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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第3章:パーティー

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47話:第9層

「高校行きたくないっすー」


 そう言っていたかおりんは今日から不在だ。

 8月後半になり、高校は2学期が始まった。東北地方の夏休みが短いのは納得いかないよな。

 もう俺には関係ないと思っていたが、かおりんとパーティーを組んだため、夏休みが終わると稼ぎが減るので関係ありだった。



 そうして1人で奥羽ダンジョンにやってきた。

 まだディグダベアは吸収し終わってないけど、第8層は飽きてきたし、ちょうどいい機会だし第9層に行くか。

 環境もモンスターの種類も第8層と変わらないけど、一回り大きくなって、パワーアップするからかおりんがいないタイミングで挑んでおくのはありだろう。




 いつもの第8層に降り立ち、いつもとは違う右側に進む。そこには他の階層と同じように次の階層へと続く階段が待ち構えている。

 新しい階層とはいえ、第9層は第8層と同じ。緊張することもなく、さっさと階段を駆け下りていく。


 第9層は第8層にいるモンスター、ハヤテホースとディグダベアが一回り大きくなる。

 あの猛スピードで突進してくるハヤテホースが更に重くなったらどこまで威力が上がるのだろうか。



 第9層に到着して、まずは草原でハヤテホースを探す。

 かおりんのいない第9層は、驚くほど静かだった。



 ドッドッドッ!


 その静寂を切り裂くように、蹄の音が鼓膜を打つ。

 待ち望んでいた、第8層よりも一回り大きなハヤテホースだ。体重は100kgを超えるらしい。その質量が時速80kmで迫ってくる圧力は、大きさ以上の凶暴なプレッシャーとなって俺を襲う。


 剣を鞘に収めたまま、真正面から迎え撃つ。第8層で何度も繰り返した通りに動く。

 衝突の瞬間。

 ガガガッ! と凄まじい衝撃が腕から肩へ、そして背骨へと抜ける。

 止まらない! 俺の足は地面を削りながら、数mも後方へと押し込まれた。


 うっ……重い!


 強化してきた筋力を持ってしても、100kg超の質量が持つ運動エネルギーを殺しきれない。

 そこから首投げに持ち込もうとするが、踏ん張りが効かず、そんな余裕は無さそうだ。それなら、といつもとは違う戦術へと切り替えた。


 いつものように左手をわずかに引き、突進の力を横に逸らす。すれ違いざま、踏み込みと共に鞘から剣を抜き放つ。

 ズシュッ!

 居合の要領で放たれた一撃が、ハヤテホースの後足を捉えた。

 だが、使い慣れない居合ゆえに威力はそこまででは無く、一撃で足を断つには至らない。


 二度、三度。突進を凌ぎながら、後足を削り続ける。

 ようやくハヤテホースの速度が落ち、四度目の突進でようやく勢いを止めることに成功した。

 そこからはいつもの流れだ。受け流した直後に首を抱え込み、地面に叩きつけてから喉元へ剣を突き立てる。



 はぁ、はぁ……


 動かなくなったハヤテホースを見下ろし、戦いを振り返る。

 突進の威力を削るために足を攻撃していくことで、最終的な決着こそ第8層と同じ形に持ち込めた。結果だけ見れば問題は無かったが、費やした労力は数倍だ。

 この次の第10層はまた新しいモンスターが待ち構えているし、環境も大きく変わる。第10層に行く前に、再度自分の強化が必要かもしれない。

 でもな……




 倒したハヤテホースの血抜きと売却を終えて、今度はディグダベアに挑むため、山林エリアを1人で歩いていく。



 かおりんに頼んでいた枝の塊を投げまくる物理索敵を今日は1人で行う。枝の塊を切り出して、落ち葉が積もった地点へ次々と放り投げる。

 拾っては投げて様子を見て、拾っては投げて様子を見て。


 ズボッ。


 繰り返すこと十数投目。枝の塊が吸い込まれるように消え、直後に咆哮が上がった。

 このやり方だと、どうしても這い出てくるのを止められないんだよな。でも落とし穴に落ちるのはリスクが高すぎるから仕方がない。

 這い出してきたのは、第8層の個体より一回りは大きく見えるディグダベアだ。体長1.6m。いよいよ俺と目線の高さがほとんど同じになってきた。


 ディグダベアは駆け出し、近づくと立ち上がりざまに腕を真上から叩きつけてくる。

 俺は剣をかち上げ、その一撃を正面から迎え撃った。


 ギギギィィッ!


 凄まじい衝撃。振り下ろされた攻撃は重く、第8層の時のように弾き飛ばすことができない。

 剣を介して、100kgを優に超える質量が直接俺の身体にのしかかる。足元の土が沈み込み、全身の筋肉が悲鳴を上げた。

 だが、このまま押し負けるわけにはいかない。


 力が拮抗しているなら、その力を利用させてもらう!


 俺は無理に押し返そうとするのをやめ、逆に奴の振り下ろす圧力に従って身体を沈めた。

 反動を利用し、軸をずらしながら一気に縦回転を加える。

 遠心力と敵自身のパワーを乗せた、渾身の回転斬り。


 ザシュッ!


 鋭い斬撃が、拮抗していた奴の左腕を内側から深く切り裂いた。

 鮮血が舞い、ディグダベアが苦悶の声を上げる。

 だが、奴は止まらない。再び迫りくる反対の爪に対し、同じように立ち回り、その力を捌いては斬撃を重ねていった。


 一歩間違えれば大ダメージを負ってしまう攻防を繰り返し、ようやくディグダベアの両腕からの攻撃が止んだ。

 すぐさま後ろへ回り込み、ガラ空きの背中へ剣を叩きつけた。


 右肩から左腰まで深く斬り裂かれたディグダベアは前へとバランスを崩して倒れ込んだ。両手が使えないため起き上がれない様を冷静に見下ろし、うなじへと剣を振り下ろした。



 勝てた。だが、今の俺の全力でこれか。

 ハヤテホースでも感じたが、パワーが足りない。力で圧倒できなくなってきた。

 なんとか技で対応はできてるけど、厳しいな。

 奥羽ダンジョンだけでは最前線まで行けないっていうのが、Absorbの弱点だな。


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