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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第5章:中堅

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61話:瀬奈の料理とストライクホース

 北海道ダンジョンから帰ってきて丸2日は家でのんびり休んだ。

 疲れているとは感じてなかったが、風呂にゆっくり浸かり、ベッドで寝ると起きたのは翌日の昼前だった。

 2日間夜も昼もたっぷり寝たことで、疲れはちゃんと取れたと思う。



 2日目の昼寝から起きてリビングに向かう。もうすぐ夕食かな。


「あ、起きたね。さっき祐也が送ってくれた肉が届いたから、これ使って今日の夕食作るね」


 お、インパクトラムが届いたのか。

 羊肉で何作ってくれるのかな。北海道ダンジョンでは焼肉しか食べてないし。


「美味しいの楽しみにしてるぞ」


「もち! 新たな武器を手に入れた私の実力を披露するよ!」


 プレゼントした包丁とまな板で、一昨日からヤル気が高すぎる。

 まぁ美味しい料理を作ってくれるなら構わないけど。



◇◇◇



 冷凍便で届いた北海道ダンジョンのモンスターの肉がキッチンを占拠していた。

 早く調理したい!

 新しい包丁とまな板を準備してっと。


 よし、始めよう!

 まずは時間がかかるスネ肉からね。インパクトラムのスネ肉に刃を入れる。多分この硬さじゃ普通の包丁じゃなかなか刃は入らなかっただろう。けど、新しい包丁は繊維を鮮やかに断ち切っていく。

 一口大に切った肉を焼き付け、たっぷりの赤ワインと香味野菜を入れて、圧力鍋で煮込み始める。

 これで後は放置。この硬い筋肉がトロトロに解ける頃には、最高の旨味に変わるはずだよ。


 次は肩肉と端材。これを全部ひき肉にしていく。

 脂身と赤身のバランスが良い部位を、リズミカルに叩いてミンチにしていく。

 フライパンで飴色に炒めた玉ねぎに、たっぷりのスパイスとひき肉を投入する。羊の脂ってスパイスと相性抜群なんだよね。あぁ、もういい匂いがしてきた。キッチンに立ち込める野性味溢れる香りと、クミンやコリアンダーの刺激的な香り。うーん、ご飯食べたくなってくる。


 最後はメインのロース。これは食べる直前に焼くから、今は特製のタレに漬け込むだけ。

 ロース肉の塊から、余分な筋を丁寧に取り除く。リンゴや玉ねぎをすり下ろした自家製タレに、厚切りにしたロースを浸していく。一緒に食べる玉ねぎも切っておいて、これで準備完了。



◇◇◇



 キッチンから漂う香りに耐えきれず、吸い寄せられるようにダイニングテーブルについた。

 目の前には、瀬奈が腕によりをかけたインパクトラム料理が並んでいく。


「お待たせ! インパクトラムを使った3品。

 赤ワイン煮込み、キーマカレー、ジンギスカンだよ」


 まずは、この香りを無視なんてできないからキーマカレーだ!

 スプーン一杯を口に運ぶ。

 ガツン! とくるクミンの刺激。それに負けない、粗挽きにされた羊肉の旨味が爆発した。そして、羊の脂とスパイスが相乗効果で高め合ってる。スパイスの香りが食欲を刺激して、スプーンが止まらない。


 次は、熱々の鉄板で焼き上げられた厚切りロースのジンギスカンだ。

 自家製タレにどっぷりと浸かった一枚を、豪快に頬張る。

 んっ! タレの甘辛さを突き破って、肉のしなやかな弾力と旨味が押し寄せてくる。ダンジョンで食べた焼肉も美味かったが、瀬奈のタレは肉の良さを最大限に引き出している感じがするな。

 一緒に焼かれた玉ねぎともやしも、溢れ出した羊の脂を吸って、これまた主役級の美味さだ。


 最後に、じっくりと煮込まれた赤ワイン煮込みに箸をつける。

 っ! 箸で触れた瞬間に分かる柔らかさ。口に入れると、ホロホロと雪のように解けていく。

 赤ワインの酸味と香味野菜の甘みが、羊肉の力強いコクをさらに奥深くさせている。舌の上で繊維がほどけるたびに、濃縮された旨味が胃に染み込んでいく。




「ふー、やっぱり料理されると一段と美味しいな」


「料理人が焼肉に負けるわけにはいかないよ」


「流石だよ。包丁はどうだ?」


「いいね。これが無かったら切るのにかかる時間が倍にはなってたよ」


「役に立ってるなら何よりだ」



◇◇◇



 2日間の休みが明けた金曜日。

 明日はかおりんと久々にダンジョンに潜るし、その後は夕食会がある。


 その前にソロで行くべきだろ、第10層。


 ということで朝から第10層へやってきた。

 前に来たのは大体3ヶ月前か。北海道ダンジョンでの成長を見せてやらないとな!



 2度目の渓谷。風が吹き抜けていく音だけが聞こえてくる。

 渓谷に入ると、俺の足音と蹴った石の転がる音がそこに加わった。

 前回は不安定な足場だと思ったが、北海道ダンジョンでの岩場での戦闘を繰り返してきたことで、この足場でも問題はない。滑りにくい分、こっちの方が楽である。



 ヒュッ!


 またあの空気を切り裂く音が響く。

 視界に飛んでくる石を確認しながら、避けることはせずに鞘に入れたままの剣を振り抜いた。石の芯を叩くと、明後日の方向へと飛んでいった。ナイスバッティング!

 俺が打ち返したのは見えているだろうが、そんなことは関係ないとばかりに、ストライクホースは次の弾丸を生成するために、蹄で岩盤を蹴りつけている。

 それをどんどん蹴り飛ばしてくるが、大きな岩は鞘のまま打ち返し、時折混ざる高速の石は防具の厚い部分で弾く。


 今の俺のステータスなら、この程度の石は余裕で打ち返せる。

 大きい岩だけでなく、小さい石であってもこの速度と見やすさなら対応するのは容易い。北海道ダンジョンでの見えない衝撃波や高速のウォータージェットの方が厄介だったんだよ。

 回避も混ぜながら軽快に岩場を進み、距離を近づけていく。


 間合いに入り、剣を振るおうとした瞬間。ストライクホースが軸足を固定し、目にも止まらぬ速さで後ろ蹴りを放った。

 前はこれで剣が壊されたんだよな。

 だが、今回は冷静に抜刀して剣を振り抜く。


 ガギィィィン!!

 凄まじい金属音が響き渡り、衝撃が腕を通して身体へ押し寄せた。それでも今回は少しも押されることはなかった。力でねじ伏せ、ストライクホースの強靭な蹴りを弾き返した。自慢の蹴りを弾かれたストライクホースは、大きく体勢を崩す。

 その隙を逃さず、俺は一歩踏み込み、無防備になった尻から下半身にかけて、体重を乗せた一撃を深く振り下ろす。断ち切られた衝撃と痛みに耐えかね、ストライクホースは前へつんのめる形で崩れ落ちた。


 地面に膝をつき、必死に立ち上がろうとする馬の首筋へ、淀みのない一閃。

 音もなく刃が通り抜け、ストライクホースの巨体は血を流すだけの肉の塊へと変わった。


 かつて武器を壊され、全く刃が立たなかった相手を圧倒した。

 北海道での遠征は、確実に俺を一段上の領域へと押し上げていた。


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