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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第4章:北海道遠征

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59/61

59話:最終試験

 ヤバいな、もう11月じゃん。

 第8層の2体のモンスターを食べ始めてもうすぐ4週間。アイアンオイスターを2体食べて、ハンマークラブを1体食べる。そのペースで進めているからか、どちらもまだ上限に到達していない。

 アイアンオイスターなんて、もう200kg分くらい食べたはずだ。でもアイアンオイスターの元々の重さは殻を含めて110kg。あと20kgくらい食べたら上限に到達するはずなんだよな。




 そんなことを考えてから数日後。ようやくアイアンオイスターが上限に到達した。食べてきた量は220kgを数kg超えたくらいだろう。4日で朝昼おやつ晩の4食ずつ、合計16食で2体は必ず食べきってきた。

 なかなかハードなフードファイト生活ももうすぐ終わりかな。




 そこから更に1週間後。ハンマークラブも上限に到達した。こいつも元々の体重が殻を含めて130kgほどらしく、自分の計算でも260kgちょっとは食べているはずだ。


 レベル:2(上限到達)

 スキル:消化+、Absorb

 【Absorb上限到達】

 ・ハンマークラブ

 ・アイアンオイスター

 ・スピニーシュリンプ

 (他21種を表示▽)


 こうして上限に到達したモンスターを眺めると、俺がここまでどれだけ頑張って食べてきたかが目に見えていいな。

 さて、北海道ダンジョンに来て2ヶ月以上経ったし、そろそろ帰らないとな。雪で足止めとかされたくないし。


 でも、もうおやつ時だし、もう1日くらい北海道にいてもいいよな。

 『明日の夜には帰る。お土産の希望を今日中に教えて。できれば帯広か新千歳にありそうなやつで。予算は1人1万円まで』

 毎日生存確認のためにメッセージというか適当なスタンプを送っているが、今回はちゃんと文章で送った。

 あと、かおりんにも明日帰ることを伝えておいてと。



 さぁ! この北海道ダンジョンでの成果を確認するために。奥羽ダンジョンの第10層を確実に攻略するための最終試験。



 行こうか! 第10層!







 第9層は無視してやってきた第10層。

 景色は再び牧草地と海に変わった。ただ、その牧草地も今までとは異なり、秋の枯れ草が短く刈り取られたような風景が広がっており、隠れる場所がどこにもない。


 牧草地へと足を踏み入れて数分後。

 視線の先、数百m先に一頭の黒い影が見えた。


 体長1.6m。螺旋状の巨大な角を持つ黒い羊、インパクトラムだ。

 あちらもこちらの存在に気づいたらしい。羊は逃げる様子もなく、その場にどっしりと腰を据え、螺旋の角をこちらへ向けている。


 直後、ドンッと何かが俺の胸部を叩き、それによって俺の身体は後ろに倒れ込んだ。

 遅れて、ブワァァァッ! と地響きとは違う重い風圧の音が聞こえてきた。


 これがインパクトラムの衝撃波か。魔導鋼のプロテクターに、目には見えない空気の弾丸が着弾した。

 受けた衝撃はハヤテホースの衝撃よりは弱く、魔導鋼に傷一つついていない。だが、厄介なのはその不可視性と射程距離だ。


 一発目はプロテクターに当たったから良かったが、これが顔面だったらボクサーのように顔面から血を出していただろう。

 衝撃波は鋭さではなく、巨大な平手で突き飛ばされるような面の衝撃だから、当たったとしてもそれだけで死ぬような大怪我になることは無さそうだ。それでもこの衝撃波をかいくぐって接近するのは無理がある。だったら、受けて進むしかない。

 ボクシングのガードのように、籠手を顔の前に構えて顔面を守りながら、重心を低くして弾丸の雨の中を突き進む。

 不意打ちでは倒されたが、しっかりと地面を踏み締めながら進めばあの程度の衝撃に負けることはない。



 徐々に近づいていき、距離は残り10m。インパクトラムが焦ったように角を大きく振りかぶった。衝撃波は見えないが、衝撃波を出す動きは分かる。

 角が振り下ろされ、こちらに向いた直後。強く右へと踏み込んだ。


 衝撃は無い。上手く避けられたようだ。

 そのままインパクトラムに接近して、脇を通り過ぎるように剣で首元を薙ぎ払う。


 その瞬間。インパクトラムは頭を下げ、剣の下に角を沈み込ませた。

 剣は首には当たらず、角の上を滑るように上へ逸らされた。


 上手くやるものだ。でもまだ甘い。

 上へと逸らされた剣の勢いを殺さず、全身の筋肉に力を入れて、強引に軌道を真下へと変える。


 ズシャッ!


 背中を深く斬り裂いた剣に更に力を込めて、地面スレスレまで振り下ろす。

 左足を引きながら振り抜くと、大量の血を吹き出しながらインパクトラムが倒れていく。


 ズシーンという地響きが戦いの終わりを告げた。



 不可視の衝撃波っていうことは事前情報で知ってはいたけど、実際に体験すると焦るな。

 まぁ魔導鋼の防具と強化してきたステータスによる脚力があって、強引に接近できたから良かった。


 とりあえず、倒れたインパクトラムを階段まで持っていこう。隠れる場所がないこの広野で、この巨体を解体している間に衝撃波で狙い撃たれるのは嫌だからな。

 インパクトラムの両足を持ち、周囲の広大な牧草地を警戒しながら、階段近くの安全地帯まで引きずり運んだ。

 そういえば階段近くは安全地帯って言うけど、遠距離攻撃の場合はどうなんだろう。

 ちょっと不安に思ったので、血抜きと内臓の取り出しを終えたら第9層に戻ることにした。



 第9層に戻ってきたので、早速食べていこう。

 まずはハツを一口サイズに切り分けて口に放り込む。

 うん、このサクッとした歯ごたえはやっぱり階層を進むごとに強くなっていく。過去最強だな。そして、その噛んだ断面から、濃縮された鉄分と雑味のない澄んだ肉の甘みが広がる。臭みも全く無いし最高だな。


 1kgを超える大きさのハツを食べ終えたら、解体に移る。

 厚い毛皮を剥ぎ、現れたのは見事なまでの赤身肉だ。一口サイズに切り出し、熱した網の上に乗せた。


 ジィィィィッ!!


 網に触れた瞬間、脂が弾ける快音が響く。立ち上る香りも野性味溢れる羊肉特有の匂いであり、食欲をそそられる。

 表面をカリッと焼き、中はほんのり赤みが残るミディアムレア。そこに塩を振って一口。


 うん! うん! 赤身の旨味がとにかく濃い。それでいて脂身はしつこくなく、口の中でスッと溶けていく。ラムのしなやかさと、マトンの力強いコクを併せ持っている感じだな。



 食べながら解体を進めていくが、1体からだいたい80kgくらいの肉になるらしい。俺より重いじゃん。

 全部食べたいが、そんなことをしてたら帰れない。

 解体を終えて、今日と明日の朝に食べる分だけを切り分けたら、一旦地上に戻った。そして、いつでも開いているダンジョン協会の受付で、インパクトラムの肉を冷凍して自宅に送ってもらうように依頼した。

 これで残りは家で食べられる。次に北海道に来た時に少しでも早く上限に到達するといいな。

 瀬奈へのいいお土産にもなるし!


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