40話:事前偵察
かおりんとのパーティーを組んでの奥羽ダンジョンでの活動も4週目になった。
最初は毎日1つ上がっていたレベルも先週の日曜日は上がらなかった。
それでも十分早いとは思うけど。
俺の方はようやく今朝、マッドホースが上限に到達した。
やっぱりモンスターの元々の体重が重くなってきたから、上限に到達するのにかかる時間はどんどん伸びている。
1日3kgからもっと増やしてもらうしかないかな。
「おはようっす」
「おはよう。じゃあ行くか。
そういえば来週から夏休みなんだって?」
「そうっすよ。来週からは平日も毎日一緒にダンジョンに潜るっすよ!
この夏でどこまで強くなれるかワクワクが止まらないっす!」
「週1日は休みにするからな。母さんから止められてるし」
「分かったっす。それで、メッセージでも教えてもらったっすけど、やっとマッドホースが終わったんすね」
「長かった。だから明日からは肉の量を1.5倍に増やすように瀬奈にお願いしてきた」
「マジっすか……1日4.5kgになるってことっすよね? 毎日大食い大会じゃないっすか」
「フードファイターって感じだな」
「モンスターと戦うよりも、肉と戦う方が多そうっすね」
「まぁまだまだ食えると思うけどな。1日6kgくらいまでなら」
「戦う相手を間違えてそうっす……あとステータスと一緒に胃袋も強化されてそうっすね……」
◇◇◇
かおりんとの4週目のパーティー戦をした3日後。
今日は1人で第7層にやってきた。
もうすぐマッドベアも上限に到達するだろうし、その前に第7層、そして第8層に1人で挑むことにした。
かおりんのレベルは上がったが、実戦経験はまだ浅い。事前にソロで経験しておけば、2人で挑むかどうか決められるしな。
第7層は第6層と見た目は変わらない。
ここも田んぼで足元が悪いんだな。
ただそれにも慣れてきた。
ヒィィンッ!
前方から第6層の個体より一回り大きいマッドホースが突進してきた。叫ばなければ先制攻撃をできたかもしれないのにもったいない。
大きくなった分だけ質量が増したのだろう、足音というか泥を蹴飛ばしている音が激しい。
俺は逃げずに剣を構え、その衝撃を真正面から受け止めた。
ガリィィッ! と金属音が響く。
第6層より重い衝撃。だが、マッドホースを上限まで吸収し終えた俺の力は、これでは揺らがなかった。
よし、問題ないな。
俺は攻撃を受け流しつつ、その衝撃を反発力に変え、独楽のように鋭く回転した。
回転の遠心力を乗せた剣を上段から叩きつける。
狙いは第6層と同じく腰のあたりだったが、第7層の個体は流石に第6層より速い。咄嗟に身をよじったホースの左後足に、俺の剣が深く食い込んだ。
ザシュッ!
斬り裂かれた足から血が吹き出し、痛みで機動力が大きく低下したマッドホースはまともに走れなくなった。
後ろから追いかけて腰を目がけて叩き斬る。その一撃を受けて泥の中に沈み込むように崩れ落ちた。俺は止まることなく、その首筋に追い打ちの一撃を突き立て、沈黙させた。
よし、マッドホースは問題無いな。
次はマッドベアだ。どこにいるかな。
っ!
しばらく歩いて探していると、前方から黒い物体がこちらに飛んできた!
素早く身体を捻ってそれを躱す。後方に落ちたそれはマッドベアの泥球だったようだ。
飛んできた方向を見ると、思った通りマッドベアが次の球を準備している所だった。
第6層よりも球速は速い気がする。
次々と放たれる泥を避けながら、ジグザグに接近していく。だが、第7層のベアは投擲の精度も第6層より高かった。
バチャッ!
避けきれなかった一発が、俺の肩を直撃する。
重い衝撃が走ったが、顔さえ守ればほぼノーダメージだ。泥だからな、目に入らなければ問題ない。
そのまま近づくと分かったが、やっぱりこいつも第6層よりも一回り大きい。
一気に間合いを詰めると、ベアが爪を振り下ろしてきた。俺は下から剣を全力で振り上げ、その爪と真っ向からぶつける。
ギィィィンッ!
やっぱり第6層より重い。でもそれなら利用するだけだ。
俺は振り下ろされた力を逃さず、そのまま体を反転させた。マッドベアにも回転斬りだ。狙い過たず放たれた刃が、攻撃してきたベアの腕の肩口を深く切り裂いた。
ヴォォォォッ!?
筋肉と神経を断たれたのか、ダラリと力なく垂れ下がるベアの腕。武器を1つ失ったこいつに、もはや勝ち目はない。
俺は大きく踏み込み、無防備になった脳天へと、上段から渾身の一撃を叩き落とす。
マッドベアも咄嗟に反対の腕を持ち上げて防御をしたが、その腕ごと剣は斬り裂いていく。
頭部を深く斬り裂かれたマッドベアは大量の出血と共に田んぼへ倒れていった。
ふう。飛騨ダンジョンから戻ってきてすぐの第6層と同じくらいの難易度だったな。
これなら第8層もいけるかな。
じゃあ瀬奈の作ったマッドベアの大和煮弁当をしっかり食べてから、第8層へ向かうとしよう。




