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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第3章:パーティー

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45/48

45話:合宿

「忘れ物はない?」


「大丈夫だよ、お母さん」


「無茶しないようにね。祐也にちゃんと助けてもらうのよ」


「食事以外は全乗っかりするから安心して」


「じゃあ行ってきます」


「行ってきまーす」


 海でのBBQの日から1週間後。

 母の了承を無事に得られた瀬奈は、先週末に冒険者登録を済ませてきた。

 そして、昨日はかおりんと2人でテントなどの野営道具を買いに行っていた。


「祐也はテントもあるのに荷物少ないよね」


「瀬奈の荷物が多いんだよ。テントはかおりんが持ってるんだろ?

 そんなに何が入ってるんだよ」


「肉以外に必要になる食材に調味料と調理道具。あとは着替えとか」


 着替えよりも調理系のあれこれが先に来るのは流石だよ。

 いつものように家からダンジョンに向かうが、そこに瀬奈がいるのは違和感しかない。




「おはよっす」


 いつもはダンジョンの入口で合流していたが、今日は北仙台駅から乗ってきたかおりんと電車の中で合流した。

 車内で瀬奈とかおりんはマシンガントークを繰り広げている。これだけ喋るから早くから合流したわけだな。




「じゃあテントとかは一旦ロッカールームに預けていくぞ。瀬奈の荷物は俺かかおりんの所に入れておいて」


「じゃあかおりんの所に入れさせてもらうね」


「どうぞどうぞっす」


 荷物を預けてから、いつものように第8層へ向かう。

 うん、ダンジョンに瀬奈がいるのはやっぱり違和感。




「スゴイねー、ダンジョンって」


 武器がナイフになった以外はかおりんと同じ装備をしている瀬奈が、第8層の景色に圧倒されていた。

 まぁ分かる。だが、この先はもっとスゴイんだよな。俺も楽しみだ。


「じゃあ早速、瀬奈のレベル上げをしていくか。

 とりあえずは瀬奈とかおりんは1体ずつ順番ってことでいいんだよな?」


「そうよ」「そうっす」


「まずはかおりんが手本をやってみせてくれ。手本だから棍棒投げないで」


「分かったっす」





「はぁあ!」


 俺がハヤテホースを正面からしっかりと受け止めて、動きを抑え込んでいる間に、かおりんが全力で棍棒を叩きつける。

 レベル25まで上がったかおりんの攻撃は、ある程度ハヤテホースにダメージを与えられるようになった。まぁ一発で骨を折ったり、内臓にダメージを与えるほどじゃないけど、痛みを与えるくらいにはなっている。

 いつものように俺がとどめを刺して、経験値がかおりんに入っていく。


「こんな感じだ。ハヤテホースを受け止めるのにはもう慣れたから失敗することはない。

 止まった所でダッシュしてナイフを一刺しして、すぐにかおりんの所まで戻れば良いからな」


「オッケー。やってみる」


「じゃあさっさとコイツは血抜きするか。かおりん頼んだ。かおりん?」


「来たーっす!」


「うぉっ! 大声で叫んでどうした?」


「来たっす!」


「いや、だから何が?」


「スキルっす!」


「レベル25になったから?」


「多分そうっす!」


「おめでとー。何のスキルだったの?」


「投擲っす!」


 あぁ、最近ハヤテホースに棍棒を投げまくってたからな。それで投擲か。


「攻撃系スキルで良かったな」


「これでもっと離れた所から安全に棍棒を投げてレベル上げできるっす!」


「棍棒以外の投擲用の武器も準備したらいいんじゃないか?

