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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第4章:北海道遠征

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60話:最終試験2

 翌日。朝からインパクトラムを残さず食べてから、再び第10層にやってきた。

 これが今回の遠征で最後の戦いとなる。


 昨日とは逆方向に進み、海へとやってきた。

 海といっても真っ直ぐな海岸線ではなく、小さな入江がいくつもある。その入江は水深が膝上あたりまでの浅めで、そこは第6層に似ている。



 透明度の高い海水が、陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。

 静かだな。


 波音だけが響く中、俺は警戒しながら海辺へと近づく。

 一歩、水に足を踏み入れた、その瞬間。


 シュッ!!


 空気を切り裂く鋭い音と共に、何かが超高速で俺の顔面へと迫った。

 咄嗟に魔導鋼の籠手を顔の前に揃える。


 キィィィンッ!!


 籠手に強烈な衝撃が走った。

 アイアンオイスターのウォータージェットに似た、鋭く高圧のウォータージェット。アイアンオイスターよりも射程距離が長いのは厄介だな。


 ここに生息しているのは、体長1.2mを超える巨大なテッポウオのモンスター、アーチャーフィッシュだ。奴は海面から顔を出し、俺を確認するなり、次々と高圧のウォータージェットを射出してきた。


 キィンッ! キィンッ! キィンッ!


 籠手とプロテクターで防ぐが、同じ箇所に当たり続ければ魔導鋼すら貫通するらしい。長時間受けるわけにはいかない。

 すぐさま射線から身体をそらし、入江の海側へと駆けていく。


 アーチャーフィッシュはターゲットから一定の距離を保ちながら、攻撃してくる遠距離スナイパーみたいなモンスターだ。アイアンオイスターは固定砲台だったけど、こっちは遠距離移動砲台か。近づけば逃げられる。


 そんなモンスターにもちゃんと対抗策はある。そのために海側に向かっているのだ。

 アーチャーフィッシュは変わらずに攻撃を仕掛けてくる。でも大体の場所が分かれば避けられる。どうしても避けられない一撃だけを籠手で受け流して、目的地へと進んでいく。


 よし、ここだな。

 入江の海側の出口、最も狭くなった場所に到着した。俺はそこでピタリと足を止め、海面を見つめる。

 さぁ、ここからはこっちのターンだ。


 奴が次に海面から顔を出すであろう場所の辺りを確認しながら、一気に海へと駆け出した。


 バシャァァッ!


 膝上の水深が、俺の突撃を阻む。だが、今の俺の脚力にとって、この程度の水の抵抗はそこまで苦にならない。

 アーチャーフィッシュは、変わらずに攻撃してくるが、徐々に距離は近づいていく。これ以上は下がれないだろ。その先は陸だからな。

 籠手で防ぎ、ボクサーのスウェーのように上半身を上手く左右に動かして躱しながら、最短距離で突っ込む。


 そこだ!


 間合いに入った。海面から突き出たアーチャーフィッシュを目掛けて、剣を左から水平に一閃した。


 ガチィィィンッ!!


 手応えは金属。アーチャーフィッシュの背びれは硬く、上手くこちらに背を向けて、背びれで防がれたのだ。

 でも一撃目でダメなら二撃目だ。俺は逸らされた剣の勢いを殺さず、頭上で一回転させる。最短ルートで振り下ろされた二撃目が無防備なエラへと深く食い込んだ。


 ズシャァァッ!!


 深く斬り裂かれたエラから血が吹き出し、アーチャーフィッシュの巨体が、水しぶきと共に海面に沈んだ。

 鮮血が入江の透明な水を真っ赤に染めていく。


 ふぅ。遠距離攻撃タイプは厄介だな。でもこれで奥羽ダンジョンの第10層に向けた最終試験は終了だ。

 第10層の強さはダンジョン間であまり変わらないという話だし、奥羽ダンジョンでも問題ないくらいに強くなってる。


 さて、最後に少し食べていくか。

 1.2mの巨体からのぞく白身は、北海道ダンジョンに来てから初めての魚だ!まずは刺し身だ!

