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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第3章:パーティー

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41話:事前偵察第8層

 マッドベアの肉を1.5kg使って作られた大和煮弁当を食べ終えて、第8層への階段を降りていく。

 いつも通り、階段を降り始めて1分も経たずに第8層へ到着した。


 見慣れた風景。


 階段を降りて目に入る光景は第2層とほとんど変わらない。目の前には草原、その先には山林というのが第8層の環境だ。

 違いと言えば、第2層は草原と山林の境界線が横一線で左右の端の方は中央より遠くに見えたが、第8層では左右の端も中央もほぼ同じくらいの距離に見える。

 大きな山林のエリアに、階段を中心とした円形の草原がある、みたいな感じだ。



 環境は慣れたもの。それでもここは第8層。モンスターはしっかり強くなっているのだ。

 ここにいるモンスターの情報は事前に確認してきた。


 第8層にいる馬系モンスターはハヤテホース。

 今まで戦ってきたどのモンスターよりもスピードが速く、最高速度は時速80kmになるという。

 体格も大きくなり、体長1.3m、体重75kg。この体格で時速80kmでぶつかるってどんなものなんだ? って思って調べたら、原付二種っていう原付きより一回り大きくて、普通のバイクに近い小型バイクが時速60kmくらいでぶつかってくるのと同じくらいの威力があるらしい。

 マジでここからは突進っていうより、交通事故って感じだな。


 いつハヤテホースが突進してきても大丈夫なように、いつでも剣を抜けるように手を添えた状態で階段から離れていく。




 ドドドドッ!


 しばらく歩いていくと、地を叩きつけるような激しい足音が平原の静寂を切り裂いて聞こえてきた。

 遂にきたか。

 音がする方向に視線を向けると、平原の彼方から猛烈な勢いで迫ってくる影が見えた。多分ハヤテホースだろう。


 このままこっちに突っ込んでくると想定して、ぐっと腰を低くする。

 あえて剣は抜かず、鞘の鯉口と鞘尻を両手でしっかりと保持して、胸の前で水平に構える。

 時速80km。動きを捉えるのは問題ない。だが、問題はそれを受け止められるかどうか。でも第7層であの程度だったんだ。第8層でも一発で大怪我ってことは無いはずだ。


 しっかりとハヤテホースの姿が確認できる距離まで近づいてきた。

 深く息を吐き、激突の瞬間に備えて全身の筋肉に力を入れて、鋼のように硬くした。


 直後。ドォォォンッ!!


 激しい衝撃音とともにハヤテホースが正面から激突した。

 その瞬間、俺の足元でズズゥンッ! と不気味な地鳴りが響く。逃げ場を失った衝突の衝撃が俺の肉体を伝って、両足から大地へと一気に流れ込んだのだ。

 踏ん張った両足を中心に少しだけ地面が陥没したようで、少しだけ目線が低くなった。


 バイクがぶつかってきたかのような衝撃が鞘を通じて全身に伝わる。いや、バイクとぶつかったことは無いけど。

 普通なら腕の骨が砕け、吹き飛ばされそうな威力。だが、ここまで強化されてきた俺の肉体はその圧力を真正面から受け止め、両足は大地を完璧に捉えて離さない。


 捕まえたぞ。


 衝撃の反動でハヤテホースの動きが止まる。それでも奴は鼻息を荒くし、力任せに俺を押し返そうとしてくるが、負ける気はしなかった。


 更に力を入れるために、ハヤテホースが首を下げた瞬間。

 鞘で圧力を左下に受け流しながら、空いた右腕を奴の太い首筋へと回した。


 行けるっ!

 柔道の首投げに近い要領で、渾身の力を込めて頭から地面へ叩きつける。


 ズドンッ!

 頭から地面に突っ込み、抵抗が弱ったその瞬間。鞘から素早く剣を引き抜いた。

 鞘を放り投げ、右腕で首を固定したまま、空いた左手へと剣を持ち替える。

 絞め上げられたハヤテホースは逃げることができずにいる。そこへ、絞め上げた腕の下から鋭い切っ先を吸い込ませるようにして喉笛を貫いた。


 返り血を浴びないように、傷口が俺とは反対側に開くように顎を持ち上げる。溢れ出す鮮血が吹き出し、勢いを増していく。

 ハヤテホースは断末魔を上げる間もなく、徐々に抵抗する力を失っていった。




 ふう。これなら第8層でもかおりんを連れてきても大丈夫そうだな。

 安堵とともに素早く作業に移る。まずは血抜きだ。


 ハヤテホースの後ろ脚をガッチリと掴み、背筋に力を込めた。

 推定75kgの巨体が宙に浮き、そのまま大きく円を描くように、一気に振り回し始めた。

 ブォン、ブォンと空気を切り裂く轟音が響く。ここまで重くなると迫力がある。凄まじい遠心力によって、喉元の傷口から鮮血が勢いよく噴き出し、周囲の草原を赤く染めていった。

 

 数十回も回すと、毛細血管の隅々まで血が抜かれたようだ。

 続けて手際よく腹を裂き、内臓を取り出す。全部出して思うが、他のモンスターに比べて胃腸が驚くほどコンパクト。その代わり、異常なほど発達した巨大な心臓が現れた。

 あのスピードで走るためにはこれくらいの心臓が必要なんだろうな。


 内臓を抜き、心臓と肝臓を袋に入れて、いくらか軽くなった獲物を肩に担ぎ上げる。

 この重さならなんとかスタスタと歩いて持っていけるな。逆に、これ以上はかおりんがいないと厳しい。

 かおりんの必要性を再認識しながら、俺は軽快な足取りで、安全圏である階段へと引き返した。




 階段近くまでたどり着き、いよいよ内臓を食べ始める。

 まずは1kgはある巨大な心臓、ハツだ。

 薄くスライスすると、断面はまるで極上の赤身肉のような輝きを放っている。

 一口……凄まじい弾力だ。噛みしめるたびに、鍛え上げられた筋肉の塊が口の中で躍動するような、力強い歯ごたえがある。マッドホースよりも更に濃縮された鉄分と、生命力そのもののような旨味が鼻へと抜けた。

 階層を深めるごとに濃くなっていく味は、どこまで濃厚になっていくのだろう。


 次は2kg近い肝臓、レバー。

 こちらは心臓とは対照的に、クリーミーで滑らかだ。舌の上でトロリと溶け、フォアグラのような濃厚なコクが広がる。それでいて後味は不思議と爽やかだ。

 マッドホースを食べてきた今の俺には想定内の旨さだが、冒険者になる前の俺が食べたら美味しさで感動して固まってしまっただろうな。



 さて、残りは家で食べようか。


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