 それよりも。血抜き頼んだぞ」


「任されたっす!」


 大きなハヤテホースの後ろ足を掴んで、テンションが上がったかおりんがジャイアントスイングで血抜きをしていく。


「えっ、本当にあの大きいのをかおりんが振り回してる……」


「何も驚くことじゃないだろ。運搬スキルも知ってるだろ」


「知ってはいるけど、やっぱり直に見るとビックリするじゃん。あのかおりんだもん、料理をさせたらポンコツのかおりんだもん」


「俺がハヤテホースを受け止めた時も驚いたのか?」


「いや、全然」


 なんでだよ。この扱いの違いは何なんだ。まぁいいけど。




 血抜きを終えて、内臓を取り出してから、ハヤテホースはかおりんが背負って次の獲物を探しに行く。

 この第8層の草原エリアはハヤテホースしか出てこないからやりやすい。足場も安定してるしな。


 ドドドドッ


「来たな。じゃあ受け止めたら、頑張って一撃当てろよ」


「はーい」


 瀬奈には緊張感とか無いのか。

 ハヤテホースの姿はすぐに肉眼ではっきり見える距離まで迫ってきた。

 2人とハヤテホースの間に立つように位置取り、いつも通りに突進を受け止めた。


「行け!」


「りょーかい!」


 後ろから駆け出した瀬奈は、手にしたナイフをハヤテホースの肩へ突き刺した。


「かったーい!」


 ハヤテホースに当たったナイフはわずかに刺さったようだ。瀬奈がナイフから手を離すと、数秒でナイフは地面に落ちた。

 あれで0.01%でも貢献度があったと判断されるのか分からないが、倒せば分かるはずだ。ダメだったら第4層あたりで少しレベル上げてからまた来れば良い。


 いつものように勢いを左下に受け流して、首投げからの喉元への一突きで仕留めた。



「かおりん、血抜き頼んだ。それで、瀬奈はレベルアップしたか?」


「一気に7レベルになったよ。めっちゃ身体が軽いわ。料理の時に力入れすぎないように気をつけなきゃ」


 そういうデメリットもあるのか。

 まぁ普通はそこまで一気にレベル上がらないだろうから気にされないだろうが、今回は特殊だからな。


「レベル上げるのやめるか?」


「いや、慣れればいいだけだし。むしろ上げまくって、キャンプ中にこの身体に慣れないと!」





「じゃあ3体売ってくるっす」


 4体のハヤテホースを倒して、これ以上は持てなくなったので、かおりんに3体売りに行ってもらった。

 その間に残った1体を解体して、瀬奈に昼食を作ってもらう。

 俺は解体を終えた後は念の為の護衛だ。



◇◇◇



 かおりんを見送って、すぐにハヤテホースの解体に取り掛かった。

 えっ、ヤバっ。これがレベルアップか。

 今までは力を込めないと切れなかった部位にスッと刃が入っていく。切り分けた肉と皮と骨もこんなに軽く感じることは無かった。


 午前中に2体のハヤテホースに一撃ずつ、合計二発攻撃しただけだ。

 それでレベルは3から10に上がった。

 このパワーレベリングはヤバい。絶対に内緒にしないと祐也が狙われる。第20層くらいの攻略前線に行くまでは、何としても隠し通さないと。


「解体終わったぞ」


「はーい、じゃあ袋に入れておいて」


 解体を終えたので、気持ちを切り替えて調理に移ろう。

 カバンからカセットコンロを2つ並べ、まな板と包丁もセットする。


 よし、さっさと作っちゃおう。

 まずは、鮮度が命の馬刺しだ。

 いつもなら肉の繊維を断ち切る確かな手応えがあるはずなのに、レベルアップした結果、包丁の自重だけで吸い込まれるように肉が切れていく。

 解体だけじゃなくて調理でもレベルアップの恩恵はもちろんあるよね。その感覚を楽しみつつ、身体に慣らしながら、ミリ単位の極薄スライスを高速で量産していく。



 次は、馬肉たっぷりのガリバタライス。

 肉を一口サイズに切って、ニンニクとネギを刻む。

 カセットコンロにフライパンをかけて、バターと刻みニンニクを投入。香ばしい匂いが立ち昇ったところで、肉をドサッと入れる。

 肉に火が通ったら、ネギとパックご飯を投入し、フライパンを大きく煽る。


 うおっと! 軽い!


 以前は両手で煽っていたフライパンだが、今は片手だけで自在に動かせて、食材が舞っている。

 やりたくても筋力が足りなくて出来なかった動画で見ていたプロの動作を、レベルアップした筋力で1つ1つ正確に実行していく。

 仕上げに醤油を回しかけるとパラパラのガーリックライスが完成した。



◇◇◇



「おかえり」


「ただいまっす。お金はどうするっすか?」


「次は俺が3体持って行くから、気にしないでいいぞ」


「分かったっす。それにしてもいい匂いっすね」


「ニンニクとバターに醤油だな。チャーハン? いや、卵は無かったはずだからガーリックライスか?」


「よくそこまで分かるっすね」


「できたよー」


「答え合わせだな……正解」


「さすが伊藤兄妹っす」


「何が流石なの?」


「食に関してのあれこれっす」


 まぁ言わんとすることは分かる。

 さぁ、そんなことより昼食だ。ガーリックライスと馬刺しか。馬刺しはいつものだから、まずはガーリックライスをいただこう。


「いただきます」


 スプーンに山盛り一杯すくって口へ。

 ガツンとくるニンニクのパンチとバターのコク。肉がゴロゴロ入っていて、噛むたびに肉汁が溢れ出す。米の一粒一粒が肉の旨味とバターのコクを纏っていて、無限に食えそうな旨さだ。


「瀬奈ちゃん、これヤバいっす!

 ダンジョンでこんな美味しいガーリックライスが食えるなんて、最高っす!」


「フライパンが軽かったから、しっかり煽れたのが良かったかもね」


 早速レベルアップの効果が出てるってことか。


「祐也は食べ終わったら、馬刺しか網焼きか追加するけど、どっちがいい?」


「じゃあ馬刺しで」


「分かった。食べ終わったら教えて」


 そこからは3人とも一切喋らずに目の前の料理に没頭した。

 2人ともガッツリ食べてるな。合宿中に太らなきゃいいけど、なんてことは口が裂けても言えない。




「ふぅ。ごちそうさまでした。瀬奈、追加の馬刺しお願い」


「はーい。かおりんはもういいよね?」


「これ以上はやめておくっす。午後の戦闘もあるっすから。いくら食べても午後の活動に影響してない祐也さんはおかしいっす」


「慣れだな、慣れ」


 そんな話をしていると、瀬奈がまな板を乗せたテーブルを持ってきた。


「切ったらすぐに食べるでしょ?

 じゃあ、わんこそば方式でいこうか。切るのが早いか、食べるのが早いか勝負だね」


 わんこそばならぬ、わんこ馬刺しか。


「よし、来い!」


 フードファイトの火蓋が切って落とされた。

 トントントントン! と瀬奈がリズム良く肉をスライスし、俺の皿へ次々と放り込んでいく。俺はそれを滑らかに醤油に潜らせて口へ運び、噛み締め、飲み込む。


「レベルアップした瀬奈ちゃんの包丁捌きも、祐也さんの食欲と胃袋も、どっちもヤバいっすね……」


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