 いや、まずは下処理だな。



 インパクトラムと比べて、かなり軽い死体を持って砂浜近くまで移動する。

 まずは血抜きのために、エラの膜を切り裂いて海中に沈めた。エラからドクドクと血が抜けていくのを確認し、浸透圧を利用してさらに血を追い出すために、尾を掴んで水中で数回振った。

 よし、血が抜けて白っぽくなってきたな。戦う前に調べたけど、魚の血抜きはこうやるのか。


 血抜きを終えて、内臓を取り出していく。

 心臓は……あ、さっきの攻撃で少し傷付いてる。まぁ食べる分には問題ないだろう。

 じゃあ早速ハツから。一口サイズに切ってから何もつけず、そのまま口に放り込む。

 うん、コリッコリだ。インパクトラムはサクッとした肉の弾力だったけど、こっちは貝類に近いような弾けるような歯ごたえがある。噛むたびに淡白ながらも上品な甘みが広がるのもこれまでと違うな。やっぱり魚も食べたいよな。


 ハツを食べ終えたら本命の刺し身だ。

 入江の冷たい海水で洗いにしたそれは、一切の臭みがなく、身がキュッと締まっていた。

 醤油をちょっとつけて、口へ運ぶ。

 っ! 弾力が尋常じゃない。

 高圧のウォータージェットを放つための強靭な全身筋肉。それが刺身になることで、押し返してくるような強烈な食感に変わっている。だが、決して硬いわけじゃなく、噛みしめるほどに白身魚特有の繊細な旨味が溢れ出し、醤油の香ばしさと溶け合っていく。

 はぁー、こんなに美味しい魚なのにこの1体だけか。どうして8層までに魚はいないんだよ。貝とかカニとかも美味しかったけど、魚をもっと前半に配置してくれよ、北海道ダンジョン!

 運営がいたら今すぐ文句を言ってやりたいレベルだ。


 アーチャーフィッシュの刺し身でお腹いっぱいにしてから地上に戻った。

 インパクトラムの時と同じように残りは冷凍で家に送ってもらうようにして、ロッカールームのレンタルを終了して、瀬奈へのお土産を買って。




 長いことお世話になった北海道ダンジョンを後にする。

 外は薄っすらと雪が積もっているが、まぁ問題は無いだろう。


 帯広駅からは特急では無く、高速バスで帰ることにした。こっちの方が乗り換えなくて楽そうだったからな。

 新千歳空港に着いてからは行きと同じで仙台空港まで飛び、そこからは仙台空港アクセス線と地下鉄を乗り継ぎ、ようやく見慣れた我が家に辿り着いた。





「ただいまー」


「おかえりなさい。うん、元気そうね」


「そりゃ元気無かったら早く帰ってきてるよ。瀬奈は?」


「夕飯の準備中よ」


「今は手が離せなーい」


「お土産は後で渡すから、とりあえず荷物置いて着替えてくる」


 2階の自室に向かう。遠征に出掛けた時と変わらない状態のままの部屋に安心感を覚えた。

 2ヶ月か。やっぱり長いよな。

 でも第8層のモンスターは大きいから、これくらいの期間はどうしてもかかってしまう。もう少し短期間で、頻繁に他のダンジョンに行くべきなのか? うーん。




 着替え終えてリビングに向かう。


「はい、お土産。

 これが父さんの地酒とワイン。こっちが母さんのチーズと言われたお菓子系。

 瀬奈のモンスターの肉は少し待て」


「待てってどういうこと?」


「量が多すぎるから、冷凍で送ってもらってる。

 昨日送ったのが羊、今日昼前に送ったのがテッポウウオだ」


「数日待つのかー。私だけお預けかー」


「そう言うかと思って別のを買ってきた。ほれ」


「ん? 何?」


「開ければ分かる。前にねだられてたやつだ」


「ねだった? 何か言ったっけ?

 ……まな板! ってことはこっちは! 包丁!!」


「肉が第10層のモンスターだから、そろそろ包丁セットが必要かなって思ってな」


「ヤバッ! 早速使うね!」


 包装を勢いよく破って、まな板と包丁を取り出した。

 ……まずは眺めるのか。調理器具も好きだったのか?


「そういえば、かおりんにお土産買ってきた?」


「いや、買ってないが」


「え……それは……肉が届いたら週末に家に呼ぶね。せめてそれくらいはしないと」


「まずかった?」


「祐也、それは無いよ」


 やっぱりダメなのか。掲示板でも言われたけど、その時にはもう新千歳を飛び立った後だったんだよな。

 1人置いてけぼりにしちゃったもんな。

 何か用意しないとダメか。何にしよう……


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