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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第3章:パーティー

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42話:パーティー第8層

 週末、夏休みに入ったかおりんと共に第8層にやってきた。


「今日からは思う存分、ダンジョンに来れるっす!」


「夏休みの宿題は無いのか?」


「先週の午前授業の間に、半分くらい終わらせたっすよ!

 あとは週1の休みの日にやれば終わるっす」


「夏休みなのに遊びに行かないのか?」


「夏休み以外でも遊びに行けるっすから。遊ぶよりダンジョンの方が今は大事っす。

 それに、瀬奈ちゃんの料理を食べに行って、そのままお泊り女子会する約束してるんで」


「えっ、うちに泊まるの?」


「月曜日が休みだから、日曜日にダンジョン行った帰りに泊まらせてもらうっす。女子会したり、一緒に宿題やったりするっす」


「楽しそうでいいな。もし休みたい時は言えよ」


「分かってるっす」



 階段から離れて草原を進んでいく。

 1人でハヤテホースを完封した経験は、俺に確かな自信を与えてくれた。

 かおりんがいても何の問題もない。


「ハヤテホースは俺が止めるから、その間に一撃入れてくれ」


「近づくと危ないんで、棍棒を投げつけるっす」


 盾じゃなくて棍棒を投げるのか。棍棒じゃなくて、投げる用の武器とか用意した方がいいんじゃないのか?





 ドドドドッ!と響く足音。


「俺の後ろに!」


「了解っす!」


 俺は先日と同じく、抜刀せずに鞘を水平に構えて迎え撃つ。

 ドォォォンッ! という衝撃を、強化されたステータスで腕で完璧に殺した。

 動きの止まったハヤテホースが動かないように力を調節している間に、かおりんの投げた棍棒が俺の右脇を通り過ぎた。


 ドコッ


 棍棒はちゃんと当たったようだ。あとはこの間と同じく、左下に受け流しながら首投げで叩きつける。

 そしてガラ空きになった喉笛へ左手の逆手抜刀で鮮やかに貫いた。


 

「ふぅ。よし、これで一体」


「すごっ! 本当に一歩も下がらないんすね。これ、もうハヤテホースは余裕なんじゃないっすか?」


 かおりんは俺の戦いぶりにすっかり安心したようだ。


「祐也さん、これなら山林エリアも余裕っすよ! この勢いで行ってみましょうっす!

 後で山林エリアに行くと戻って来る時の荷物が大変っすから」


「おい、待て。山林は視界が悪いし、足元も草原とは違うんだぞ」


「大丈夫っすよ! 祐也さんのそのパワーがあれば、何が来ても跳ね返せるじゃないっすか。行きましょう!」


 意気揚々と進むかおりんに押され、俺たちは草原を抜け、山林エリアへと足を踏み入れた。




 第8層、山林エリア。

 第2層と同じく、とにかく木々に遮られるため視界が悪い。

 頭上を覆う木の枝葉が光を遮り、第2層とは異なり足元には落ち葉や腐葉土が厚く積もっている。この中からあいつを探し出せるのか?


「かおりん、山林エリアにいるモンスターのことはちゃんと分かってるのか?」


「モンスターっすか? えっと……」



 わずかなズズッという地鳴りが耳に入ってきた。


「かおりん、止まれ!」


「えっ、何すか急に」


 次の瞬間、かおりんが踏み出した右足の先、落ち葉に隠れていた地面が、音もなくズボッ!と崩れ落ちた。


「きゃっ、うわああああ!?」


 そこには垂直の落とし穴が口を開けていた。

 かおりんの身体が、重力に従って穴の中へと吸い込まれていく。パニックで手足をバタつかせる彼女の手は、スカスカの腐葉土を掴むだけで、どこにも引っかからない。


「かおりん!」


 俺は反射的に踏み込んだ。

 落とし穴の奥側の縁に片足をかけ、穴に落ち始めていたかおりんの脇に腕を通し、背後からガシッとその身体を抱きとめた。


「おりゃあっ!」


 全身のバネを使い、かおりんの身体を強引に上方へと引き抜く。

 そのまま彼女を安全な後方へと放り投げるように着地させた。


 すぐさま剣を鞘から引き抜き、穴の中を確認する。

 穴の底では獲物が落ちてくるのを待ち構えていたこの穴の主ディグダベアが、かおりんが落としたハヤテホースに腕を伸ばして食らいついている所だった。



「はぁ、はぁ……助かった、っす……死ぬかと思ったっす……」


 尻もちをついたかおりんが震える声でそう漏らす。

 だが、安堵している暇はない。穴の底では、ディグダベアが苛立ちを剥き出しにした唸り声を上げ、地上へと這い出し始めていた。

 どうやらハヤテホースはお気に召さなかったようだ。

 まぁ出てこようとしてくれるならありがたい。




 穴の縁に土まみれの太い前足がかけられた。鋭い爪が土を掴み、ディグダベアが地上へ這い上がろうとする。

 だが、俺はそれを許さない。

 悪いがまともに相手をするつもりはない。俺は剣の切っ先を、穴の縁にかけられたディグダベアの手の甲へと叩き込んだ。


 グシャリ。


 重厚な肉を断つ感触。ディグダベアが苦悶の声を上げ、反射的に手を引っ込める。だが、奴が別の場所に手をかけようとするたびに、俺は冷酷にその手を狙い撃ちにして斬り裂いていった。


 何度も、何度も。

 地面スレスレに振り下ろされた斬撃は、皮膚を容易く両断する。穴の底へ滑り落ちるたびに、ディグダベアの怒号は悲鳴へと変わっていった。



 やがて、穴の底から這い上がろうとする気配が途絶えた。深さ数mの暗闇。奴は逃げ場を失っているし、今がトドメの好機だ。


「そこで待ってろ」


「は、はいっっす……」


 俺は穴の縁から、迷わず飛び降りた。重力と自重を乗せ、剣を下段に構える。

 だが、ディグダベアもただでは死なない。奴は最後の力を振り絞り、傷だらけの手を猛然と振り上げた。

 豪腕が空中で回避不能な俺の胴体を狙って迫る。

 迫りくる剛腕の軌道を、俺は空中で剣の腹で弾くように力任せに切り払った。


 ガァァンッ!


 金属音が轟き、ディグダベアの剛腕が横へと弾かれる。

 その直後。俺は無防備になったディグダベアの両肩へと、吸い込まれるように着地した。


 噛みつかれる暇も、振り落とされる隙も与えない。

 腕を弾いた瞬間から狙っていた動きで、全体重を乗せて剣を真っ向から突き立てた。剣身は頭蓋を深々と貫通し、脳天を貫いた。


 ビクンッ!


 巨体が一度だけ大きく跳ね、やがて静かに事切れた。


「ふぅ。かおりんは危なかったが、なんとかなったな」


 穴の底、血の匂いが充満する空間で、俺はディグダベアを仕留めた手応えを噛み締めた。




 穴の底から這い上がって、かおりんの無事を確認した。


「大丈夫か?」


「はい、助かったっす」


「ちゃんとモンスターや環境についての情報は収集しておいてくれ。知っていれば避けられたピンチだったぞ」


「面目ないっす……」


「さて、落としたハヤテホースと合わせて2体分持って帰るか。俺には上げられそうになかったから、かおりん頼んだ」


「任せて欲しいっす!」


 勢いよく穴に落ちていったかおりんの活躍によって、ディグダベアと少し食べられたハヤテホースを穴から取り出せた。

 かおりんも疲れただろうし、今日は2体とも売って帰ろう。


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