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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第4章:北海道遠征

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57話:北海道第8層

 北海道ダンジョンで遠征生活を始めてから1ヶ月ちょっとが経過していた。

 第6層に来てからもうすぐで3週間という所で、ようやくスピニーシュリンプの吸収が上限に到達したし、メドウラムは1週間前に終わっていたので、これでようやく第8層に行ける。

 第8層か。確実に第6層よりも時間がかかるだろうな。となると、ここから1ヶ月以上はかかるはずだ。もう10月。1ヶ月後には帯広でも初雪が降る頃だろうか。

 さすがに冬前には帰りたいから第8層までかな。もしくは第10層は倒すだけ倒して、家に持って帰るか。



 そんな先のことを考える前にまずは第8層だ。暮らし慣れた第6層を後にして、第7層はいつも通りスキップ、そして第8層に足を踏み入れた。

 そこは第6層の穏やかな砂浜とは正反対、切り立った岩礁が乱立する荒々しい海岸線だった。波が岩にぶつかり、真っ白な飛沫が舞い上がる。

 何か映画が始まりそうな光景だな。


 さて、景色を見るのは程々にして、モンスターを探しに行こう。この第8層にいるモンスターは共にこの岩礁に生息している。

 1つ目は最初のターゲットである、アイアンオイスター。直径1m、重さ110kgを超えるという巨大な牡蠣のモンスターだ。

 2つ目はハンマークラブ。体長1.5m、体重130kgという巨体のカニのモンスターだ。

 朝食までは最近ずっとスピニーシュリンプを食べていたのだ。

 エビの次はカニという甲殻類連続は無い! 今は牡蠣が食べたい!

 本当は魚が良かったんだけどな。


 アイアンオイスターに出会えることを願いながら、岩場を慎重に進んでいく。足元は濡れて滑りやすく、魔導鋼の靴が岩を叩く硬い音が周囲に響く。

 事前情報によれば、アイアンオイスターは岩場に同化して身を隠しているという。まぁ隠れているというよりは擬態に近いらしいが。


 ……あれか。


 波打ち際、海から突き出た岩影に不自然な銀色の光沢を放つ塊を見つけた。

 鈍い鉄のような色。表面はゴツゴツとしているが、どこか金属的な質感を備えているように見える。それが岩場に張り付くように存在していた。

 ちょっと様子を見ていたが動く気配はない。ただの大きな貝にしか見えないけど。


 その岩から10mほどの距離まで近づいた、その時だった。


 シュッ!!


 鋭い風を切る音と共に、白い線が迫りくる。

 っ! 直感的に左腕の籠手を顔の前に突き出した。


 バチィィィンッ!


 強い衝撃と共に激しい衝突音が響き、周囲に海水が弾け散った。衝撃で左腕が弾かれ、籠手が額を叩いた。

 左腕を確認するが魔導鋼の籠手に傷はない。だが、ジンジンと芯に響くような痺れが残っている。


 なるほど、これがウォータージェットか。


 アイアンオイスターは、海面下にある殻の隙間から大量の海水を吸い込み、それを海面上に露出した殻の隙間から一気に射出して攻撃してくるらしい。岩をも削る高圧の水流。もしこれが防具のない皮膚に直撃していれば、一瞬で肉を削ぎ取られていただろう。

 まさに生きた固定砲台だ。


 アイアンオイスターは、俺を排除すべき敵と認識したらしい。二発目、三発目と間髪入れずに放たれる。

 だが、一度攻撃を見て、しかも発射地点が分かってしまえば同じ轍は踏まない。剣と防具で冷静に防いでいく。


 次の砲撃に備えて、俺は姿勢を低く保ち、水流が発射される直前の予備動作に集中した。

 殻がわずかに震え、殻の隙間が開く。そこからあの水流を生み出す砲身のような管が出てきた。


 シュッと空気を切り裂く音が響くのと同時に、右へと身を翻した。

 さっきまで俺の頭があった場所を透明な水の刃が通り抜けていく。さらに一歩。岩を蹴り、波しぶきの中をバランスを崩さないように気をつけながら突き進む。

 アイアンオイスターは必死に狙いを定めようと殻を微調整しているようだが、俺の機動力には追いつけない。


 俺は一気に間合いを詰め、魔導鋼の剣を振り下ろした。


 ギィィィン!!


