠斗のレベリングのためだし、1日くらいならな。
「1日でレベル16か。まぁまぁ良かったんじゃないか」
「そうっすね。瀬奈ちゃんが6日間でレベル19っすからね」
「えっ! 瀬奈の方がまだ高いの? マジか……」
「瀬奈は6日間だからな。次は春休みにでもやるか」
「もっと早くやってくれないか?」
「ダメっす。土日は私とっすから」
「そうだぞ。それに上がったレベルでの鍛冶に慣れなきゃダメだろ。
技術面の向上も必要だろうし、レベリングも第8層じゃペースが落ちてくるだろうから、もっと先にいい場所を見つけなきゃだしな」
「どこか狙ってる所があるっすか?」
「協会にある情報通りなら、12層は良さそうなんだよな。あとは18層か」
「春休みまでなら12層は行けそうっすね。18層はあと何年かかるか分からないっすけど」
「おい、18層って確か奥羽ダンジョンの最前線の一歩手前じゃなかったか?」
「そうだな。多分最前線の人は20層に挑戦中だし」
「それなのに、18層が良さそうってどういう神経してるんだよ」
「単純に遠距離攻撃とか不意打ちとか、そういうのをやってくるモンスターがいるかどうかで決めるとそうなるって話だ。
それがあると守らなきゃいけないからな。強くても分かりやすい近接戦闘の方がレベリングには良さそうなんだよ」
「なんかスゴイな、祐也」
「そうか?」
「中学の時の夢を語っていたお前が、実際にこうやって強くなってるのはスゴイよ」
「じゃあ悠斗も夢を実現してくれ。いい鍛冶師になって、いい武器防具を俺たちに作ってくれよ」
「オーダーメイドっすか! 憧れるっす!」
それにしてもいいパーティーになってきたんじゃないか?
戦闘担当俺、運搬担当かおりん、俺の強化担当(弁当担当)瀬奈、装備担当悠斗。
戦闘要員がもう1人か2人欲しいけど、今すぐ必要ってわけじゃないし、増えるとレベリング大変になるしな。
まぁいい人がたまたま見つかったら、くらいに思っておくか。