 甲高い音が響き、剣から腕へ強烈な反動が返ってくる。魔導鋼の剣と同じ程度の硬度を持つ殻なのか、ヒビ一つ入っていない。どんだけ硬いんだ。

 接近しすぎるとあの殻に挟まれて魔導鋼の防具でも無傷ではいられないらしいので、ギリギリ剣の間合いをキープする。


 しばらく様子を見ていると、アイアンオイスターが反撃のために大きく海水を吸い込んだ。

 殻が震え、隙間が再び開く。海面下で水を飲み込み、次の一射を放とうとする絶好のチャンス。


 再び一気に接近しながら、ウォータージェットを吐き出す口の向きをよく見て、水流を回避した。

 そのまま、殻が閉じるよりも早く、剣の先端を開かれたわずかな隙間へと突き立てた。


 ここだ。剣先を深く、一気に押し込む。狙うのは強固な殻を閉鎖している巨大な貝柱。ズブリと硬い組織を断ち切った感触が剣を通じて伝わってくる。

 そして、内部をできるだけ斬るように剣をそのまま下へと動かしてから引き抜き、ウォータージェットを余裕を持って回避できる距離まで離れる。


 アイアンオイスターはもがくように殻を震わせたが、すぐに力が失われたようだ。あんなに硬かった殻がゆっくりと開いていき、中からぷっくりと膨らんだ巨大な身が現れた。

 これまでのエビやカニとはまた違う、濃厚な潮の香りが辺り一面に漂い始める。1mサイズの牡蠣。その身は圧倒的な存在感を放っている。

 戦闘の緊張感が解けると同時に、強烈な空腹感が襲ってきた。

 海のミルクと呼ばれる牡蠣。そのモンスターでしかも第8層。どれだけ濃厚なのか楽しみだな。


 アイアンオイスターの身を丁寧に袋へと収め、岩場から慎重に階段へ戻る。戻りながら、既に食事のことを考え始めていた。

 やはり香ばしく焼き上げるのが正解だろうか。




 階段近くまで戻ってきた。

 第8層でも階段近くだけは砂浜がわずかに残されていたので、そこに陣取って調理を開始する。


 まずは一口サイズに切り分けてから丁寧に洗っていく。指先でヒダの一つ一つを確認しながら洗うと、ヌメリと共に噛んでいた砂が洗い流されていく。


 カセットコンロに火をつけ、十分に熱した網の上に、水気を切った牡蠣を並べる。

 ジュゥゥゥッ!

 瞬間、網の上で牡蠣が熱せられる特有の香ばしさが爆発した。身がぷっくりと膨らみ、表面にうっすらと焼き色がついてきた。


 まずは何もつけずにそのまま一口。

 っ! 濃厚!


 噛んだ瞬間、口の中でミルクが弾けた。

 加熱されたことで甘みが引き出されている。これまでのエビやカニとは異なり、この牡蠣はエキスそのものを食べている感覚だ。クリーミーで、喉を通る時に鼻へ抜ける磯の香りがたまらない。


 これだけでも文句無いが、醤油を垂らす。

 ジッ、という音と共に醤油が焦げ、香ばしい匂いがさらに一段階跳ね上がった。

 それを口に運ぶと、醤油の香ばしさが牡蠣の濃厚さとカチッと噛み合った。甘みが引き立ち、後味のコクがより深く、長く残る。


 あまりの美味さに、無心で次々と網に牡蠣を並べていった。

 1体分でも20kg以上ある。食べても食べても無くならないのは、美味しさから考えると良いことだけど、Absorbによる強化を考えると上限到達まで時間がかかるということだから、大きいのは遠慮して欲しいんだよな。

 うーん、これが嬉しい悲鳴ってやつなのかな。


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